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貴方と共に歩むには
ロイドの態度
しおりを挟むギルド長の話はすぐに終わった。
まあ、話の内容の大半は今後の活動はどうするのか、と今後の扱いはどうすればいいのかという物だったけど。あとは、ロイドの家に連絡して問題ないか、といった質問だった。
他にも聞きたそうな雰囲気はあったのだけど、質問はされなかったし問題ないはず。
ロイドの家に連絡する分には問題ない。でも、これが切っ掛けでロイドが家に戻されるようなことがあったら嫌だ。やっといい感じの雰囲気になって来たというのに離れ離れになるのは嫌すぎる。
ただ、それは私が強引にどうにかしていい問題ではない。……のだけれど、そうなりそうだったらやんわりと牽制するつもりだ。
「ロイドはこの後どうしますか? 予定通り魔法の練習にしますか?」
「え、ああ、そう…だな。まあ、他にやることもないし。でも、いいの…ですか?」
あぁ、ロイドの対応がよそよそしくなっているわ。ようやく軽く触れあえるまで距離を詰めて来ていたと言うのに何で。何で。
あ、駄目ね。これは考えない方が良いわ。泣きたくなる。
「え!? どうした、レイア…さん」
あ、駄目だ。呼び方まで最初のやつに戻っているわ。泣く。
このままだと確実に距離を取られる。いつの間にか居なくなっている、というのもあるかもしれない。
そもそもロイドは貴族関係で問題があって今の状況になっているのだから、今後貴族に関わることになるとわかれば逃げてしまう可能性は十分にあるのだ。
「ええ!? ちょっ何で泣いて!?」
さすがに声を出して泣くのは我慢している。でも涙が出るのは我慢できなかった。
そんな私を見てロイドがどうしていいのかわからず狼狽えているのが涙で滲んだ視界に映っていた。
「ごめんなさい。あんなところを見せてしまって」
私の涙が収まるまで、ギルドの中にある机や椅子などが置かれている場所で休憩していた。
ああ、ロイドに魔法を教える時間を無駄に減らしてしまった。
「いや、問題はない…ですよ?」
あ、駄目。我慢、我慢よ。私。
「それ」
「え?」
「何で話し方、戻っているの?」
「いや、だって…じゃなくて。えっと、レイア…さんは王族の関係者なのですよね?」
「今は違う」
「いや、ですが」
「違う。今はもう平民。ちょっと国王に貸しがあるだけの平民」
うん。あの印章だって国王の貸し関係で受け取った物だもの。本来の意味はどうあれ、だけど。
「国王と繋がりがある段階で普通の平民としては扱えないです」
「何でよ」
「何でって」
「嫌。話し方、元に戻して」
「ですけど」
「駄目。戻す」
「いえ…」
これは、あれね。貴族体質と言うか、上の立場の人には逆らわない様に教育されてきた結果のやつね。確かに貴族社会で生きる分には必須とも取れるものだけど、私に対しては必要ないのよ。
「戻して」
どうしていいのかがわからなくなったロイドは完全に口を閉じてしまった。そんな彼を私はじっと見詰める。根競べなら負けないわ。
「………っ! あぁ、もう。わかりま、じゃない。わかったよ。これで良いか?」
「よろしいっ!」
いやぁ、嬉しい。あ、ちゃんと話し方と態度を戻してくれたからロイドを褒めないとね?
そう思い立ち上がる。そして、隣、と言うには少し離れた位置に座っているロイドに近付いて頭を撫でてあげる。
いい子いい子。…ふむ、ロイドの髪の毛って、思っていたより柔らかいのね。
「いや、え? 何これ、どう言うことだ、レイア?」
突然、私に頭を撫でられたロイドが本当に困惑した表情で私の事を見上げている。
「え? ご褒美的なやつ?」
「いや、何でそこで疑問形なんだ」
よくよく考えてみるとこれって、結構恥ずかしい事しているわね。意識したら顔が熱くなるわ。
「気にしないで」
「えぇ、あ、いや。別にいいか」
考えても理解できない、と言うことに気付いたのかロイドは抵抗するのは諦めたらしく私のなすがままになっている。
まあ、抵抗らしい抵抗はなかったけど、少し止めて欲しそうな目で見ていたのよ。今は目を瞑って周りを見ない様にしているみたいだけど。
「ちょっと良いだろうか?」
私がロイドの頭を撫でるのを止めたタイミングで後ろから声を掛けられた。
ん? これもしかして話しかけるタイミングを窺っていた? と言うことは今までの光景も見られていたってこと?
見られていた恥ずかしさを隠して声を掛けて来た主の方を向く。
「え? どうして兄さんがここに?」
先にその相手を見たロイドが驚いたように声を上げた。
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