現実逃避のために逃げ込んだVRMMOの世界で、私はかわいいテイムモンスターたちに囲まれてゲームの世界を堪能する

にがりの少なかった豆腐

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次なる場所へ行こう

携帯食

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 さてと、ここのギルドも使えるようになったし、今受けられる依頼も全部受けて来た。後は、近くのフィールドに出て、依頼を熟しつつ素材を集めてシュラのレベルを上げていくことにしよう。

 そういえば、テイムスキルのレベルが10を超えたから2匹目もテイムできるようになったんだよね。なら、それもついでに探すことにしようかな。



 街の近くのフィールドでモンスターを倒していく。周囲には別のプレイヤーは居るけれど、そこまでの密度ではないので順調にモンスターを狩ることが出来ている。
 この辺りに出て来るモンスターは、犬や狐のようなモンスターと、レベルが大幅に上がったスライムが大半。たまにトカゲやもぐらのようなモンスターが出て来るけど、それは本当にたまにで割合で言うと100匹に1匹居るかどうかの数しか出て来ない。

 うん。この辺りのモンスターのレベル帯は10前後と言ったところかな。第1エリアやダンジョンと比べても大分高くなっている。とは言え、だからと言って苦戦することは無いんだけど。

 1時間もフィールドで戦っていれば、依頼の方も、採取系以外は全て完了していて後は報告をすれば依頼は達成される状態になっていた。残っている採取系の依頼で必要なアイテムを取りに向かう途中も、育成スキルで使用する素材を獲得するためにモンスターを狩りながら進んで行く。

「シュラ! そっちに行ったよ」
「です!」

 フィールドに居た犬型のモンスターが1体、シュラのいる方へ駆けていく。どうやらこの犬型モンスターは数匹の群れでエンカウントしやすいようで、討伐系の依頼を熟している最中も何度も群れと遭遇し戦闘になっている。

 今は私が3体引き付けているので、その横を通り抜けてシュラの方へ攻撃を仕掛けていった犬を止めることは出来ない。しかし、こうなったのは初めてではないので、慌てることなくシュラに指示を出して自力で対処させる。

「なのです!」

 掛け声と同時にシュラが攻撃する。体当たりをするわけではなく、体の一部を鞭状に伸ばしそれを使って攻撃している。
 見た目の攻撃力はそこまで高くはないのだけど、どうやら魔法攻撃判定らしく、2発も当てれば犬はポリゴンになって消えていった。

「っです!」

 うん、ドヤ顔だね。可愛い…可愛いんだけど、どんどん話せる言葉が増えているような気がするんだよね。最初なんて『の!』だけだったのに、いつの間にか『なのです』まで言えるようになっているし。

 ……最終的にはプレイヤーと同じように話せるようになったりしちゃう? 

 そうなったら殆どNPCと同じ……ううん、それ以上に近い存在になるね。でもさ、そんな子が死んだら消える、って考えると戦わせ辛いんだけど! いやもう本当に戦わせられなくなりそうだよ。
 いや、テイマーになっておいて今更何を言っているの? という感じはあるんだろうけどさ、実際にその可能性が目の前に出て来ると、実感がわいてくるものなんだよ。

 まあ、私がそうならないように立ち回ればいいんだろうけど、別にこういうゲームが特別得意っていうわけじゃないんだよね。へたくそだとは思わないけど、完全に守りながら戦闘するのは自信はないよ。

「です?」
「ん? ああ、ごめんね。戦いも終わったから次の場所に移動しよ」

 まあ、そのなるかどうかはまだわからないし、今考えたところでどうすることもできないからね。ちょっとフラグな気はするけど。

 それで結構な時間、同じ場所でモンスターを倒す続けていたせいなのか、周囲にリポップしてくるモンスターの数が減って来ているようなので別の場所に移動することにして、今の場所から少し離れた場所にある森の前に到着した。

 町を出てから結構な時間が経っているのでちょっとステータスを確認。……満腹度は73%、まあまあ減っているくらいかな。

 これは余裕があるうちに満腹度を回復させておいた方が良いよね。今は問題ないけど、この先満腹度を回復できるような余裕がない可能性もあるし、ギリギリの状況で戦うのも集中できないだろうから、出来る時にしておいた方がいいはず。

 フィールドに出る前に買い込んでいた満腹度が10%回復する携帯パンというアイテム名を持った、コッペパンのようなパンをインベントリから取り出して食べる。

 うーん、まあ、携帯食扱いのパンならこんな物かなぁ。

 まずくはないんだけど、特別美味くはないパンを齧りながらそう思う。
 イケシルバーに連れていってもらったところで食べた料理は結構おいしかったからもしかしたらって思ったんだけど、普通のコッペパンだね。最近食べていないから本当にこれがコッペパンだと明確に判断はできないけど、たぶん普通のコッペパンだ。

 これで満腹度は83%になった。もう一個くらい食べておいた方がいいかな。ん? シュラが私を見て……違う、携帯パンを見ているの?

「シュラも食べたいの?」
「…です」

 シュラは若干恥ずかしそうに視線を逸らしたけど、これは食べたいんだよね? 気になっていただけならこんな反応はしないはずだし。
 でも、テイムモンスターって食べ物、食べさせていいの? 料理には一切反応しなかったんだけど、それは他のプレイヤーが居たからかな? それとも単に今私が食べているのを見て食べたくなっただけ?

 うーん。とりあえず、あげてみればいいかな。ダメだったら駄目でいいし。じゃあ、携帯パンを半分に千切って……ん? あれ、携帯パン1/2ってアイテム名になって……インベントリに入れられなくなった? これって使いかけとか食べ残しはインベントリには入れられない感じ? 半分だけ使って後で残りをっていう感じには使えないってこと……だよね? まあ、分ける分には大丈夫そうだから、問題ないよね。

 シュラに半分に千切ったパンを渡して……、持つことはできないから直接口の中に入れてみる。

「ふぇす!」

 パンを口に含みながらだったから変な声になっていたけど、そう声を上げてシュラは嬉しそうにパンを飲み込んだ。

 軽く咀嚼した感じのモーションがあったから、問題なく食べられたってことでいいんだよね? 結構丸のみに近い感じだったけど。

「なのです!」
「ああ、そうか」

 嬉しそうにしているから多分美味しかったということかな。舌があるかどうかもわからないスライムに味がわかるのか、とも一瞬考えたけど、むしろスライムなのだから人よりも味覚が敏感なのかもしれない。

 でも、本当に何でいきなりパンを欲しがったんだろう。あ、もしかして、テイムモンスにも満腹度が実装されているとかじゃないよね? レベルの確認とかで見ている時にはなかった気がするけど、もう一度確認してみよう。


『NAME:シュラ 種族:クリスタラスライム LV:26 属性:水
 HP:315 / 315 MP:165 / 165
 STR:199(92) INT:156 総合攻撃力:167
 VIT:148(8) MND:175 総合防御力:157
 AGI:185(45) DEX:101 
 スキル:ウォーター・体当たり・のしかかり・スライム魔法LV 4・回避・武器 』


 見る限り満腹度は実装されていないね。育成スキルでレベルが上がって、それで得た補正値でステータスが増えているだけで、特にそれらしき情報は載っていない。
 あ、いや待って。いつの間にかに武器とか言うスキルを覚えているんだけど。これはどういうスキルなんだろう。武器ということだから、そのままの意味で武器が装備できるとかなのかな。まあ、このスキルについては後で確認しよう。

 うーん、でも満腹度が無かったということは、やっぱり私が食べているところを見て食べてみたくなっただけっぽい? 他に理由もわからないし、たぶんそうなんだろうね。

 様子を見た感じ、食べたところで何か影響があるわけじゃなさそうだし、次も欲しがったら上げる感じで良いかな。携帯パンは安かったから大量に買い込んであるし、シュラに1個2個あげたところで無くなることもないんだよね。

 それじゃあ、満腹度も回復させたし、さっそく森の中に入ることにしよう。

 
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