上 下
8 / 45
現実逃避にゲームは最適

人込みはつらい

しおりを挟む
 

 転移陣に乗って平原へ移動した。周りを見渡す限り所々樹が生えている程度で他に見えるものはない。たぶんここはチュートリアル専用の特殊フィールドなんだろう。

『職業チュートリアルを開始します』

 ・
 ・
 ・

『スキル:テイムの使い方はここまでです。では、実際にスキル:テイムを使用してみましょう』

 10分程のテイムスキルのレクチャーが終わり、実践に移る。周囲を見る限り居るのはスライムとウサギ。どちらも同じくモンスター扱いで、初心者用テイムモンスターのようだ。

 テイムを確実にするには、対象のモンスターを弱らせないといけない。今のところ1撃で倒せるほどの火力は無いのでそれほど気にして攻撃しなくともいいっぽい。

 しかし、ウサギとスライムの2択かぁ。もうちょっと選択肢が欲しかったところだけど、どっちも見た目はかわいかったからいいか。

 とりあえず、テイムはしないでスライムを倒してみよう。チュートリアルだしおそらく経験値は入らないと思うけど、先ほどの説明の中にここでもスキルの経験値は得られる発言をしていたから、スキルのレベルは上がるはず。
 それに今はまだ街の周辺の戦闘エリアには多くのプレイヤーが居るだろうから、出来るだけここでやれることはやっておきたいんだよね。
 フィールドが街よりかなり広いと言っても今は相当混んでいるだろうから、そこは避けたい。

 さて、今持っている攻撃スキルは光魔術だけ。最初から使えるのはライトとライトボール。この内攻撃に使えるのはライトボールだけだからこれを使って攻撃をしていく。

「ライトボール」

 一番近くに居たスライムに向かって攻撃を放つ。放ったライトボールはスライムに当たると同時に弾け、スライムのHPバーを減らした。

 ダメージ量は今ので半分いかないくらいか。MPの消費は5だから、少なくともあと45発は放てる計算。これだとスライムに与えたダメージ量を加味しても15匹しか倒せないね。経験値は得られないから別にいいのだけど、スキルのレベルはあまり上げられないかも。

 と言うか、あれだね。完全に忘れていたけどテンプレ系の鑑定系スキルを取っていないから、敵の情報が一切わからない。

 ここでスキルの取得は……出来るっぽいね。っと、その前に既に攻撃したスライムを倒しておこう。こうして考えている間にも実はスライムから攻撃を受けていたんだけどさ。まあ、一発当たりのダメージが1とか2だったから放置していたんだけど、ずっとはさすがに無理だし。まあダメージを食らえばその分、回復魔術のスキルレベルも上げられるだろうからいいんだけども。

 さらにライトボールを2発放ってスライムを倒す。経験値は入っていないようだ。スキルのLVも上がった様子はないけど、アバターのLVとは違い経験値が入っても分からないから、もう少し回数を重ねてからもう一度確認しよう。

 さてさて、スライムも倒したし追加でスキルを取ることにしよう。

 ステータスボードからスキル選択を選び、取得可能スキル一覧を見る。
 しかし、取得するスキルは鑑定系なんだけど、細分化されていたら面倒そうだよね。ゲームによっては魔物系、アイテム系、装備系みたいな形で分けられていたりするから、枠が足りなくなる可能性があるんだよ。これはランダムで3つもスキルを選んだのは失敗だった?

 鑑定系のスキルは…2種類。鑑定と看破だね。何がどう違うのかはスキルの説明を見ればわかるけど、なるほど鑑定も看破もどちらを取得しても鑑定できる範囲は変わらない代わりに、鑑定がアイテム系に強くて、看破がモンスターと罠に強い感じなんだね。

 となると、私が取得した方が良いのは看破の方かな。テイムするモンスターの状態などが詳しくわかる方が良いだろうし。と言うか、鑑定は生産職向けだろうね。それで看破が戦闘職向けって感じ。

 そんなことで看破スキルを取得する。これで当分はスキルの取得は出来ない。いや、スキルを削除すれば可能だけど、それがどこで出来るかわからない。少なくともステータスボード上では出来ない。

 じゃあ、スキルも取得したことだし、またスキルの経験値稼ぎに戻ろう。
 
 受付で貰ったMP初級ポーションを4つ使い10分程スライムとウサギを倒し続けた。
 MP初級ポーションの回復量は50だった。だから4つでライトボール40発分になるのだけど、実はMPは自然回復があるようでその分も多少回復している。まあ、自然回復量だから微々たる量で10秒に2~3くらいの回復量だ。おそらくMP総量に対しての1%といったところだろう。

 スキルLVも予想通り上がった。光魔術がLV3に回復魔術がLV2に、そして看破がLV5になった。看破に関してはスキルを使ってもMPの消費は無かったからその分良く上がった感じ。

 それで、スライムやウサギを倒していて気付いたことがあるんだよね。それは同じスライムでもステータスが微妙に違うこと。レトロゲーに存在した個体差と言う奴だと思うけど、これはテイマーとして見過ごせない情報だよ。

 現在テイムできるモンスターの枠は1つだけ。いつ2枠目が解放されるのかがわからない以上、慎重にテイムするモンスターを決めなければならない。

 このチュートリアルをクリアする条件がモンスターをテイムする事だから、テイムしたモンスターを逃がすことは可能なはず。1枠目のテイムモンスターが強制2択でしかも変えることも出来ないとかだったら、いくら不人気職だとしても苦情は確実だよね。
 直ぐに2枠目が解放されるなら話は別だけどさ。

 近くに居るスライムを看破していく。
 今回ウサギはテイムするのはパス。理由は戦った感じ、若干だけどスライムの方が強いと感じたというのもある。ただそれ以上に、単純にウサギに将来性を感じなかったと言うのもあるんだよね。何というかモンスターというよりも普通の動物なんだよねウサギ。

 それにテストプレイ時にテイマーを選んでいた人の話ではスライムは進化したけどウサギは進化しなかったらしい。まあ、これについては何処まで信用していいのかがわからないので、かもしれないくらいの感じで受け取っているけど。

 スライムを次々に看破していく。看破で表示されるのはこんな感じ。


[(モンスター)スライム LV:1 属性:なし]
 HP:20
 MP:5
 総合攻撃力:3
 総合防御力:4
 スキル:なし


 おそらく鑑定だと攻撃力と防御力の部分が見えないのではないかと思う。

 一応この看破で出ているスライムのステータスが平均的な個体のもので、スライムの個体差はHPとMPがプラマイ2の範囲。稀に攻撃力が2だったり防御力が3だったりする弱めの個体がいるくらいだ。だからテイムするならこの攻撃力・防御力で、HPが22でMPが7の個体が望ましい。

 その個体を探しながら看破を続ける。既にチュートリアルが始まって30分以上が経っているが未だに目当ての個体は見つからない。
 ついでに、看破のLV上げのためにウサギも看破をしている。ウサギのステータスはほぼ同じ。中には普通の個体より低いステータスのやつもいるけど、スライムとは違い平均的な個体より強い個体は存在していないっぽいんだよね。やはりスライムの方が将来性はありそう。

 しかし、目当ての個体が居ないなぁ。HPが21だったりMPが6だったりする個体なら居るのだけど、それで妥協する? さすがにチュートリアルにこれ以上時間をかけるのは良くないし。

 ん? あれ…何か違う個体出て来た!? 何この子!?

 そろそろ妥協しようかな、と考えていたところで看破したスライムが他の子とは違う個体だった。いや、それどころか名前が違った。


[(モンスター)レアスライム LV:1 属性:水]
 HP:32
 MP:16
 総合攻撃力:8
 総合防御力:8
 スキル:ウォーター 体当たり


 見た目は同じなんだけど、名前が違う……レアスライム? お、しかも属性付だ! ステータスも高いしテイムするのはこの子で決まり……いや、スライムにこんな個体がいるという事はウサギにも似たような個体がいるのでは? もしそれがこのスライムよりも強いとなれば、そっちをテイムした方が良いような気も…。

 そう思いウサギの特殊個体を探し回る。
 さすがに見つかるまで探し回るつもりはない。10分くらい探し回って見つからなかったら諦めて、さっきのレアスライムをテイムする予定だ。
 先ほど見つけたレアスライムについては、そのまま放置しているとどこかに行ってしまう可能性があるので、逃げないように抱えている。

 持ってみた感じ、結構やわらかくてひんやりしていて触り心地がいい。ちょっと癖になりそう。

 このフィールドに居る敵はこちらが攻撃してこない限り攻撃はしてこないようで、こうやって抱えているだけなら攻撃される心配はない。なので攻のんびりレアスライムを抱えながらウサギのレア個体を探して回る。

 先ほどから看破を多用している所為で看破のLVが13まで上がっている。
 看破のLVが上がることで何が変わるのかはよくわからないのだけど、自分よりもLVの高い相手に対しても看破できるようになるとかそのあたりかな?


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ーOnly Life Onlineーで生産職中心に遊んでたらトッププレイヤーの仲間入り

星月 ライド
ファンタジー
親友の勧めで遊び、マイペースに進めていたら何故かトッププレイヤーになっていた!? ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 注意事項 ※主人公リアルチート 暴力・流血表現 VRMMO 一応ファンタジー もふもふにご注意ください。

VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件

こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。 だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。 好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。 これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。 ※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

引退した元生産職のトッププレイヤーが、また生産を始めるようです

こばやん2号
ファンタジー
とあるVRMMOで生産職最高峰の称号であるグランドマスター【神匠】を手に入れた七五三俊介(なごみしゅんすけ)は、やることはすべてやりつくしたと満足しそのまま引退する。 大学を卒業後、内定をもらっている会社から呼び出しがあり行ってみると「我が社で配信予定のVRMMOを、プレイヤー兼チェック係としてプレイしてくれないか?」と言われた。 生産職のトップまで上り詰めた男が、再び生産職でトップを目指す! 更新頻度は不定期です。 思いついた内容を書き殴っているだけの垂れ流しですのでその点をご理解ご了承いただければ幸いです。 ※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。

『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio
ファンタジー
 特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。  神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。 そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。 日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。    神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?  他サイトでも投稿しております。

【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

生産職から始まる初めてのVRMMO

結城楓
ファンタジー
最近流行りのVRMMO、興味がないわけではないが自分から手を出そうと思ってはいなかったふう。 そんな時、新しく発売された《アイディアル・オンライン》。 そしてその発売日、なぜかゲームに必要なハードとソフトを2つ抱えた高校の友達、彩華が家にいた。 そんなふうが彩華と半ば強制的にやることになったふうにとっては初めてのVRMMO。 最初のプレイヤー設定では『モンスターと戦うのが怖い』という理由から生産職などの能力を選択したところから物語は始まる。 最初はやらざるを得ない状況だったフウが、いつしか面白いと思うようになり自ら率先してゲームをするようになる。 そんなフウが贈るのんびりほのぼのと周りを巻き込み成長していく生産職から始まる初めてのVRMMOの物語。

処理中です...