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辺境伯領での生活
救護室の王子 ※リーシャ視点
しおりを挟むグリー王子の浮気現場を見つけてから1月ほどが経過した。
あの女は既に王宮内には居ない。私が手を回した、というよりは正式に王宮に使えていた訳ではなかったので、指摘したらすぐに王宮から追い出されていた。
当然、それだけで終わらせるつもりはなかったので、裏からしっかり手は回している。
あれはすでに届いているでしょうね。
あの女がどうなったかを想像して私は笑みを浮かべた。
暫くして、自室で休んでいると側仕えが部屋に飛び込んで来た。
「リーシャ様! 至急、回復魔法が必要になったため王宮の救護室に出向せよと、大臣からの指示がありました!」
「何かしらね? 今日は演習とかがあるとは聞いていないのだけど」
私が、というよりもお姉さまがグリー王子と婚約していたのは回復魔法の使い手を王族が確保するためという理由があった。それは婚約者が私に変わっても変わりはない。
そのため、緊急で回復魔法が必要になった場合は今回のように呼び出されることが有る。
正直、乗り気にはなれないけれど、回復魔法が使えるから王族に鳴れているような物なのよね。仕方ないけどやるしかないわ。
第1王子の相手も回復魔法が使えるのだけど、滅多にと言うか使っている所を見たことが無いのよね。本当に使えるのかは怪しいところだわ。
騎士用の救護室ではなく、王宮に努める貴族用の救護室に着くと救護室に勤務している使用人たちや、雇われの医師が慌ただしく動いていた。しかし、中には呆れたような表情をしている者も居た。
ここに呼ばれたのは初めてだけど、どうしてあんな表情をしている使用人がいるのかしら? 対応の流れからして突然ではあるけど慣れている感じはするわね。まあ、救護室なのだからいきなり患者が来ることは多そうだし、慣れているのはおかしくはないわね。
「リーシャ殿、来られましたか。ではこちらに来ていただきたい」
こいつ誰だったかしら? 話しかけてきたところからして上位の人物。もしかしてこいつが大臣かしらね。……多分そうよね。
大臣と思われる男の後をついて行くと、そこには救護用のベッドに横たわるグリー王子の姿があった。
グリー王子の腹部には刺されたように服が避けている場所があり、そこから赤い血が服に跡を作っていた。それに、服の隙間や腕などの皮膚が直接見えている個所では、ところどころ皮膚が赤く爛れている場所が見られる。
「グリー王子? これはどういう事なのかしら?」
王族であるグリー王子が重傷を負って目の前に居ることが理解できないため、私をここに連れて来た男に聞く。
「ああ、これはまぁ、痴情の縺れと言いますか。リーシャ殿も知っているこの前追放した使用人に関する問題ですな。まあ、グリー王子に関しては自業自得ではありますがな。今回が初めて、という事ではありませんし。とりあえず、回復魔法を掛けて頂けると助かります。このまま放っておいても死ぬことはないでしょうが、これでも一応王族ですからな」
この国の第2王子に対する目の前の男の対応の悪さに驚く。
こいつが大臣だったとしても、立場は第2王子の方が上のはずよね。それなのに、これでも一応王族、と言った感じの見下すような発言は問題しかないんじゃないかしら。それにグリー王子を見下すという事は、同時に私の事を見下している、という事になるのよね。とても受け入れられるものではないわ。
とは言え、ここで同行できる問題でもない。とりあえず、そう自分にそう言い聞かせて痛みによって顔を歪ませているグリー王子に回復魔法を掛けて行った。
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