現実逃避のために逃げ込んだVRMMOの世界で、私はかわいいテイムモンスターたちに囲まれてゲームの世界を堪能する

にがりの少なかった豆腐

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 シュラがクリスタラスライムに進化してから数日が経った。
 あれから何度もダンジョンを踏破し、素材集めとレベル上げのためにゴブリンを蹂躙し続けたのだけど、幸いシュラが死ぬようなことは無く順調にレベルは上がってきている。しかし、最初のレベルが上がり辛かったことからも分かる通り、シュラのレベルは劇的には上がっていない。

 それで今のシュラのステータスは以下の通り。


『NAME:シュラ 種族:クリスタラスライム LV:21 属性:水
 HP:280 / 280 MP:145 / 145
 STR:164(72) INT:136 総合攻撃力:150
 VIT:120 MND:150 総合防御力:135
 AGI:123(37) DEX:86 
 スキル:ウォーター・体当たり・のしかかり・スライム魔法LV 3・回避 』


 掛けた時間の割にそれほどレベルは上がっていないけど、ステータスを見るとかなり強くなっているのがわかる。
 部分的には私のステータスを抜いているし、ゴブリンが出て来るダンジョンではホブゴブリンにも善戦出来ていた。それどころか私が補助魔法を掛ける必要があるけど、どうにか勝てるようにもなっている。

「なのです!」

 後なんか、レベルが上がったからなのか別の理由があるのかはわからないけど、最初の鳴き声と言は異なり多少話せる感じになっている。
 既に鳴き声とは言えない気がするので声とするけど、声の質からしてシュラはどうやらメスだったらしく、割と高めの声色。

 あ、スライム魔法については、文字通りスライム独自の魔法みたい。使ってみてもらった感じ、体の一部を武器化したり、体の一部を相手に投げつけたりして攻撃するのが基本だった。
 当然、スライム魔法を使えばMPは消費されるし、体の一部を飛ばせば自損ダメージが発生する。死んだら終わりのテイムモンスが使うには割とリスクが高いスキルだと思う。

 ついでに、スライム魔法はシュラのレベルが上がってもスキルレベルが上がる訳ではなく、どうやら育成スキルでスライム系統の素材を経験値に変換し、シュラにその経験値を与えることでスキルの経験値が溜まりレベルが上がるようになっているようだ。

 それに気づいてからは街の近くに出るスライムをたくさん倒してスライムジェルをめいいっぱい集めた。場合によっては取引掲示板に流れていたスライムジェルも買い占めもしたけど、結局500以上のスライムジェルをシュラに使ってやっとレベル3になったところである。
 おそらくスライムジェルだと得られる経験値が少なすぎてスキルのレベルがほとんど上がらないんだろうね。先は長そう。

 このエリアでとれる素材ではレベルも上がらなくなっているので、そろそろ次のエリアに移動する必要がありそうなんだよね。

 ここ数日で街の近くで狩りをしているプレイヤーは減ったし、そのお陰でスライムジェルは集めやすかったのはあるんだけど、私のレベルもあまり上がっていないから、街付近どころかもう第1エリアではレベルを上げるのが難しいのかも。

 ということで、第2エリアに向かうことにしたんだけど、掲示板情報だと第2エリアに入る前にボスが居るらしいんだよね。まあ、勝利報告が多くて結構楽勝っぽいんだよね。

「それじゃあ、行こうかシュラ」
「です!」

 街からでてシュラに声を掛けボスのいる場所に向かい始める。シュラは嬉しそうに私のことを見上げて……たぶんだっこを要求している。

 まあ、ステータスの素早さは確かにあるんだけど、移動速度はなぜか結構遅いんだよねシュラ。だから結構な頻度で抱っこというか抱えて移動しているのだけど、それが割りと気に入っているっぽい。
 うれしいんだけど、進化したからなのか結構ずっしり来るんだよね。

「のです!」
「…まあ、可愛いからいいか。しょっ」

 うーん、ひんやり。そして重い。うん、リアルスペックだったらよろけているかもしれない。

「です! デス!」
「あぁ、動かないで、落としそう」
「です」

 シュラって私の言葉も完全に理解している感じなんだよね。FSOのAI技術ってどうなっているんだろう? プレイヤーのテイムモンスターにこんなAIを載せるなんて割に合わないと思うんだけど、なんだかんだこういう技術を使うのが好きな人でもいるんだろうか。

「なのです?」
「ん? ああ、さっさと行こうね」
「です!」

 そうして私はシュラを抱えたまま街を出て、ボスが居る場所に向かった。当然だけど、シュラを抱えていたため、目的の場所に着くまでかなりの時間が掛かった。



 エリアボス自体は別のゲームでも同じように存在していて、エリアチェンジする前の場所に設置されていたる場合が多い。それはエリアボスが関所、または越えなければならないハードルとしての役割があるわけだ。
 それ故に、ゲームによっては隣接するエリアとの繋がりがエリアボスが居る場所だけなんてゲームも存在している。

 しかし、FSOの第1エリアと第2エリアは、別に1部分でしか繋がっていない訳ではないんだよね。
 だからFSOでは初めて第2エリアへ向かう場合、第1エリアと第2エリアの境界線を越えることで、強制的にエリアボスとの戦闘に移行するようになっているらしい。本来の戦闘エリア以外の場所から第2エリアへ行こうとしても必ずエリアボスと戦わなければならないようだ。

 まあ、要はこのハードルを越えられなかったらこの先のフィールドで苦戦どころか死ぬよ、っていう運営からのメッセージ的なやつでもある訳だね。現に、他のプレイヤーの力を借りて無理やり第2エリアに行ったプレイヤーが、町の近くのモブモンスターに蹂躙されて死に戻ったという情報もあるくらいだし。

 さて、そのハードルを易々と越えられるようなプレイヤーが、その場所に到達した場合エリアボスがどうなるかと言えば……

「ギャオォォ…」

 第2エリアの前に陣取っていたダチョウのような見た目だったエリアボス〈怪鳥インザ〉が力尽き、地面に倒れ伏した。

 当然のごとく、そんなハードルなんて無かったかのようにエリアボスを倒し、先に進んで行く訳だ。

「らくしょー」
「でーすー!」

 エリアボスだった怪鳥インザのレベルは15であり、私もシュラもそれよりレベルは上で、火力も十分あったため余裕をもって戦うことが出来た。
 しかも看破した限り、怪鳥インザのHPはダンジョンのボスだったホブゴブリンよりも低く、ギリギリだが4桁には到達していなかった。その代わり移動速度が速かったんだけど、攻撃が当てられない程ではなかったし、攻撃のタイミングで一々脚を止めていたからそこを狙い撃ちにした。

 まあそんなモンスターが、ダンジョンのボスであるホブゴブリンを難なく倒せるようになっている私たちに勝てる訳もなく、あっさり怪鳥インザとの戦いは終わった。

 私たちのレベルが高かったのもあるだろうけど、フルパーティー6人どころか2人で倒せたところからして、おそらく最初のエリアボスという事で大分弱く設定されていたのだろう。

「さ、次の町に行ってリスポーンポイントを更新しよう」
「です」

 何時までもボスエリアの近くに居ても出来ることは無い。そういう事でさっさと近くの町まで行かないとね。



 エリアボスと戦ったところから一番近い第2エリアの町に着き、そこの噴水でリスポーンポイントを更新した。そして、その次にギルドに移動して…

「おや? そこに居るのはミヨさんではないですかな」
「ん? ああ、イケシルバーさん」

 ギルドに向かおうとしたところで偶然イケシルバーに遭遇した。ただ、その隣には今まで見かけたことのないプレイヤーが居た。
 見た目は……何というか、うん、まあ、うん大きいねって感じ。

「ミヨさんもこちらに来ておられたのですな」
「まあ、ここに着いたのはついさっきですけど」
「ふほほ。そうでしたか。して、従魔の姿が見えませんが、どこに?」

 イケシルバーがシュラのことを探しているみたいだけど、現在シュラは私の腕の中にいるので池シルバーのいる位置からはちょっと見えにくい位置にいる。
 シュラの今の色が結構私の着ている装備に近い色だから案外気づかれないのかもしてないね。

「何か抱えているみたいだけど?」
「むぅ? おお?」

 イケシルバーは隣に居たプレイヤーの指摘によってようやくシュラが私の腕の中にいることに気づいたようだ。

「はて? 最初に見たミヨさんの従魔はレアスライムだったはずじゃが、その子は?」
「いえ、この子はシュラですよ。進化して見た目が少し変わっていますけど」
「ふむ?」

 抱えていたシュラをイケシルバーにも見えるように前に持っていくと、イケシルバーは興味深そうにシュラのことを見つめてきた。
 
 
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