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貴方と共に歩むには
ロイド攻略中
しおりを挟むロイドに魔法を教え始めてから早くも1月が経過した。
私は未だにロイドが紹介してくれた宿屋に泊まっている。ロイドが泊まっていたこの宿、はっきり言って寝るためだけの空間を貸しているだけだった。
ベッドを2つ置けば床が見えなくなるほど狭い部屋。扉が内開きなのでそんなことをしたら外に出られなくなるし、中に入ることも出来なくなる。まあ、そんなことをするわけないけど。
部屋が狭い、ということはロイドと部屋で一緒になって魔法を教えるという目論見が失敗したということになる。ただまあ、今更だけど、そもそも部屋で魔法が得意でない人に魔法を教えるのはどう考えても危険だということを思い出した。それに部屋が狭いならそれは尚更だしね。
じゃあどうしているのかというと、傭兵の依頼をするついでに魔法を教えている。ロイドが今まで受けていた依頼は大体が街の近くに出た魔物を退治するものだったらしい。いえ、今も大体同じようなものね。
依頼の場所までの道中は街の近くということもあってそこまで危険はないし、逆に街の外だから人も少ないから安全に魔法の指導ができる。
それで、教え始めてからの成果はまあまあ。元より使える魔力が少なかったから、大して魔法の知識も使った経験も乏しかったから出だしはあまり良くなかった。でも、今では学校を出た貴族よりは使えるかなぁ、といった程度には成長した。
「すまない、レイア。これを運ぶのを手伝ってくれないか」
そして現在、ロイドと一緒に依頼の真っ最中である。あ、依頼内容的にはもう完了しているのだけどね。
「わかったわ。これを運べばいいのね?」
「ああ、よろしく頼む」
ロイドが運ぼうとしていた魔物を空間魔法でしまう。これでどんなに大きな魔物でも運ぶことが出来る。さすがにドラゴンとかになると大きすぎて入らないかもしれないけどね。私にだって限界はあるのだ。
「いや、本当に助かる。今までは運べない魔物は近くに埋めて放置だったから、いつも心残りだったんだよな」
基本的に討伐した魔物はその場に放置することが多いらしい。さすがにそのままだと他の魔物が寄って来る可能性があるから、ロイドが言ったように埋めるらしいけど。
それで何で今回は討伐した魔物を運ぶのかというと、傭兵ギルドは討伐した魔物の買い取りをしているから。
買い取っているのは主に素材として使える魔物や食べられる魔物。で、今回討伐した魔物はイノシシ型の魔物。要するに食べられる魔物なわけで、こういった魔物は結構高値でギルドが買い取ってくれるのだ。
これを傭兵ギルドに持っていけば依頼料と魔物を売った料金の両方が手に入るということね。はっきり言って傭兵ギルドにある依頼って1つだと大した金額にはならない。だから一度に複数の依頼を受けるのだけど、討伐した魔物を持っていけばより効率的にお金が稼げるってことね。
「依頼完了の報告とこれを売ったらどうしますか? いつも通りに魔法の指導でもいいのだけど」
「それでお願いするよ。いつもありがとうな」
そう言って隣を歩いているロイドが私の頭を優しく撫でる。
おお、実に良いわね。仲良くなった、距離が縮まったのが実感できるわ。
本当に最初は隣に座る事すら恥ずかしがっていたのに、今では軽い接触ならロイドの方からしてくれるようになった。
ああ、私の努力が実ったのを実感するわ。でも、まだまだ。もっと私に対して無防備になって欲しい。
まだ、手を繋ごうとするとすぐに避けるし、体を寄せようとすると回避してくる。これを抵抗なく受け止めてくれるようになって初めて私の努力が実ったと言えるはず。
だから、まだ努力は続ける。
そう、私は出来る女。魔法から料理までなんだってできる。出来れば私の手料理を食べさせてロイドの胃袋を掴みたいところだけど、残念ながらそれが出来る環境にないことが悔やまれるわね。
そうこう考えている内に傭兵ギルドに到着し、依頼の報告と持ってきた魔物の引き取りを終えた。
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