(完結)婚約破棄ですか…いいでしょう!! おい国王! 聞いていましたね! 契約通り自由にさせてもらいます!!

にがりの少なかった豆腐

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貴方と共に歩むには

王家の印章 前

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 つばぜり合いしていた剣を弾き返し、ロイドはより私と騎士の間に身を入れる。

 守ってもらっているという状況に心躍るものの、ここまで騎士が置荒れている原因の一部に私が居るのは確かなので、純粋に喜ぶのは憚られる。

「おい! 丸腰の女性に対して剣を振るうのは駄目だろう!」
「知るかよ! どうせ平民なんだろう。なら死んでも問題ない!!」

 必要以上に煽った私がいけないのだけど、何の躊躇いもなく剣を振るうのは問題よね。しかも、これを見ていた他の騎士も止めるような素振りは一切ないし、これだと全体的に騎士の質は低そうね。
 それに一部の騎士に至っては見て見ぬふりをしているから、そもそも見回りをしていても意味があるのかどうかも怪しいところよね。

「ロイド。別に受けてくれなくても良かったのだけど」
「え!? いや、そうだったとしてもさすがに何もしないのは問題があるよね!?」

 あーまあ、それもそうね。見た目的には騎士に襲われている女だから、結果的に問題なくても何もしないのは良く見えないわよいね。特にここはギルドの前とは言え、他の人も行き来しているのわけだし。

「おい! これは何の騒ぎだ!」

 この馬鹿騎士が剣を抜いてから野次馬に来ていた住民も悲鳴を上げて逃げて行っているのよね。たぶん普段からこういうことをしているということなのだろうけど、その悲鳴が聞こえたのか、それともこの馬鹿騎士の声が聞こえたからなのか、ギルド長がギルドの中から出て来た。
 いや、別に私たちには何の問題もないのだけどね。

「ああ! 何だよ、てめぇは!」
「私は傭兵ギルドのギルド長をしている者だ」
「関係ない奴は出てくんじゃねぇよ!」

 いや、ギルドの目の前で揉めているのだから、おそらく関係者の括りには入ると思うわよ? 少なくともギルドの中に出入りし辛くなっているだろうから。

「それで、ロイド、レイア。これはどういう事だ?」
「無視してんじゃねぇよ!!」

 ギルド長は早々に馬鹿騎士では話にならないと判断したのか、荒ぶっている馬鹿騎士を一瞥した後は無視して私たちに声を掛けて来た。

「簡単に言うと、ギルドを出たところでロイドがこの騎士に絡まれた。そして言い合いになって、と言った感じかしら」
「なるほど、またか」

 明らかに呆れた表情でギルド長がそう声を漏らした。どうやらこういった騒動は初めてではないようね。ギルド長の表情からして、この騎士、というよりも騎士団自体結構問題を起こすことが多いのかもしれない。

「すいません。こいつはもう引っ張っていきますので」

 いつの間にか近づいて来ていた別の騎士が馬鹿騎士の鎧の端を掴んでこれ以上、こちらに来られない様に制止していた。
 鎧についている装飾が他の騎士とは違うから、この隊の隊長なのかしら。それに、今までの態度とは違ってすぐに対処してきたということは、おそらくギルド長が侯爵であることを知っているんでしょうね。 
 ただ、ギルド長が出てくるまでは馬鹿騎士を咎めることなく静観していたのだから、この騎士も立場が上の存在がいなければ、平民なんてどうでもいいと思っているのよね。

「どうしてですか隊長、やめてください! このまま平民に馬鹿にされたまま引き下がるのは貴族として問題が!」
「どう言うことだ?」

 馬鹿騎士の言葉を聞いてギルド長が私の方を向いた。

「まあ、こちらを馬鹿にした物言いをしてきたので、やり返しただけです」
「あぁ……そうか」

 む、ギルド長が頭を抱えているような気配がするわ。実際には眉をひそめただけだけれど、あからさまに声色が変わったわね。

「貴族に対してあの言葉は問題がある。故にこの平民に対しての罰が必要です。ですからギルド長、この平民に対して我々が行うことは目をつむっていただけませんか?」

 今馬鹿騎士を押さえている隊長とは別の騎士が出てきてそうギルド長に進言した。それを聞いた隊長はそれ以上言うなといった感じの表情をしていた。

 えぇ……。馬鹿騎士を抑えている騎士は。そもそも、この国はもう貴族第一主義ではないのだから、平民に対してもそう簡単に処罰とかを与えることは出来ないと思うのだけど。

「それは出来ない。それを見逃すのは現王政に対する忠義を捨てると同義だ」
「ですが、このまま見逃すのは貴族の立場を悪くしてしまいます。今後の事を考えると見せしめは必要です」
「駄目だ」

 見せしめとか騎士が云うような事ではないと思うのだけど。

 本当に面倒臭いわね。元の国もそうだったけれど、やっぱり大半の貴族って未だに貴族第一主義の考えのままなのね。まあ、そその主義が貴族にとって優遇されているものだから、それが無くなるのが嫌だろうし、そう簡単に買われないのは理解できるけれどね。
 でも、国の方針が変わったのなら、それに従うのが貴族というものなのよね。

 あ、そう言えばあの契約の手続きの時に国王から渡されたものがあったわね。それを出せばたぶん直ぐに終わるでしょう。

「ギルド長、これを」

 そう言って私はギルド長に国王から預かったある物を差し出した。
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