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貴方が欲しい
本登録と待っていたロイド
しおりを挟むとりあえず私が言ったことは飲み込めたのか、ロイドの表情が理解不能から困惑に変わっていった。
うん。そう言う表情も凄くそそ……じゃない。待ちなさい、私。これはやり過ぎれば嫌われる流れだわ。今の発言で少し引かれている気もするし慎重にしないと。
うん。もう少し。そう、もう少しゆっくり距離を詰めていくのよ? お母さんも昔言っていたわ。女慣れしていない男はいきなり距離を詰めると逃げるって。だから、こう言うのは狩りと同じよ、って。
「ええと、それ、俺はどうしたらいいんだ?」
「ご、ごめんなさい。少しいきなりすぎたわよね。今言ったことはしばらく忘れていて」
「そ…そうか?」
うわー。さすがに引かれた感がすごいわ。うう、でも欲しい。いえ、そもそもこの言い方が悪いのかしら? 人は物ではないし、治療の対価として人そのものを要求するのは悪徳商人みたいなものだものね。
とりあえず、この気まずい感じをどうにかしたいわね。
「おい、お前ら。さっさと移動してくれないか? そう言うのは別の所でやってくれ」
側で私たちのやり取りを見ていたギルド長が呆れたような表情で言って、移動を促した。いいタイミングね、ギルド長! さあ、移動しましょう、そうしましょう。
訓練場から戻った後はギルドの受付で本登録用の書類を受け取って必要項目を埋めていった。受付を担当しているのはギルド長……ではなく、別の受付嬢。いや、他の人がいるなら何であの元受付嬢をここに置いていたのかしら。
何か理由でもあったのか、もしくは意中のロイドが帰って来るのがわかっていたから無理やりそこに居たのか。いえ、一応、担当の時間みたいだったからあの元受付嬢が居なくなった代わりに、臨時でこの受付嬢が担当する形になっただけかもしれないわね。
「これで大丈夫ですか?」
書類を全て書き終えたので、受付嬢にそれを渡した。受付嬢は受け取った書類を念入りに確認してから、こちらを見た。
「レイアさんは他国出身のようですが、当ギルドでの登録で問題ないのでしょうか? 一応、最初に登録したギルドが所属している国がギルドカードに記載されることになるので、それが問題になるようでしたら止めておいた方が宜しいかと思います」
「あ、それは大丈夫です」
別にそれが問題になるような立場ではもうないのだから気にする必要は無い。それに、問題になりそうだったら直ぐに登録を消せばいいはずだ。
「そうですか。ならこの記入された通りにカードを発行しますね」
「よろしくお願いします」
「ええ、出来上がるまでに少し時間が掛かるので、それまでは近くで待機していてくださいね。さすがに居なくなってしまっては渡すことが出来ませんし、場合によってはペナルティが発生することもあるので」
「わかりました」
私がそう言うと同時に受付嬢は受付裏の空間に書類を持って言った。おそらく、そこにカードを作る魔道具的な物があるのだろう。
周囲を見渡す。ギルド内には私の他に1人しかいない。まあ、それはロイドなのだけど、どうやら彼は依頼完了の報告に来ただけだったらしい。本当に運がないわね。私にとってはこの上ない幸運だったのだけど。
「ロイドはもう用は済んだのでしょう? 何でまだここに?」
「いや、君を待っていたんだ」
これはどう言う意味なのかしら。単に用があっただけなのか、それとも私が気になっていたからなのか、どちらかしらね?
「どうして…ですか」
緊張で声が詰まる。
さっきまでは勢い、と言うか場の流れで詰め寄っていたから緊張なんてしなかったけれど、こう意識してしまうと駄目ね。期待で気持ちが高まるわ。
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