上 下
4 / 66
自由にさせていただきます!

回復魔法の副作用

しおりを挟む
 
「え? なっ何でっ。…うぎっ!!」

 アイリの腕が私の頭を飛び越えて少し離れた位置に落ちた。

 ちょっと、血が飛んできたんだけど!?

 すぐに魔力を使い飛んでくる血が掛からないようにする。そしてその後に近くに落ちたアイリの腕を回収し、会場に散った血液を綺麗に処理しておく。

「お前は本当に公爵家の者か? このような場での他者に影響の出る魔法の使用は禁止されているはずだ。そんなことも知らないのか?」
「うぐっ、魔法は使っていっません」

 アイリが切られた腕の痛みに耐えながら国王に反論した。腕切られた痛みに耐えながら発言することは凄い胆力ではあるが、どうやら魔法で止血した上で痛みを和らげているため、それでどうにか発言できているようだ。

「何を言っている? 今、左手に嵌めた指輪から魔法を発動させていたではないか。それとも魔道具だから魔法ではないとでも言い張るつもりか? どちらにせよ、魔道具であろうと相手に干渉する魔法は禁止されている。使ったのは凡そ魅了系か洗脳系の魔法だろうが、元よりそのどちらも国内での使用が禁止されているものだ」

 国王は痛みで蹲っているアイリを侮蔑のまなざしで見下ろす。国王に対する以前に、こうもルールを無視し続けていれば誰だろうと同じような視線を向けるだろう。それくらいにアイリがやっていることは国内のみならず国外でも禁止されている事なのだ。

「国王。いくら禁止事項を無視したからといっていきなり腕を切り落とすのは止めてください。会場が汚れるじゃないですか。それに飛び散った血が掛かりそうでした」
「そんなこと気にすることではないわ! しかし、レイアお前も一応公爵家の一員だろう。何故こんな馬鹿が公爵家に居るのだ」
「私にそんなことを言われてもわかりません。と言いたいところですが、この子が特別馬鹿というのもありますけれど、元より公爵家の考え方がバレなければ問題ないという感じなので。まあ、これは多くの貴族が同じように考えているようですけれどね」

 周りを見回すと思い当たる節があるのか、拙いと思っているのか、険しい表情をしている貴族と顔を背けている貴族がちらほらと見られた。

「なるほどな。私は国内全体を見るだけではなく、近い場所にも目を向けなければならないのか」

 国王はあまりこのような場所に来ることは無いので、今までそんなことがあるとは知らなかったらしい。

「っと、その前にこの子の腕を治しておきましょう。いくら何でもこのまま放っておくと失血死しかねませんし、規則違反をしたからと言って国王だとしても直ぐに殺していいわけではありませんよ」
「……ひっ、な何をっ!?」

 口をきつく結び痛みに耐えているアイリに近付き、先ほど拾って置いた腕を傷口というか断面同士をくっ付ける。そして、その状態で回復魔法をかけた。

「イギャアアアアアアッ!!」

 回復魔法をかけ始めるとアイリが痛みのあまり悲鳴を上げる。魔法で無理やり腕をくっ付け治療をするのは急速に治せる分、その副作用で激痛が走るのだ。
 アイリはあまりの激痛で必死に体を逃がそうと暴れてさせているが、それを無視し体を押さえ付けて回復魔法をかけ続ける。

 少しずつ治せば多少痛みは小さくなるけど、痛みが無くなるわけでもない。それならさっさと治した方が術者の負担は少ないし苦痛も短時間で済むので互いに利点はある。いきなりされる側からしたら溜まったものではないだろうけど。

 そろそろくっ付いたかしら。もう悲鳴は出ていないし…ん? アイリ気絶しているわね。とりあえず確認して……うん、ちゃんとくっ付いているわね。って、ちょっと待って。漏らしているじゃないの。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。

あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。 「君の為の時間は取れない」と。 それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。 そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。 旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。 あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。 そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。 ※35〜37話くらいで終わります。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

兄を溺愛する母に捨てられたので私は家族を捨てる事にします!

ユウ
恋愛
幼い頃から兄を溺愛する母。 自由奔放で独身貴族を貫いていた兄がようやく結婚を決めた。 しかし、兄の結婚で全てが崩壊する事になった。 「今すぐこの邸から出て行ってくれる?遺産相続も放棄して」 「は?」 母の我儘に振り回され同居し世話をして来たのに理不尽な理由で邸から追い出されることになったマリーは自分勝手な母に愛想が尽きた。 「もう縁を切ろう」 「マリー」 家族は夫だけだと思い領地を離れることにしたそんな中。 義母から同居を願い出られることになり、マリー達は義母の元に身を寄せることになった。 対するマリーの母は念願の新生活と思いきや、思ったように進まず新たな嫁はびっくり箱のような人物で生活にも支障が起きた事でマリーを呼び戻そうとするも。 「無理ですわ。王都から領地まで遠すぎます」 都合の良い時だけ利用する母に愛情はない。 「お兄様にお任せします」 実母よりも大事にしてくれる義母と夫を優先しすることにしたのだった。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

処理中です...