上 下
10 / 66
貴方が欲しい

お仕置き?

しおりを挟む
  
「君…確かレイアだったか。模擬戦はギルド裏にある訓練場でやることになっているから、私に着いてくるように」

 着いてくるようにと言われて先導するギルド長の後に続こうとしたところで、いきなりギルド長が止まった。
 って、危なくぶつかる所だったじゃないの。

「っと。すまない先にやっておかなければいけないことを思い出した。すぐ戻るので少しだけ持っていてくれ」

 そう言ってギルド長は受付の奥の空間に消えて行った。
 まあ、さっきも騒ぎを聞きつけて出て来ただけだし、何かをやっている途中だった可能性はあるわね。でも、それだったらさっき受付嬢について行くように指示を出して欲しかった。既に受付嬢はここに居ないから今更無理だったのでしょうけど。


「すまない。待たせた」

 数分も経たないうちにギルド長は戻って来た。同時にギルドの外に走って行った職員らしき人を見かけたけど、何か関係があるのかしらね。

 そうして私はギルド長に続いてギルド裏にある訓練場に向かった。


 訓練場に着くと既に受付嬢は定位置らしき場所に立っていた。その様子を元からいたであろう職員や傭兵と思われる人たちが嫌そうな目でその様子を窺っていた。

「遅かったじゃないですか。何をしていたんです? もしかして私が怖くてもたついていたのではないでしょうね?」
「いえ、それはないです」

 訓練場に着くなり受付嬢に挑発っぽいことを言われるが、そんなことはあり得ないのできっぱりと否定しておく。ここで何も言わないのは肯定ととられるから否定はしておかなければならない。

「私の都合で少し待ってもらっただけだ。それよりもシーアは訓練用の武器を使え」
「は? 嫌ですよ。そんな汚い物なんて触りたくはありません」
「普段から加減が出来ないのだから、最低限武器の性能は落とす」
「嫌です!」

 またこれか。面倒、と言うかもうどうでもいいのだけど。さっさと進めて欲しい。

「時間の無駄なので、武器は替えなくていいですよ。正直、そのやり取りは飽きました。さっさとしてください」
「いや、さすがにそれは…」
「問題ないです。それに何があっても自己責任、なのでしょう?」
「そうだが…」
「ほら! いいって言っているじゃないですか!」

 この受付嬢、さっきから受け答えがワンパターンね。……まあ、それは私にも言えることだけど。

「本当にいいのか?」
「ええ。あぁ、それと私も武器は持っているのでそれは不要です」

 なんか私にも訓練用の武器を渡そうとしていたギルド長に私はあらかじめ出していた武器、と言うか扇子を出して制止する。

 そう言えばこの扇子、公爵家に居た時に作ったやつなのだけど返さなくてよかったのかしら? いや、私用に作ったやつだから返したところで無意味なのだけど、返せって言われなかったから良いのかもしれないわね。

「そうか? ならわかった」

 そう言ってギルド長は手に持った魔法用の杖を近くにあった武器棚に片していた。

「では、模擬戦を始める。2人とも魔法がメインであるので開始位置は互いに10メートルは離れている事。…シーアもう少し離れろ。いくらレイアが良いと言ってもそれは認められない」

 明らかに10メートルよりも近い位置で始めようとしていた受付嬢がギルド長に注意された。さすがに駄目なことがわかっていたのか受付嬢は舌打ちしながらも、渋々私から距離を取った。

 うーん、態度が悪い。
 わかっていたことだけど、真っ向から闘おうとは一切思っていないわね。さっきの距離も明らかに不意打ち狙いだろうし。
 これは、まともにやり合わないで受付嬢の魔法は最初の2、3発受けてから後は一気に勝負を決めた方が良いかしらね。元からそのつもりだけど、一方的に負かす形でお仕置きと行きましょうか。

「それでは2人とも、準備は良いな。それでは…模擬戦始めっ!」

 ギルド長の合図とともに受付嬢が魔法を放ってきた。私は直ぐに動かずに受付嬢から放たれた大き目の火球の魔法を観察する。

 発動までの速度、普通。攻撃速度、やや遅い。魔力量、少な目。密度、論外。うん。回避する必要もないわ。
 私は向かってきた魔法を持っていた扇子で叩き落とした。すると魔法は、ボヒュっといった感じの音を立てて消えた。

 うん。音からしても見た目だけ派手で使用されている魔力の量が少なすぎるわ。模擬戦が始まる前からこっそり詠唱を始めていたからもう少しまともな物が来ると思ったのだけど拍子抜けね。

「は? 何で私の魔法が叩かれただけで消えるのよ! ズルでもしているんじゃないでしょうね!」

 想定外にあっさり魔法を消されたのが気に食わなかったようで受付嬢が怒りをあらわにする。

「そんなことはする必要ないでしょう?」
「ふざけないでよっ!」

 そう言って怒りに任せ受付嬢はまた魔法を放ってきた。今回の魔法はさっきよりも魔力は多めだけど、他は変わらないわね。また同じように扇子で叩いて魔法を消す。

 もういいわね。最初は後1発受けるつもりだったけど、この程度ならその必要もないし。

 そう判断した私は受付嬢に向かって魔法で空気を圧縮した物を飛ばした。

「はぁ? 何でそんな簡単そうに。やっぱりズルムギョバッ!?」

 放った魔法が受付嬢の顔面に当たって弾け、受付嬢を吹き飛ばした。声を出している時に当てたから変な感じで声が出ていたけど大丈夫かしら。さすがに怪我をさせるつもりはないのだけど。……あ、鼻血が出ているわね。

 ……まぁ、これぐらいなら怪我には入らないからいいかしらね?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[完結] 私を嫌いな婚約者は交代します

シマ
恋愛
私、ハリエットには婚約者がいる。初めての顔合わせの時に暴言を吐いた婚約者のクロード様。 両親から叱られていたが、彼は反省なんてしていなかった。 その後の交流には不参加もしくは当日のキャンセル。繰り返される不誠実な態度に、もう我慢の限界です。婚約者を交代させて頂きます。

聖女に負けた侯爵令嬢 (よくある婚約解消もののおはなし)

蒼あかり
恋愛
ティアナは女王主催の茶会で、婚約者である王子クリストファーから婚約解消を告げられる。そして、彼の隣には聖女であるローズの姿が。 聖女として国民に、そしてクリストファーから愛されるローズ。クリストファーとともに並ぶ聖女ローズは美しく眩しいほどだ。そんな二人を見せつけられ、いつしかティアナの中に諦めにも似た思いが込み上げる。 愛する人のために王子妃として支える覚悟を持ってきたのに、それが叶わぬのならその立場を辞したいと願うのに、それが叶う事はない。 いつしか公爵家のアシュトンをも巻き込み、泥沼の様相に……。 ラストは賛否両論あると思います。納得できない方もいらっしゃると思います。 それでも最後まで読んでいただけるとありがたいです。 心より感謝いたします。愛を込めて、ありがとうございました。

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?

ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。 だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。 これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

公爵令嬢の辿る道

ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。 家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。 それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。 これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。 ※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。 追記  六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

【完結】妹が欲しがるならなんでもあげて令嬢生活を満喫します。それが婚約者の王子でもいいですよ。だって…

西東友一
恋愛
私の妹は昔から私の物をなんでも欲しがった。 最初は私もムカつきました。 でも、この頃私は、なんでもあげるんです。 だって・・・ね

穏便に婚約解消する予定がざまぁすることになりました

よーこ
恋愛
ずっと好きだった婚約者が、他の人に恋していることに気付いたから、悲しくて辛いけれども婚約解消をすることを決意し、その提案を婚約者に伝えた。 そうしたら、婚約解消するつもりはないって言うんです。 わたくしとは政略結婚をして、恋する人は愛人にして囲うとか、悪びれることなく言うんです。 ちょっと酷くありません? 当然、ざまぁすることになりますわね!

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います

りまり
恋愛
 私の名前はアリスと言います。  伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。  母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。  その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。  でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。  毎日見る夢に出てくる方だったのです。

【 完結 】「婚約破棄」されましたので、恥ずかしいから帰っても良いですか?

しずもり
恋愛
ミレーヌはガルド国のシルフィード公爵令嬢で、この国の第一王子アルフリートの婚約者だ。いや、もう元婚約者なのかも知れない。 王立学園の卒業パーティーが始まる寸前で『婚約破棄』を宣言されてしまったからだ。アルフリートの隣にはピンクの髪の美少女を寄り添わせて、宣言されたその言葉にミレーヌが悲しむ事は無かった。それよりも彼女の心を占めていた感情はー。 恥ずかしい。恥ずかしい。恥ずかしい!! ミレーヌは恥ずかしかった。今すぐにでも気を失いたかった。 この国で、学園で、知っていなければならない、知っている筈のアレを、第一王子たちはいつ気付くのか。 孤軍奮闘のミレーヌと愉快な王子とお馬鹿さんたちのちょっと変わった断罪劇です。 なんちゃって異世界のお話です。 時代考証など皆無の緩い設定で、殆どを現代風の口調、言葉で書いています。 HOT2位 &人気ランキング 3位になりました。(2/24) 数ある作品の中で興味を持って下さりありがとうございました。 *国の名前をオレーヌからガルドに変更しました。

処理中です...