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あれそれの結末
デスファ侯爵家の存在意義
しおりを挟む「あの、これはデスファ侯爵家から送られてきた書類……なのですか?」
「そうだ」
信じられない、そう思いアグルス様に確認を取りましたが短くそう返されました。
アグルス様の反応からしてそれが普通、いえ、デスファ侯爵家の本来の姿を知っていたのでしょう。思い返してみればアグルス様はデスファ侯爵家についてあまり意見を述べていませんでした。
今までは何となくあまり関わりたくはないのだろうと考えていましたが、あのような悪評が立つ理由を知っていたからなのでしょう。
「それを読めばある程度わかると思うが、デスファ侯爵家の役割はナルアス辺境伯家の役割や国の中での立ち位置は似ている」
「はい」
ナルアス辺境伯家は隣国に接している重要な領地であり、国防の要所です。主な貿易の拠点はレセンダル領ですが、ナルアス家は軍事境界線に接しているため隣国ににらみを利かせる、という意味ではレセンダル領よりも国の重要度は高いです。まあ、近年は多くの国が軍事行動を取っていないので緊張感は薄いですが、何時どうなるかなどわかる訳がないので常に警戒はしているのです。
そしてナルアス辺境伯家の役割が国外に睨みを効かせるであれば、デスファ侯爵家は国内に睨みを効かせる役割があるという感じでしょうか。
表立った物ではないので少し違う気もしますが、役割は似ています。不正や反乱分子の抑制、スパイなどの他国から入って来た者を捕らえるなど。国内に潜む敵、を排除するのが役目なのでしょう。これだけ見れば暗部のような活動内容ですね。そう言えば似たような噂がデスファ家にはありましたが、あながち間違いではなかったようです。
書類の後半、私に向けた部分を確認します。内容は基本的には関係者になったので今後はよろしく、と言った感じの内容です。立場上、直接の関りはないでしょうけれど、何かがあった際に口裏合わせなりする必要があるという事でしょうか。
書類の内容を確認し終え顔を上げるとアグルス様が私の様子を伺っていました。真剣な目で見られていたことに少し背筋がひやりとしましたが、書類をアグルス様に返します。
「おおよそ理解しました」
「ならいい」
今確認した書類の主な内容は先にアグルス様が述べていたように国としては、ゼペア商会は商会長を挿げ替え存続させる方針のようですね。ですが、さすがに今のまま、という訳ではなくいくつかの商会に別ける、要は取り込まれていた商会を元に戻す、という訳です。まあ、これでも問題が無いという訳ではないのですが、制御できない商会を維持するよりは良い、という判断なのでしょう。
「このような状況の中で渡したという事で察せているだろうが、この書類の内容とデスファ家のことは、この家の者であったとしてもここに居る者以外には他言無用だ」
「わかりました」
アグルス様と私を抜いて、現執事長以外に知っている者はいないのですか。
これはアグルス様の妻である以上に、私の事を信頼してくださっているという事でしょうか。そうだとしたら嬉しいですね。
しかし、最低数の者にしか伝えない情報、いえ、これは確実に信頼できると思える者が他に居ない、ということなのかもしれません。前執事長の件で多くの使用人が新しく入って来ていますし、その可能性は高いでしょう。
さすがに、当主とその妻である私を抜いて1人しか情報を把握していないというのは不都合が多いはずですから、今後、知らせても問題ないと判断できる者が出てくれば、この情報を共有する者も増えていくでしょうね。
「今回の話はこれで終わりだ。次にこの事について進展があった時、また呼び出すことになるだろう」
「はい。それでは私は戻ります」
「ああ」
そうして私はアグルス様の執務室から退出しました。
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