27 / 45
次なる場所へ行こう
これはちょっと
しおりを挟む蜘蛛を倒した後に出てきた宝箱の中身は予想通り魔石(小)だけ。
正直別の物にして欲しいところだけど、今のところ魔石が手に入るのはダンジョンでゲートキーパーやボスを倒すか、スライムを倒す以外には無いので私以外のプレイヤーにとっては問題ないのかもしれない。
宝箱の中身を回収したので、転移陣を使用し次の階層に進む。
3層目は1、2層目と同じ森。しかし、若干薄暗く湿っぽい。
……訂正。さすがにこれは自分を誤魔化せない。これは同じ森じゃない。
目の前に広がっている光景は確かに森なんだけど、樹々が全体的に白みがかっている。これは葉の白い樹が生えているわけではなくて、別の理由で白くなっているのだ。
樹が白く見えている理由は、蜘蛛の巣。そう、蜘蛛の巣。しかもちょっと先に卵のうらしき白い球体が見えている。
もう面倒なことになる気配しかしない。
「モンスターハウス再び」
「…です」
幸いと言うべきか、ゴブリンの時とは違い、おそらく出て来るのはスモールスパイダーだけという点。そうだとすれば攻撃パターンは1種類のみのはずだから、対処はしやすいはず。
なんだけど、これ、人によっては発狂物になると思うんだよね。私もあまり好きではないし。
「先に進むのならあれをどうにかしないといけないんだよね」
「なのです」
いやだなぁ。いっその事、火魔術でも取得して焼き払ってみる? レベルが上がったからスキル取得可能欄が1枠空いているし、取れないこともないんだよね。まあ、今取ったところでスキルレベルが低くて使い物にならないだろうけど。ああ、なるほど? もしかしたらこの階層が湿っぽい理由は火魔術対策かも。
さすがに楽はさせてくれないか。
「シュラちゃん。危なくなったら声を上げてね。死んじゃいやだからね」
「です」
まあ、最悪シュラが死にそうになったら、私が先に死にに行くけどね。
私が先に死ぬと言うのは、テイムモンスは死んだらそれまでだけど、テイムモンスターの主が先に死んだ場合、プレイヤーがリスポーンポイントで復活すると同時に、テイムモンスもそこに転送されるからだ。それを利用してテイムモンスの死を回避する小技的なやつだね。一応攻略情報にのってる。あまりやっているテイマーは少ないみたいだけど。
自分から死にに行くのはあまり進められることではないのだけど、死んだら終わりのテイムモンスターの死を回避できるから、結構有用な手段ではあるんだよね。
「さて、じゃあ行こうか」
「っです!」
私の掛け声でシュラが蜘蛛の卵のうと思われるものに向かって跳ねていった。お饅頭みたいなフォルムでピョンピョン跳ねている姿はかわいいのだけど、嬉々として敵に向かって行っているのところを見るにもしかしなくてもシュラは戦闘狂か何かなのかもしれない。
「です!」
卵のうがまだ何の反応もしない内にシュラの攻撃がヒットした。ダメージが入ったような様子はないけれど、その拍子に卵のうの一部が裂け、中からスモールスパイダーが次々と出てき始めた。
うわぁ、ちょっと気持ち悪い。スモールスパイダーも1匹1匹見れば結構デフォルメされた見た目だからかわいくおもえるんだけど、さすがに数十匹とか百匹を超えるような数がぞわぞわと言うかわさわさと出てくれば、そんな感想は出てくるはずもない。
ゲームの中だから鳥肌が立つことは無いけど、リアルの体で鳥肌が立ってるかもこれ。
蜘蛛の子を散らすように、周囲にスモールスパイダーが散っていく……いや、本来ならそうなっていたんだと思う。ただ、卵のうの近くにシュラが居て、出てくる端から次々と倒していっているんだよね。
わらわら出てくるんだけど、1匹自体は弱いから攻撃すれば1撃で倒せるし、シュラは体の一部を鞭状にしているから1振りで数匹いっぺんに倒せているんだよね。何匹かはそれから逃れて私の方に向かってくるんだけど、それだってライトボール1発で倒せるから、苦戦も何もない。
そうして、処理作業のごとく出てくるスモールスパイダーを倒していき、10分もしない内に新しくスモールスパイダーが出てくることはなくなった。
「お疲れ様。シュラちゃん」
「です!」
戻ってきたシュラを労いながら、周囲を見渡す。
あれだけの数をそれなりの時間をかけて倒していたんだけど、他のモンスターは全然出てこなかった。この階層には他の種類のモンスターは居ないのかもしれない。
それと、モンスターハウスをクリアしたにも関わらず報酬らしき影もない。ゴブリンダンジョンも最初は黒曜石が報酬だと思っていたけど、あれ以降モンハウをクリアした後に何も出て来なかったから、ここでも無いのかもしれない。
しかしイケシルバーからこのダンジョンのメインはプレンテだと聞いていたんだけど、それとは違って蜘蛛ばかり出て来るんだよね。もしかして別のダンジョンに来てしまったのかな? でも、近くに似たようなダンジョンがあるとは思えないけど。
情報に関してイケシルバーが嘘を吐くとは思えないから、嘘を伝えられたってことはないだろうけど、どういうことなんだろう。
まあ、その辺はダンジョンを出た後にでも聞いてみればいいかな。
うん。子蜘蛛も倒したし、ボスの場所まで進もう。
正直、蜘蛛の巣が張り巡らされた樹々の中を進むのは気が進まないけど、ボスと戦わないとダンジョンはクリアした事にはならないから進まないとね。
「シュラちゃん行くよー」
「……なのです」
「ん? どうしたの?」
シュラに声を掛けたのだけど、その場から動こうとしない。後ろに居るはずのシュラを確認すると戦闘態勢を維持したまま、森の一点を見つめていた。
「です! です!」
シュラが体の一部を伸ばして見つめている先を指し示した。
「ん?」
何かあるんだろうかとその先にある森の中を確認してみると、そこから何かが勢いよく飛び出してきた。
「シュァァァアアー!!」
森の中から飛び出してきたのは、今まで出て来た蜘蛛よりも1回りどころか2回り近く大きな蜘蛛だった。
それは森の中から出て来て早々、私たちに向かって前足を上げて威嚇の姿勢を見せている。もしかしたらさっき倒したスモールスパイダーの親に当たる存在なのかもしれない。
「…あー、なるほど、連続戦闘だったのね。完全に戦いは終わってなかったと」
「です」
「ありがとう。シュラちゃん」
あのまま進んでいたらあの蜘蛛に奇襲されていたかもしてないから、シュラが気づいてくれていて助かった。
しかし、大きい蜘蛛だねぇ。まあ、リアルの蜘蛛をそのまま巨大化させた感じよりも、マイルドに巨大化させた見た目なのでそこまで気持ち悪い感じは無いんだけど、嫌な人は嫌だろうな、と思える程度には虫っぽさは残っている。
ただ、スモールスパイダー軍団と一緒に戦うことにならなかったからそこまで苦戦はしないと思うんだよね。あれと一緒だったら、かなり危ないことになっていたかもしれないし。
そう思ったところで、蜘蛛は威嚇を止め、こちらに向かって高速で移動し始めた。
大きい分、移動する際の脚の動きが見えやすくなっていてちょっと不快な感じの見た目だけど、直線的な動きなら対処は簡単……あ、そうでもなさそう。
何とかなりそう、そう思ったところで蜘蛛は不規則に飛び跳ねながら距離を詰めてきた。
うわぁ。超面倒な動きを始めたんだけど。ぴょんぴょん不規則に跳ねられると、いくら弾速が早いライトショットでも当てるのが難しい。ライトボールもさすがに避けられちゃうよね。
これどうしたらいいんだろう。とりあえず相手の情報は手に入れないと駄目かな。
[(ダンジョンボス)ビッグスパイダー LV:18 属性:毒]
HP:1450
MP:440
総合攻撃力:106
総合防御力:96
スキル:体当たり・跳躍・毒牙・不明
咄嗟に看破した結果、このような情報を獲得した。
ふーん、ダンジョンマスターじゃなくてダンジョンボスなんだ。
ダンジョンボスと出ている以上、この蜘蛛を倒せばクリアになるんだろうけど、あのホブゴブリンと違ってダンジョンボスになっているのはなんでだろう? ……いや、戦っている最中にあれこれ考えるのは危ないね。
「シュラちゃん! こいつは毒攻撃持ちだから気を付けて。なるべく攻撃は食らわないように!」
「なのです!」
総合攻撃力だけを見れば、1・2層のゲートキーパーだったフォレストモスよりも低いんけど、総合防御力は上だし毒属性攻撃を持っている以上、厄介な相手に変わりはない。
3
お気に入りに追加
464
あなたにおすすめの小説
引退した元生産職のトッププレイヤーが、また生産を始めるようです
こばやん2号
ファンタジー
とあるVRMMOで生産職最高峰の称号であるグランドマスター【神匠】を手に入れた七五三俊介(なごみしゅんすけ)は、やることはすべてやりつくしたと満足しそのまま引退する。
大学を卒業後、内定をもらっている会社から呼び出しがあり行ってみると「我が社で配信予定のVRMMOを、プレイヤー兼チェック係としてプレイしてくれないか?」と言われた。
生産職のトップまで上り詰めた男が、再び生産職でトップを目指す!
更新頻度は不定期です。
思いついた内容を書き殴っているだけの垂れ流しですのでその点をご理解ご了承いただければ幸いです。
※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。
UWWO ~無表情系引きこもり少女は暗躍する?~
にがりの少なかった豆腐
ファンタジー
フルダイブ型VRMMORPG Unite Whole World Online ユナイト・ホール・ワールドオンライン略称UWWO
ゲームのコンセプトは広大なエリアを有する世界を一つに集約せよ。要するに世界のマップをすべて開放せよ。
そしてようやく物語の始まりである12月20に正式サービスが開始されることになった。
サービスの開始を待ちに待っていた主人公、大森あゆな はサービスが開始される15:00を前にゲーム躯体であるヘルメットにゲームをインストールしていた。
何故かベッドの上に正座をして。
そしてサービスが始まると同時にUWWOの世界へダイブした。
レアRACE? 何それ?
え? ここどこ?
周りの敵が強すぎて、先に進めない。
チュートリアル受けられないのだけど!?
そして何だかんだあって、引きこもりつつストーリーの重要クエストをクリアしていくようになる。
それも、ソロプレイで。
タイトルの副題はそのうち回収します。さすがに序盤で引きこもりも暗躍も出来ないですからね。
また、この作品は話の進行速度がやや遅めです。間延びと言うよりも密度が濃い目を意識しています。そのため、一気に話が進むような展開はあまりありません。
現在、少しだけカクヨムの方が先行して更新されています。※忘れていなければ、カクヨムでの更新の翌日に更新されます。
主人公による一方的な虐殺が好き、と言う方には向いていません。
そう言った描写が無い訳ではありませんが、そう言った部分はこの作品のコンセプトから外れるため、説明のみになる可能性が高いです。
あくまで暗躍であり、暗殺ではありません。
いえ、暗殺が無い訳ではありませんけど、それがメインになることは確実に無いです。
※一部登場人物の名前を変更しました(話の内容に影響はありません)
VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~
志位斗 茂家波
ファンタジー
新入社員として社会の波にもまれていた「青葉 春」。
社会人としての苦労を味わいつつ、のんびりと過ごしたいと思い、VRMMOなるものに手を出し、ゆったりとした生活をゲームの中に「ハル」としてのプレイヤーになって求めてみることにした。
‥‥‥でも、その想いとは裏腹に、日常生活では出てこないであろう才能が開花しまくり、何かと注目されるようになってきてしまう…‥‥のんびりはどこへいった!?
――
作者が初めて挑むVRMMOもの。初めての分野ゆえに稚拙な部分もあるかもしれないし、投稿頻度は遅めだけど、読者の皆様はのんびりと待てるようにしたいと思います。
コメントや誤字報告に指摘、アドバイスなどもしっかりと受け付けますのでお楽しみください。
小説家になろう様でも掲載しています。
一話あたり1500~6000字を目途に頑張ります。
最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO
無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。
名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。
小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。
特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。
姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。
ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。
スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。
そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。
『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?
mio
ファンタジー
特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。
神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。
そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。
日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。
神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?
他サイトでも投稿しております。
チート級スキルを得たゲーマーのやりたいことだけするVRMMO!
しりうす。
ファンタジー
VRゲーム【Another world・Online】βテストをソロでクリアした主人公──────雲母八雲。
βテスト最後のボスを倒すと、謎のアイテム【スキルの素】を入手する。不思議に思いつつも、もうこのゲームの中に居る必要はないためアイテムの事を深く考えずにログアウトする。
そして、本サービス開始時刻と同時に【Another world・Online】にダイブし、そこで謎アイテム【スキルの素】が出てきてチート級スキルを10個作ることに。
そこで作ったチート級スキルを手に、【Another world・Online】の世界をやりたいことだけ謳歌する!
※ゆるーくやっていくので、戦闘シーンなどの描写には期待しないでください。
※処女作ですので、誤字脱字、設定の矛盾などがあると思います。あったら是非教えてください!
※感想は出来るだけ返信します。わからない点、意味不明な点があったら教えてください。(アンチコメはスルーします)
生産職から始まる初めてのVRMMO
結城楓
ファンタジー
最近流行りのVRMMO、興味がないわけではないが自分から手を出そうと思ってはいなかったふう。
そんな時、新しく発売された《アイディアル・オンライン》。
そしてその発売日、なぜかゲームに必要なハードとソフトを2つ抱えた高校の友達、彩華が家にいた。
そんなふうが彩華と半ば強制的にやることになったふうにとっては初めてのVRMMO。
最初のプレイヤー設定では『モンスターと戦うのが怖い』という理由から生産職などの能力を選択したところから物語は始まる。
最初はやらざるを得ない状況だったフウが、いつしか面白いと思うようになり自ら率先してゲームをするようになる。
そんなフウが贈るのんびりほのぼのと周りを巻き込み成長していく生産職から始まる初めてのVRMMOの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる