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次なる場所へ行こう

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 イケシルバーが興味深そうにシュラのことを見つめていた後、私たちはイケシルバーに連れられてある場所に来ていた。
 本当なら、あの場所でシュラのことをサラッと話してギルドに向かうつもりだったのだけど、私にとある問題が発生して急遽、この場所に来ることになったのだ。

「いや、本当に申し訳ないです」
「いえ、同じような状態になる方は結構いますし、人によっては倒れる方も居ますから別に問題はないですよ」
「そうじゃよ。そもそも運営のアナウンスの仕方が悪いだけじゃしの。第2エリアに入った瞬間、アナウンス無くいきなり満腹度が有効化された事に気付けるのはそう居ないじゃろうし」

 そう、私は気付かぬうちに有効化されていた満腹度が10%を下回ったことにより、いきなりイケシルバーの前で倒れたのだ。突然力が抜けたから結構焦ったよね。まさか街中で倒れるなんて思っていなかったし。

 満腹度が実装されるのはしっていたんだけど、いろいろやっているうちに忘れてしまっていたんだよね。まあ、満腹度が0になった訳ではないし、空腹によるデバフを受けて一瞬力が抜けただけで動けなくなった訳ではないから、すぐに立ち上がれたんだよね。もし、0になっていたらHPが急速に減っていって、死んでいたかもしれないんだけどさ。あぶないあぶない。

 それで、満腹度を回復させないといけなかったんだけど、その回復させるためのアイテム、食べ物がどこに売っているのかがわからなかったからイケシルバーに教えてもらってここに来たって感じ。

「それでその子のことを聞きたいのじゃが、いいかの?」

 注文して運ばれて来た料理を食べ終わったところでイケシルバーが話しかけて来たんだけど、その前に聞きたいことがある。

「答えるのは別にいいんですけど、その前にそちらのプレイヤーの紹介をしてくれませんか? さすがに知らないプレイヤーの前で詳しい話をするのはちょっと」

 イケシルバーの隣には私が空腹で倒れる前から居たいろいろ大きいプレイヤーが居る。未だに2,3言しか発言していないから人となりがよくわからないんだよね。
 まあ、イケシルバーと一緒に居たという事は仲間なのだろうけども。さらっと話すぶんには気にしないんだけど、詳しく話すとなると全く知らない人がいる場所で話すのはちょっと嫌なんだよね。

「ああ、ごめんなさいね。私はエティテプって言うの。種族は見ればわかると思うけどジャイアントよ。それと気づいていると思うけど、イケシルバーのパーティーメンバーで現在設立手続き中のクランメンバーでもあるわ」

 イケシルバーの隣に座っている大柄な女性アバターのプレイヤーが恭しく自己紹介をして来た。
 やっぱり種族はジャイアントなんだ。普通にアバターを制作してもできないくらいのサイズだからそうかもとは思っていたのだけど、ジャイアントでいろいろ最大値にすればこんな感じなのかなぁ。いや、さすがにそんなことをしたらバランスが悪くなるから、バランスが取れる最大値ってところかも。

「ついでに、中身は男じゃな」
「ちょっと、イケシルバー。それは言わないでよー」
「え? ああ、え? そ…そう。えーと、そっちは知っているかもしれないけど、私はミヨって言います。種族はドラゴンレイス」

 話し方とかしぐさがかなり女性っぽいから、中はちょっとコンプレックスを拗らせた女性だとおもっていたんだけど、男性なんだ。ああ、でも。アバターの起伏を見ると確かにそんな感じもする……かも。うん。言われたらそうとしか見えなくなるね。

「手続き中ってことは、クランを作る条件は満たせたんです?」

 アバター云々に関しては下手につつくわけにもいかないので別の話題を振る。

「そうじゃよ。資金とギルドランクじゃな。特にギルドランクが難題じゃったの」
「あー、資金は課金すればどうにかなるにしても、ギルドランクは依頼を熟さないとどうにもなりませんからねえ。私なんて未だにGのままですし」

 まあ、私のギルドランクがGのままなのはダンジョン周回し続けて、依頼をほとんど受けていなかったからだけどね。

「まあ、その辺りは人それぞれだからね」
「ふほほ。そうじゃのぅ。それで、その子のことなんじゃが」
「そうですね。あ、とりあえずシュラのステのスクショを渡しますね」
「おお、助かるのぅ」

 フレンドチャット経由でイケシルバーに今のシュラのステータスが記載されているSSを渡す。それをイケシルバーは確認し、その隣に居たエティテプも横から覗き込んでいる。

「え? 凄く強いのだけど」

 シュラのステータスを確認したエティテプが驚いたようにそう言葉を漏らし、俺の隣に座っていたシュラを見る。

「…? です!」

 そして何故か見られていることに気付いたシュラが自慢げに胸を張ったように見えた。大福みたいなシルエットだから、どこが胸なのかはわからないけどね。そもそも胸に当たる部分があるかどうかもわからないし。
 
「クリスタラスライムですか」
「聞いたことのない種族名だの。レアスライムから進化できる種族にそのようなものは無かったと記憶しているのじゃが」
「その辺を聞かれてもわからないけど、シュラはレアスライム、ハイレアスライム、クリスタラスライムの順で進化したね」

 聞いたことが無いと言われても私にはその辺はよく知らないし、検証する気もないから知りたかったらイケシルバー達で再現してほしいな。私はあくまでこうしたらこうなった、という情報を教える以上のことはするつもりはないからね。

「え、既に2回進化している?」
「なるほどのぅ。直接ではなくハイレアスライムを経由しているんじゃな」

 エティテプがシュラが既に2回進化していることに驚いているけど、別段おかしい事ではないと思うんだけどなぁ。【育成】スキルもあるし、1体育てるだけならこれくらいは難しくないと思う。

「テイムモンスターって、プレイヤーと違ってレベルが上がりやすいし、そこまでおかしくはないよね? 私以外のテイマーも同じかそれ以上の速度でレベルを上げているようだし」
「だの。テイムモンスターは入れ替わりのサイクルが早い分、レベルを上げる方法も多い上、上がりやすくなっているようだからのぅ」
「へー、そうなんだ」

 知らなかったのか。情報収集系のクランに所属する予定なのに知らないのはおかしくない? いや、でも、全員が全員、集まった情報をすべて知っている方がおかしいか。普通に考えたら無理だね。

「あ、そうだ。シュラがハイレアから進化する時、もう一つ進化先があったんですよ。確か、エピラスライムだったと思うんですけど。ああでも特殊進化ではないようだったから知っていますか」
「ぬぅ?」

 イケシルバーが首を傾げているんだけど、どういうこと? もしかして、エピラスライムの方も知らないとか?

「こっちの情報も無い感じです?」
「無いのぅ。そもそもβの時にテイマーが不評過ぎて、正式サービス後にテイマーを選ぶプレイヤーが少なくての。検証があまり進んでおらんのだ。それにβテストの時の検証でハイレアスライムは進化しない、という結論が出ておった」
「なるほどなぁ。ということは、どちらも何らかの条件を満たさないと進化しない系だった?」
「そうなるの」

 ああ、道理で最初にシュラを見せた時、微妙な表情をしたわけね。あの時は既に知っている情報だからだと思っていたんだけど、1回しか進化しないモンスターだったから憐みの目で見られたと。

「メンバーでテイマーをしているプレイヤーに確認を取ってみましたが、やはり知らないようです」
「ふむ。ミヨさんは進化先が増えた要因に思い当たる物がありますかな?」
「ううーん」

 進化先を増やす要因として考えられるのは、戦闘、ステータス、スキルと後は……あっと、あれが一番可能性があるかも?

「あるとすれば育成スキル関係かなぁ? 素材ごとに育成傾向があるし、その影響を受けた可能性は否定できないと思う」

 シュラのレベル上げに使った素材の大半はスライムジェルとゴブリンの角。スライムジェルを一定個数以上育成スキルで使うと、エピラスライムに進化できるようになるとか、ゴブリンの角を一定個数以上使うとクリスタラスライムに進化できるようになるとか、普通に在り得そうだよね。

「なるほどの、確かにその可能性はありそうじゃ」
「シュラのレベルを上げるために育成スキルで使った素材は、スライムジェルとゴブリンの角だね。他にも使ったけど、たくさん使ったのはこの2つ。検証する予定なら参考までに」
「そうさせてもらうのぅ」

 私が話している間にもエティテプは他のメンバーと情報交換をしているのか、フレンドチャットのウィンドウを弄っている。

「情報提供、ありがとうございます。それで、情報の対価についてですが、どうしますか? Fsで支払うこともできますが、その場合、情報を精査してから支払いという流れになるので時間は掛かりますが」

 ああ、なるほど。私が提供した情報に対する対価をどうするか話し合っていた感じかな。

「対価……うーん、それじゃあ……」

 そうして、イケシルバーたちとの話が終わり、その後にギルドによってエリアボスの討伐報告を済ませた。


 
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