上 下
42 / 45
ダンジョンいじいじ

条件さえ満たせれば

しおりを挟む
 

 ダンジョンを手に入れた翌日。いつもより少し早い時間からFSOの世界にログインした。

 理由は、今日が日曜日のためプレイヤーのログイン率が上がるはず・そうなればフィールド上がプレイヤーで混雑するだろうから、そうなる前に今日受けられる依頼を進めておきたかったのだ。

 昨日は土曜日だったけどイベント当日だったから、通常フィールドに居たプレイヤーの数はそこまでではなかった。
 しかし、今日はイベントではないし、普通の休日だ。なので昼間になれば通常フィールドにプレイヤーが増えるだろうし、そうなれば依頼を消化するのに時間が掛かるようになってしまう。それを避けたかったから、早い時間からログインすることにしたのだ。

 昨日と同じようにギルドに赴き、依頼を受ける。
 今回受けた依頼を全て完了させれば、晴れて第4エリアに向かうためのエリアボスと戦うことが出来るようになる。


 そして、討伐系の依頼を優先して進めていると、フレンドメールの着信音が聞こえて来た。

 周囲の安全を確認した後、フレンドメールを見てみると送ってきたのはイケシルバーだった。メールを開きその内容を読んでいく。

 ああ、第4エリアに行くための手伝いをしてくれる提案だね。いやでも、本題はこれじゃないっぽいね。何か新しい情報は無いかどうかを聞きたい感じかな。

 うーんまあ、インスタントダンジョンの情報とか、PMダンジョンを話すのはあり? 他に売れそうな情報は……今のところないし、この情報を個人で秘匿していくのは無理があるからさっさと渡して、報酬をもらった方がお得だよね。

 とりあえず、手伝いは要らないという返事と、新しい情報があることくらいは報告しておこう。
 あっと、そうだ。イベントの結果について祝いの言葉でも書いた方が良いよね。ちらっと確認したら個人戦でイケシルバーが準優勝で、パーティー戦が確か3位だったはず。

 あの人たちって強かったんだねぇ。検証メインで活動しているって言っていたからそこまで強いとは思っていなかったんだけど、そうじゃなかったんだ。検証するにも強さが必要ってことなのかな。
 一応、イケシルバーがそこそこ強いのは知っていたんだけどね……って、なんで情報系クランなのに上位に食い込んでいるんだろう? 検証するのもクラン活動の内とか言ってはいたけれど、さすがにおかしいような。まあ、強くても弱くても私には関係ないから別にいいか。

 フレンドメールの返信を終えて、また受けている依頼を熟していく。今受けている中で完了していないのは3つ。これを完了させればエリアボスと戦うための条件を満たせるのだ。


 30分ほどかけて残っていた依頼が完了したことの報告と、第4エリアに行くためにエリアボスへ挑む許可というか、ギルドランクを上げるためにギルドの窓口へ向かう。

「依頼が完了したので報告に来ました」
「ギルドカードの提示をお願いします」
「はい」
「ありがとうございます。少々お待ちくださいね。…………うん。ちゃんと完了していますね」

 指示に従ってギルドカードをカウンターに出すと、受付の女性は受け取ってすぐ更新するためのアイテムにギルドカードを触れさせた。そして、ギルドカードが一度小さく発光すると、そのアイテムから離しカードの内容を確認して私に返してきた。

「今回の依頼を完了されたことでギルドポイントが一定値を越えましたので、ギルドランクが1つ上がります。これでギルドランクはDになりました。おめでとうございます」
「ありがとうございます。それで、次のエリアへ行きたいのですが、このまま行っても大丈夫ですか? 何やら条件を満たさないといけないと聞いたのですけれど」
「第4エリアへ行くための条件はギルドランクをDにすることと、職業がテイマーの場合は対応するスキルの平均レベルが25以上ですから、ミヨさんは問題なく先に進むことが出来ますよ」
「そうなんですか?」
「ええ」

 ああ、そういう事、なるほど。職業によって条件が違うわけか。
 詳しく調べなかったのから、何個も条件を満たさないと駄目だと思っていたんだけど、私の場合は2個満たせばよかったわけね。それも普通にプレイしていれば割と簡単に満たせるやつ。
 まあ、最終地点が何処かはわからないけど、まだ序盤と思われる第3・4エリアなのだから、そんな面倒な条件が出て来るわけないか。

 エリアボスに問題なく挑めることを確認した後、受付の女性に再度礼を言ってギルドを出る。

 さて、それじゃあ、さっさとエリアボスであるモンスターを倒して第4エリアに向かうとしよう。
 確か、エリアボスの種類はキラープラント……だったよね。調べた限りは大丈夫そうではあるんだけど、何事もなく倒せればいいなぁ。
 
 ちょっとだけ不安を覚えながら第3エリアと第4エリアの間にあるエリアボスの戦闘エリアへ向かう。

 今回戦うエリアボスはぷらてあと同系統のからめ手が強いタイプだ。まあ、見た目はウツボカズラっぽいみたいだから、ぷらてあみたいに可愛い感じではないんだけど。

 それにぷらてあのステータスって物理面が割と弱いんだけど、このボス普通に蔓で締め上げてダメージを与えて来る攻撃があるから、ステータス面では大分違うっぽいんだよね。進化の過程次第ではそういうモンスターに進化したりするんだろうか?

 エリアボスの戦闘エリアへ進む。戦闘エリアの前には他のプレイヤーも居たけど、同時に入ったとしても別の戦闘エリアに飛ばされるだけなので、ダンジョンと同じように順番待ちというのは存在しない。

 視界に映るエリア変わる。まあ、劇的に変わるというわけではないけれど、少なくとも戦闘エリアに入る前に見えていた先の光景とは違う場所である。


『エリアボスとの戦闘エリアに入りました』


 森の中ほどではないけれど、周囲に木々が生えている中に広がる背の低い草だけが生えた空間。その中心に大きなモンスターのシルエットが現れた。

「ジョワワワワワアアアァァァァ!!」

 黒味がかったシルエットからはっきりと色がわかるようになると、そのモンスターが雄たけびを上げる。
 植物系のモンスターであるため、今までのエリアボスのような大きな音ではないけれど、十分に相手を威圧できそうな声量はある。しかし、私はそれよりも別の事を考えていた。

 なんていうかあれだよね。この叫び声だと子供の頃に見た再放送特撮に出て来た銀色の戦士を思い起こすんだけど。ほとんど見ることなく別の番組にを見ていたのに、結構印象に残っていた声だったのかなぁ。

 と言うかあの戦士、街中で戦う時にビルとかに当たっているから高確率で人殺してない? 怪獣が出てきて街が混乱して、そこに戦士が来る。そして戦いは基本的に肉弾戦だから、戦っている間に周囲の建物が損壊するなどの影響が出る。あれ、明らかに避難できていない奴いると思うんだよね。まあ、子供向けの特撮だし、近くに居た人は全員避難が完了していることになっているんだろうけど。

 って、こんなことを考えている場合じゃなかった。

「シュラちゃんと朱鞠ちゃんはいつも通り攻撃で、ただし、攻撃したら一旦距離を取る事。捕まったら抜け出せるのかがわからないからね。ぷらてあちゃんは遠距離から蔓で攻撃で」

 攻略情報だとSTRが300を超えていれば拘束されていても抜け出せるとは書かれていたけれど、本当かどうかはわからないし、それがテイムモンスターにも当てはまるかはわからない。だから出来るだけリスクを避けるように、出来るだけ捕まらないようにしながら攻撃して、HPを削っていけばいい。

 ぷらてあに関しては正直、このボスとの相性が悪いんだよね。状態異常は効き難いらしいし、見た目からもそんな感じがする。
 おそらくこのボス戦で一番活躍できるのは朱鞠だと思う。拘束技も使うけれど元より攻撃パターンがヒットアンドアウェイだし、攻撃力も高いからね。シュラは体が小さいからボスの攻撃は当たりにくいと思うんだけど、動きがそこまで早いわけでもないから、ちょっと向いていないんだよね。

 私はシュラたちとぷらてあの中間くらいの位置でサポート役。基本、後ろに居るぷらてあの邪魔にならないように補助魔術と回復魔術で前衛のシュラと朱鞠をサポートして、余裕があれば光魔法で攻撃する形になると思う。

 前衛のシュラたちが着実にエリアボスのキラープラントにダメージを与えていく。

 誰も蔓に拘束されることは無かったのだけど、キラープラントのHPが半分を切った時の特殊攻撃で、溶解液を周囲にまき散らした際にシュラがもろにそれを浴びてしまった。シュラよりも体の大きい朱鞠は何事もなく回避していたけれど、これが速さの違いなんだろうね。

 すぐさま私が回復魔術を当ててHPを回復させたわけなんだけど、実際のところそこまでダメージを受けていなかった。いや、溶解液が付いていた間はスリップダメージを受けていたから、すぐに対処していなければより多くのダメージを受けていただろうけども。

「あとちょっとだけど、油断しちゃだめだよ!」
「わかったのです!」
「シュ……」

 キラープラントのHPが10%を下回ったタイミングで前衛の2人に声を掛ける。キラープラントはHPが20%くらいを切ったくらいから攻撃を激しくし、何度も2人を拘束しようと蔓を振り回していた。
 おそらくあれに捕まればぷらてあの攻撃にあるように、HPを回復させようとドレイン攻撃をして来るんだろうね。

 というか、なんかちゃっかり朱鞠が返事を返してきたけど、これって初めてだよね? いつの間に声を出せるようになったんだろう。何か変化があったのかな? 思い当たる節が何も思い浮かばないんだけど。

 

 そして、声を掛けてから1分程でキラープラントのHPは底を尽き、力なく体を地面に横たえた。

『エリアボス キラープラントの討伐に成功しました。
 これにより次のエリアである第4エリアへの移動が可能になりました』

 キラープラントを倒したことでアナウンスが響く。

「よし、これで第4エリアに行けるね」
「なのです!」
「うん」
「……」

 倒れていたキラープラントの体がポリゴンになって消えていくと同時にエリアが切り替わっていき、私たちはようやく第4エリアに足を踏み入れることができた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

引退した元生産職のトッププレイヤーが、また生産を始めるようです

こばやん2号
ファンタジー
とあるVRMMOで生産職最高峰の称号であるグランドマスター【神匠】を手に入れた七五三俊介(なごみしゅんすけ)は、やることはすべてやりつくしたと満足しそのまま引退する。 大学を卒業後、内定をもらっている会社から呼び出しがあり行ってみると「我が社で配信予定のVRMMOを、プレイヤー兼チェック係としてプレイしてくれないか?」と言われた。 生産職のトップまで上り詰めた男が、再び生産職でトップを目指す! 更新頻度は不定期です。 思いついた内容を書き殴っているだけの垂れ流しですのでその点をご理解ご了承いただければ幸いです。 ※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。

アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~

志位斗 茂家波
ファンタジー
新入社員として社会の波にもまれていた「青葉 春」。 社会人としての苦労を味わいつつ、のんびりと過ごしたいと思い、VRMMOなるものに手を出し、ゆったりとした生活をゲームの中に「ハル」としてのプレイヤーになって求めてみることにした。 ‥‥‥でも、その想いとは裏腹に、日常生活では出てこないであろう才能が開花しまくり、何かと注目されるようになってきてしまう…‥‥のんびりはどこへいった!? ―― 作者が初めて挑むVRMMOもの。初めての分野ゆえに稚拙な部分もあるかもしれないし、投稿頻度は遅めだけど、読者の皆様はのんびりと待てるようにしたいと思います。 コメントや誤字報告に指摘、アドバイスなどもしっかりと受け付けますのでお楽しみください。 小説家になろう様でも掲載しています。 一話あたり1500~6000字を目途に頑張ります。

UWWO ~無表情系引きこもり少女は暗躍する?~

にがりの少なかった豆腐
ファンタジー
フルダイブ型VRMMORPG Unite Whole World Online ユナイト・ホール・ワールドオンライン略称UWWO ゲームのコンセプトは広大なエリアを有する世界を一つに集約せよ。要するに世界のマップをすべて開放せよ。 そしてようやく物語の始まりである12月20に正式サービスが開始されることになった。 サービスの開始を待ちに待っていた主人公、大森あゆな はサービスが開始される15:00を前にゲーム躯体であるヘルメットにゲームをインストールしていた。 何故かベッドの上に正座をして。 そしてサービスが始まると同時にUWWOの世界へダイブした。 レアRACE? 何それ? え? ここどこ? 周りの敵が強すぎて、先に進めない。 チュートリアル受けられないのだけど!? そして何だかんだあって、引きこもりつつストーリーの重要クエストをクリアしていくようになる。 それも、ソロプレイで。 タイトルの副題はそのうち回収します。さすがに序盤で引きこもりも暗躍も出来ないですからね。 また、この作品は話の進行速度がやや遅めです。間延びと言うよりも密度が濃い目を意識しています。そのため、一気に話が進むような展開はあまりありません。 現在、少しだけカクヨムの方が先行して更新されています。※忘れていなければ、カクヨムでの更新の翌日に更新されます。 主人公による一方的な虐殺が好き、と言う方には向いていません。 そう言った描写が無い訳ではありませんが、そう言った部分はこの作品のコンセプトから外れるため、説明のみになる可能性が高いです。 あくまで暗躍であり、暗殺ではありません。 いえ、暗殺が無い訳ではありませんけど、それがメインになることは確実に無いです。 ※一部登場人物の名前を変更しました(話の内容に影響はありません)

VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio
ファンタジー
 特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。  神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。 そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。 日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。    神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?  他サイトでも投稿しております。

生産職から始まる初めてのVRMMO

結城楓
ファンタジー
最近流行りのVRMMO、興味がないわけではないが自分から手を出そうと思ってはいなかったふう。 そんな時、新しく発売された《アイディアル・オンライン》。 そしてその発売日、なぜかゲームに必要なハードとソフトを2つ抱えた高校の友達、彩華が家にいた。 そんなふうが彩華と半ば強制的にやることになったふうにとっては初めてのVRMMO。 最初のプレイヤー設定では『モンスターと戦うのが怖い』という理由から生産職などの能力を選択したところから物語は始まる。 最初はやらざるを得ない状況だったフウが、いつしか面白いと思うようになり自ら率先してゲームをするようになる。 そんなフウが贈るのんびりほのぼのと周りを巻き込み成長していく生産職から始まる初めてのVRMMOの物語。

チート級スキルを得たゲーマーのやりたいことだけするVRMMO!

しりうす。
ファンタジー
VRゲーム【Another world・Online】βテストをソロでクリアした主人公──────雲母八雲。 βテスト最後のボスを倒すと、謎のアイテム【スキルの素】を入手する。不思議に思いつつも、もうこのゲームの中に居る必要はないためアイテムの事を深く考えずにログアウトする。 そして、本サービス開始時刻と同時に【Another world・Online】にダイブし、そこで謎アイテム【スキルの素】が出てきてチート級スキルを10個作ることに。 そこで作ったチート級スキルを手に、【Another world・Online】の世界をやりたいことだけ謳歌する! ※ゆるーくやっていくので、戦闘シーンなどの描写には期待しないでください。 ※処女作ですので、誤字脱字、設定の矛盾などがあると思います。あったら是非教えてください! ※感想は出来るだけ返信します。わからない点、意味不明な点があったら教えてください。(アンチコメはスルーします)

処理中です...