5 / 66
自由にさせていただきます!
これで自由だ
しおりを挟むあぁ……うん。とりあえず、アイリの失態は気付かなかったことにしよう。たぶんその内、匂いで誰かが気付くだろうけど、それは私には関係ないし。
「とりあえずは、まあ、これでいいでしょう」
「アイリ!?」
王子……いや、国王自ら王族では無くすといったのだから元王子?がアイリを抱きかかえる。うーん、まだ魅了系の魔法は解けていない感じ? 別にいいのだけど、これも解いておいた方が……このままの方が都合はいいからいいか。
「それで、契約の方の話をしましょうか。国王」
「ああ、そうだな」
不躾なことを言われても表情を変えなかった国王が顔を顰めた。余程、そのことについて話したくは無いようだ。
まあ、話の内容は私が王子と婚約する際に、賭けとして国王と契約していたことについてだ。
契約内容は、正式に婚姻する前に王子が私情で婚約破棄を宣言した場合、私がその後の生活を自由にして良いという物。
逆に王子がそのままレイアとの婚約を進めていた場合は、レイアが国王からの指示を出された場合は必ず従うという内容。
この言葉だけであれば、国王からの指示なのだから当たり前だと思うかもしれないけれど、この指示と言うのは人道的な物から外れている物も含むわけで、要するに殆ど奴隷と変わらない扱いを許容しなければならないと言うことだ。
「では、契約書を出しますね」
ちょっとだけ国王を驚かせようと、胸元から丁寧に巻かれた羊皮紙を取り出してみる。
「お前は、何でそんなところにしまっていたのだ」
「ふふっ、面白いでしょう? まあ、別にここに隠していた訳ではないのですけれど」
ネタ晴らし、ということで私は何もない空間からハンカチを取り出した。
「空間魔法です。使えると便利ですよ?」
「ふん。そんなものお前にしか使えないだろうよ。使用する魔力が多すぎるわ」
国王の呆れたような物言いに満足し、取り出したハンカチを空間魔法でしまった。
「さっさと終わらせましょう」
「さっさとしろ」
国王に急かされながらも、持っていた契約書に魔力を流し始めた。
「契約の是非を問う」
私が魔力を通したことで光り始めていた契約書に向けて問う。すると、契約書に書かれていた文字がより光り始めた。
そして数秒後、光が収まると同時に契約書の何も書かれていなかった場所に文字が浮かび上がっていた。契約が成立しなければ文字が浮かび上がってくることはないので――
「契約は成立ですね!」
「ああ、そのようだ。元よりわかっていたことだがな」
「そうですけれど、こうしなければ契約の効果は表れませんからね」
「ふん、まあ良い。今後、王宮を含む我が国は契約期間においてお前の行動には関与しない。予め決めていたことを済ませたら好きにすればよい。お前はもう自由だ」
「ええ!」
そうしてようやく私は今まで自分を縛り付けていた物を取り払い、自由に生きる権利を手に入れた。
58
お気に入りに追加
2,018
あなたにおすすめの小説
(完結)私が貴方から卒業する時
青空一夏
恋愛
私はペシオ公爵家のソレンヌ。ランディ・ヴァレリアン第2王子は私の婚約者だ。彼に幼い頃慰めてもらった思い出がある私はずっと恋をしていたわ。
だから、ランディ様に相応しくなれるよう努力してきたの。でもね、彼は・・・・・・
※なんちゃって西洋風異世界。現代的な表現や機器、お料理などでてくる可能性あり。史実には全く基づいておりません。
[完結] 私を嫌いな婚約者は交代します
シマ
恋愛
私、ハリエットには婚約者がいる。初めての顔合わせの時に暴言を吐いた婚約者のクロード様。
両親から叱られていたが、彼は反省なんてしていなかった。
その後の交流には不参加もしくは当日のキャンセル。繰り返される不誠実な態度に、もう我慢の限界です。婚約者を交代させて頂きます。
【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい
春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。
そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか?
婚約者が不貞をしたのは私のせいで、
婚約破棄を命じられたのも私のせいですって?
うふふ。面白いことを仰いますわね。
※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。
※カクヨムにも投稿しています。
【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。
聖女に負けた侯爵令嬢 (よくある婚約解消もののおはなし)
蒼あかり
恋愛
ティアナは女王主催の茶会で、婚約者である王子クリストファーから婚約解消を告げられる。そして、彼の隣には聖女であるローズの姿が。
聖女として国民に、そしてクリストファーから愛されるローズ。クリストファーとともに並ぶ聖女ローズは美しく眩しいほどだ。そんな二人を見せつけられ、いつしかティアナの中に諦めにも似た思いが込み上げる。
愛する人のために王子妃として支える覚悟を持ってきたのに、それが叶わぬのならその立場を辞したいと願うのに、それが叶う事はない。
いつしか公爵家のアシュトンをも巻き込み、泥沼の様相に……。
ラストは賛否両論あると思います。納得できない方もいらっしゃると思います。
それでも最後まで読んでいただけるとありがたいです。
心より感謝いたします。愛を込めて、ありがとうございました。
なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?
ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。
だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。
これからは好き勝手やらせてもらいますわ。
公爵令嬢の辿る道
ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。
家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。
それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。
これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。
※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。
【完結】妹が欲しがるならなんでもあげて令嬢生活を満喫します。それが婚約者の王子でもいいですよ。だって…
西東友一
恋愛
私の妹は昔から私の物をなんでも欲しがった。
最初は私もムカつきました。
でも、この頃私は、なんでもあげるんです。
だって・・・ね
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる