(完結)婚約破棄ですか…いいでしょう!! おい国王! 聞いていましたね! 契約通り自由にさせてもらいます!!

にがりの少なかった豆腐

文字の大きさ
上 下
28 / 66
貴方と共に歩むには

煮え切らないロイド

しおりを挟む
 
 騎士に関してしっかり対処してくれるならこちらから何をいうことはないわね。
 
「えっと、それについての話なら俺、この場に居る必要は無いのでは?」

 この個室に着いてから一言も発していなかったロイドが少し気まずそうに声を出した。
 いや、まだ話し始めてそんなに時間経っていないわよね? それに話をする前に、って言っていたから、これがこの話の本題ではないでしょうし。

「ロイド。お前は何時も自身のことを軽く考え過ぎだ。過程はどうあれ家は出ているのだから、もうそんな風に考える必要は無い。だから、もっと前向きに考えろよ」

 ああ、やっぱりロイドが常に下手に出るのって家庭環境の影響か。たぶん他の影響もあるだろうけれど、性格とか考え方が歪む原因って家庭環境や対人環境による部分が大きいらしいし。それに人の話をしっかり聞かないのも、今まで自分に対して話しかけて来た人が少なかったからかもしれないわね。

「そうね。ロイドはもう少し我が儘になっていいと思う。と言うか、これは話の本題ではないわよ?」
「え? えっと?」

 まさか私からもそう言われるとは思っていなかったのかロイドは少し戸惑ったような表情で私とロイドのお兄さんを見ている。

「おっと、まさかレイアさんまでそう言うことを言うとは」
「最近はそうでもなかったのだけどね。最初の頃は割と酷かった」

 本当に面ど……じゃなくて、もどかしかった。まあ、私が強引に一緒に居たせいでもあるのだけど、魔法を教え始めて1週間くらいは何事に対しても確認を取りに来るから事の進みが遅かったのよね。最近はそれが減ったから滞りなく進めていたのだけど。

「はは、なるほど。想像していたよりも真面目に付き合っているようだね」
「え? いや、あの兄さん? それはどういう…」

 付き合っている? 男女の……、いえ魔法の練習には真面目に付き合っている。うん。たぶんそう言うこと。そうよね? 男女のあれこれ的な意味ではない……はず。…………うん。
 駄目よ。深く考えない。これ以上考えると、顔が余計に熱くなるわ。

 あれ? でも、ロイドのお兄さんは私がロイドに魔法を教えていることを知っているのかしら? もし、知らないのならやっぱりそう言う……こと?

「ははは。いや、2人とも顔を赤くして初心だなぁ」
「兄さん!?」

 ……顔を隠したい。絶対に今、顔真っ赤になっているわ。

「いやぁ、若いねぇ」
「兄さん! 俺は…別に、レイアと付き合っている訳じゃ」

 あ、恥ずかしさが薄れたわ。ロイドから直接そう言われると悲しいけれど、今は顔の赤みが取れただろうから良い……いえ、やっぱり良くないわ。

「ロイド、お前。もしかしていつもそんなことを言っている訳ではないよな」
「えっと…」

 今まで揶揄っていて楽しそうな表情だったロイドのお兄さんの顔が一気に真顔になった。それを見たロイドはさすがに今のやり取りが良くなかったことに気付き、少しだけ顔を逸らした。だけど、どうしてそんなことを言われたのかあまり理解できていないのか、顔を逸らしながら困惑した表情を浮かべている。

「ロイド、お前はもう少し人の気持ちを考えろ。もし、ただ恥ずかしかったからそう言っただけなら、もう少し言葉は選べ。それと、もう少し人を信頼しろ。それとも、レイアさんは信頼に値しない人なのか?」
「いや、信頼は出来る」

 そうお、即答してくれるのは嬉しいわね。でも、ここで即答してくるということは本当に相方として信頼している、ということであって、女として信頼しているとは違うというのは何となくわかるわね。

「では、何でさっきは否定した?」
「実際に付き合っている訳ではないから」
「そうなのか?」
「……ええ、そうね。告白しても、毎回はぐらかされているから」

 私は何度もロイドに告白している。ただ、毎回冗談として受け流されているから、その実は結んでいない。
 過去のやり取りを思い出して乾いた笑いを浮かべてしまう。

「ロイド、お前ってやつは」

 ロイドのお兄さんは私の事を見た後に視線をロイドの方へ移し、完全に呆れた表情でロイドを見ている。さすがにロイドも悪いと思っているのか、申し訳なさそうな表情を私に向けている。

「いや、だってレイアは王子と婚約できる程保有魔力が多い人で、俺よりも大分若いだろう! だから俺だと全然釣り合っていないんだ」

 ああ、いつもそんなことを思っていたの。告白した後に、申し訳なさそうな顔をしてこっちを見ていたのが気になっていたのだけど、そういうことだったのね。
 ん? いや待って。私が王子と婚約していたのはさっき知ったことよね? ということは、あくまで歳を気にしていただけ?

「若いって、お前はまだ23だろう。レイアさんは……何歳だ?」
「16よ。これくらいの差なら問題ないと思うのだけど」
「そうだな。そんなに離れていない、というか、貴族ならこのくらいの歳の差での結婚はよくあることだ。気にするほどじゃないだろうよ」
「そうだけどさ。…いや、俺はもう貴族じゃないから」
「お前はまだ貴族だぞ? あの時、家を追い出されたが、別に絶縁したわけでもないしな」
「え? 俺は絶縁したって聞いているのだけど?」
「それは父上、前当主が言っただけで正式にはなっていない。と言うか現当主が裏で阻止した」
「は?」

 ロイドが家を追い出されているのに兄弟仲が良いのは何でなのか、気になっていたのだけれどそういうわけなのね。まあ、古い考えを持った親と新しい考えの中で育った子で方針が違ったと言うことなのかしら。

「だったら問題はないわね、ロイド? 魔力の問題も無くなっているし、何も躊躇うことは無いと思うのだけど」

 今更だけど、まさか、単に私が嫌いだから流していただけではないわよね?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います

菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。 その隣には見知らぬ女性が立っていた。 二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。 両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。 メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。 数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。 彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。 ※ハッピーエンド&純愛 他サイトでも掲載しております。

婚約破棄で見限られたもの

志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。 すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥ よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】 僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。 ※他サイトでも投稿中

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた

菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…? ※他サイトでも掲載中しております。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】 5歳の時、母が亡くなった。 原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。 そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。 これからは姉と呼ぶようにと言われた。 そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。 母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。 私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。 たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。 でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。 でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ…… 今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。 でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。 私は耐えられなかった。 もうすべてに……… 病が治る見込みだってないのに。 なんて滑稽なのだろう。 もういや…… 誰からも愛されないのも 誰からも必要とされないのも 治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。 気付けば私は家の外に出ていた。 元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。 特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。 私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。 これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

処理中です...