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国を出ましょう
許せないわ ※リーシャ視点
しおりを挟むグリー王子が使用人の女を執務室に連れ込んでいた現場を見てから2日が経った。
正直なところ、王子についてはどうでもいい。別に私は王子の事が好き、という訳ではないのよ。私がグリー王子の婚約者になろうとしたのは、お姉さまに対する嫌がらせと、王族になるための物だった。だから、王子が私の事を第1に愛してくれなくてもいい。
……いえ、それはそれで嫌だけど、仕方がないわよね。そもそも、私がグリー王子と直接の面識を持ったのは最近の事。それも婚約発表の時が最初なのだから、王子が私の事を知らないのもわかる。その結果、まだ愛せないというのも理解できる。
でも、あの使用人の女は許せない。
あの私を小馬鹿にした表情。その後の態度。どれを取っても許すこと出来ない。
「ねぇ、あの使用人の名前わかったの?」
「え、えぇ。はい」
「教えて。出来れば出身も」
2日も経ったのに私がまだ苛立っていることに怯えている様子の側仕えが、あの女について調べてきた内容を言葉に出す。
「あの使用人は、最近グリー王子が王都から連れて来た者のようです。名前はマリス。王都に住んでいたようですが平民ですね。王城内で住み込みの使用人として雇われていたようですが、あてがわれた部屋は無いようです」
「そう。マリスっていうのね。ふーん。あと、住み込みなのに部屋が無いってどういう事かしら?」
私の問いに少し言いづらそうにしながら側仕えは口を開いた。
「……どうやら、あてがうための部屋を準備するまでという理由で、グリー王子の部屋に住み込んでいるようです。さすがに、雇用からの日数を考慮したらまだ準備できないという事はあり得ませんし、調べたところ部屋の申請はありませんでした」
「ふーん」
元よりそれが目的でグリー王子の部屋にいるという事ね。ああ、いえ、グリー王子が連れ込んだというのが正しいのよね。どうやっても平民ごときが王宮の使用人になれる訳がないのだから。
軽くだけど調べてみた感じ、今回のようなことが初めてではないみたいなのよね。この側仕えも今回が初めてではないと言っていたし。
前にグリー王子が連れて来た女は、既に王宮内には居ないみたい。どうなったのかはわからなかったけど、少なくとも話を聞く限り死んでいる可能性は高そう。
なら、あの女を王宮から追放し殺しても問題はないかしらね。私を馬鹿にしたような態度をとったのだからそれくらいはしないと駄目よね。
「わかったわ。ありがとう」
「いえ」
調べて来てくれたのだから一応は感謝しておく。
王宮内で生活するには1人では無理だし、ある程度耳を手に入れる必要もある。少しでも私の立場を強くするためにもこういったことも必要よね。お姉さまからあの王子の婚約者の立場を奪った時にも役立ったのだから。
さて、じゃあ、あの女を王宮から追放するために色々やっていきましょうか。出来ればその時に絶望に染まった表情をしてくれると良いのだけど。
そうして数日後、あの使用人の女は王宮内から姿を消した。
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