現実逃避のために逃げ込んだVRMMOの世界で、私はかわいいテイムモンスターたちに囲まれてゲームの世界を堪能する

にがりの少なかった豆腐

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次なる場所へ行こう

コール

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 基本的にFSOのダンジョンでは一度に入れるプレイヤーの数に制限はない。それに、パーティーを組んでいない複数のプレイヤーが同時に入ったところで、一緒に攻略しなければならないような構造にもなっていない。
 ソロで入ればソロで、パーティーで入ればパーティーでダンジョンをクリアすることになっている。

 なので、先にや後になんて順番は存在しない。
 ついでにすでにこのダンジョンは攻略済みなので、ダンジョンクリアの競争なんてものも存在しないし、そもそもFSOのダンジョンは最初にクリアしたとしても特別な報酬があるわけでもない。

「聞いてんのかぁ?」

 まあ、このプレイヤーたちの目的はありもしないルールで脅迫して、ここに来たプレイヤーからアイテムやらFsを脅し取ることなんだろうね。

 こういう他者に迷惑をかけて楽しんでいるようなプレイヤーに関わる必要は無いし、話す必要も存在しない。可能であれば無視してさっさとダンジョンの中に入ってしまうのが正解なんだよね。ああ、でも微妙にダンジョンの入り口を塞ごうとしているし、強引に入るのもちょっと難しいから通報した方がいいよね。

「おい! 無視すんじゃねぇよ!」
「俺らが先に来てたんだぞ! 順番ぐらい守れよ!」
「はぁ…」

 ため息が漏れる。本当にこういう人たちは何処にでもいるんだよね。面倒な相手がいたものだよ。

「てめぇ! その態度は何だ!」

 私がため息を吐いたのが気に食わなかったのか、絡んで来ていたプレイヤーの1人が掴みかかって来る。そして、私の肩に触れる直前にセクシャルガードに阻まれ思い切り弾かれた。

「いってぇ!? てめぇ!」

 いや、それは私のせいではないし、完全に自業自得なんだけど。ああでも、こういう人たちにとってそういうのは関係ないか。何につけても相手のせいっていうのが基本だし。

 だけど、直接とを出された以上は通報じゃはなくGMコールした方がいいよねこれ。さすがに直接掴みかかられたなら直接攻撃されたのと同じだからね。

『どうなさいましたか?』
「第2エリアにある新緑のダンジョン入口で複数のプレイヤーに絡まれているので対処をお願いします。それと1度ですがセクシャルガードが発動しています」
『少々お待ちください。確認します。……他のプレイヤーからも複数の通報が入っていましたので、こちらで対処いたします』

 ふむ? 他のプレイヤーから通報があったという事は、このプレイヤーたちはもっと前からここで陣取っていたってことかな? 

「てめぇ! 今何し―」

 私がGMコールしたことに気付いたプレイヤーたちが再度掴みかかろうとしてきたけど、その前に動きが止まり、そして直ぐに姿が消えた。おそらくGMの判断で別空間に飛ばされたのだろうね。

 前回とは違って強制転移だったのが気になるけど、それなりに通報されていたのかな。それとも単純にGNさんたちが忙しいのか。
 まあ、気にしても意味はないから、さっさとダンジョンの中に入ろう。シュラも何かつまらなそうにしているしね。


 ダンジョンの中に入ると、そこには森が広がっていた。

 聞いていた通りではあるけど、ゴブリンが居たダンジョンに比べて1フロア当たりの面積が広い。一応このフロアにも壁はあるらしいけど、それでも1キロメートル四方くらいの面積はあると聞いている。
 まあ、1フロアが広い分、第2エリアにある他のダンジョンに比べて階層が1つ浅く、第1エリアのゴブリンダンジョンと同じ3層目がボスフロアだそう。

 フロアが広いから次の階層に移動できる場所を探し出すのは時間が掛かる。しかも、その場所はダンジョンに入るたびに変わるらしく、事前に調べていても意味は無いとのこと。

 なので私たちもこれからしらみつぶしにこのフロアの中を探すことになる。ちょっと面倒だけど、探検みたいで楽しそうではあるよね。

 という訳で、この森ダンジョンの探索を始めよう。

 
 鬱蒼と木々や植物が茂る森の中を進む。

 周りを見渡す限り、木、木、蜘蛛、ウルフ、蜘蛛、木、芋虫っぽいモンスター、蜘蛛、苔玉、そして木。

 完全に森の中だねぇ。外の森に比べて虫が多いけど、今のところ見ている分には襲いかかってこないからまだいい。

「です!」

 あまり襲いかかってこない虫系のモンスターとは違い、襲いかかって来ていたフォレストウルフをシュラが叩き潰した。

 うーん。レベル差があるから1撃だ。一応フォレストウルフのレベル10で、ダンジョンの外に居たモンスターよりも強くはあるのだけども。さすがに2階進化していてレベルが20を超えているシュラからしたら、格下もいいところだよね。

 目についたモンスターを倒しながら次の階層に繋がる場所を探していく。道なき道を進んでいるため、順調とは言えない速度でフロアのマップが埋まっていく。

 このままの速度で探索しているとかなり時間が掛かるよね。パーティーで探索していればそれほど時間が掛からないんだろうけど、私は1人だしシュラはテイムモンスターだから個別で行動してもマップは埋まらないんだよね。

 ふむ。もういっその事、マップを全て埋めるつもりで端から端までいいかも。時間はかかるだろうけど、ぷらてあ用の素材も集める必要があるし、このフロアに居るモンスターを全滅させるくらい倒さないと育成スキルでレベル上げをするには足りない気がするんだよ。

 うん。時間は掛かちゃうけどマップ全埋めのつもりで探索していこう。



 ダンジョンに入ってから1時間。

 いまだに一層目から先に進めていないけど、埋まったマップは8割強。倒したモンスターの数は100を超えた辺りからは数えていないけど、手に入れた素材の数からして300は超えていそう。

 そしてここにきてようやく次の階層に繋がっていそうな場所を見つけた。そこは、他の場所とは異なり木が存在しない空間になっており、そこには明らかにゲートキーパーと言わんばかりの大きな蛾のようなモンスターが陣取っていた。

 見つけたからにはさっさと戦って次の階層に進むべきなんだろうけど、後少しでマップが全て埋まるので、先にマップを埋めきってからゲートキーパーと戦うことにする。


 ゲートキーパーを見つけてから20分程でマップを全て埋めきることが出来た。
 マップが埋まったので直ぐにゲートキーパーに戦いを挑むべきだと思うんだけど、その前にマップを全て埋めた際に宝箱らしき物を見つけたので、今はそれの確認中である。

 まさか、宝箱があるとは思わなかったな。ダンジョンの中と考えれば別におかしなことではないんだけど、このダンジョンの情報をイケシルバーから教えて貰った時に宝箱があるという情報はなかったんだよね。
 これはもしかしたらトラップの可能性もあるかもしれない。これは慎重に扱わなければ―

「です!」
「え、ちょ!?」

 トラップの可能性もあるので慎重に宝箱を調べようとしたところで、シュラが思い切り宝箱の蓋を開けてしまった。腕もないのに蓋を開けるなんて器用なことをするなぁと、一瞬思ったけど危ないことには違いない。

「シュラちゃん。確認する前にいきなり開けるのは止めて。トラップだったらどうするの」
「なのです?」

 たぶんシュラはゴブリンダンジョンのゲートキーパーを倒した時に出て来る宝箱と同じような感覚で開けたんだと思う。今回はトラップではなかったからよかったけど、今後のために宝箱を開ける前に確認するように教えておかないと、場合によっては取り返しのつかないことになってしまう。
 この場で色々教えるのは危ないし、とりあえず今はシュラが開けた宝箱の中身を確認することにしよう。

「んー、入っているのは素材だね。まだ手に入れていないものだけど、シルバースパイダーシルクって名前からして、蜘蛛系のモンスターの素材だよね。なんか名前がかっこいいからレア素材とかかな」

 他にもいくつか素材が入っていたけど、それは既に持っている物だったから割愛。
 ただ、マップを埋めながら来ていたのに最後の最後までこれを見つけることが出来なかったのはどれだけ運がなかったんだろう。……いや、フロアのマップを全て埋めたところで見つけたってことは、マップ全開放のボーナス的な物の可能性もあるかも。

 まあ、これに関してはイケシルバーあたりに情報を渡して検証してもらえばいいか。

 さて、宝箱の中身も確認が終わったし、ゲートキーパーに戦いを挑みに行こう。

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