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本編 転生したら婚約破棄され負け確定!? 死にたくないので王国を乗っ取らせていただきます!
3・アルファリム皇国にてー1: 皇からの呼び出しと話し合い
しおりを挟む皇都に入ってから、会話らしい会話は無かった。何かさっき受け止めて貰ってから皇子の態度がおかしい。その前までは何をするでもなく私の方を見ていることが多かったのに、今はたまにこっちを見ては直ぐに視線を外に向けてしまっている。本当に何をやってしまったのだろうか。いや、思い返してみても失礼になるようなことはしていないし、言ってもいないはずだから、正直見当がつかない。
まあ、嫌われた感じではなさそうだからずっと見られているよりも何倍もましなのだけどね。
オルセア皇子の態度が元に戻らないまま、皇城に到着した。
私たちは一旦客室で待機してくださいとの指示を貰っているので、おとなしく案内された客室で待つことになった。
城の内部や客室の構造はどうやらベルテンス王国の王城とそう変わらないようだ。いえ、むしろ部屋の中に設置されている調度品はアルファリム皇国の方が質は良いようね。ベルテンス王国の客室に置いてある調度品は、客人が良く触れるような物は質を少しだけ下の物を置いていたのよね。
客室の中を見ているとドアからノックの音が聞こえて来た。
「どうぞ」
私が入室の許可を出すと、執事とメイドが1人ずつ部屋の中に入って来た。執事はこの客室に案内してもらったのと同じ人のようだけど、メイドが入って来たのはどうしてなのかしら。
「何かありましたか?」
「その、皇からお呼びがかかりましたので、それを伝えに参りました」
「え? そ…そうですか。今すぐに…ではないですよね?」
いや、客室に待機しろと言われていたから、ほんの少しだけ呼ばれるかもしれないとは思っていたけど、まさか直ぐにではないわよね? 一応身なりは整えているけど、皇の前に出るにはもう少し準備した方が良いと思うのだけど。
「いえ、出来るだけ速やかに来るようにと、そう言伝を預かっております」
まじかー。まあ、皇ともなればあまり時間は取れないから仕方がないのかもしれないけど、少しくらい猶予をくれても良いのだけどね。あ、と言うことはこのメイドは身支度の補佐要員という事かしらね。
「わかりました。急いで支度をしますので外で待っていてくださいますか?」
「はい」
そう言って執事は部屋の外に出て行った。ディレンも何をいう訳でもなく、それに続いてついて行った。メイドはそのまま部屋の中に残っているので、予想通り身支度を手伝うためにここに来たようだ。
「お手伝いさせていただきますね」
「ええ、お願いします」
そうして身支度を終えた私は外で待機していた執事に連れられて皇の待つ場所へと向かうことになった。
連れて行かれた場所は想像していたよりも近くだった。皇が居る場所だから客室からは遠くの場所だと思っていたのだけど、もしかして最初から呼ばれることが決まっていたという事は無いわよね? 多分決まっていたら最初から身支度を済ませるようにと進言があるはずだから。
「連れてまいりました」
そして先導していた執事が部屋の中に確認を取ると中からオルセア皇子が現れた。
「ありがとう。ではミリアさん、申し訳ないのだけど中に入ってください。ああ、正式な場ではないからそこまで気張らなくても問題は無いよ?」
オルセア皇子はそう言って私を部屋の中に誘導した。いや、正式な場でなくとも皇に会うのは誰だって緊張はすると思うのだけど?
まあ、オルセア皇子からしたら皇は父親だし緊張はあまりしないのかもしれないけど、一応私も公爵家だからベルテンス王国の王家に連なる血筋ではあるけど王にはそう簡単に会えるものではないのだけどね?
「失礼します」
部屋の中に入るとそこは執務室と思われる場所だった。え? 皇に会うならもう少し広い部屋だと思っていたのだけど、何で執務室に呼ばれた? 侵略を手伝うと言っても一応他国の貴族が皇の執務室に入って大丈夫なのかしら?
「ようこそ。我がアルファリム皇国の国皇の執務室へ。売国のお嬢さん」
部屋に入ると直ぐに執務机の奥に座っていたおそらく皇が声を掛けて来た。売国って、事実だけどこれは探られているのかしらね? それとも単に弄ったら面白そうだとでも思われているのかしら。
「お初にお目に掛かります。ベルテンス王国のレフォンザム公爵家の長女、ミリア・レフォンザムと申します。以後、よろしくお願いいたします」
私がそう返すと皇は何やら面倒臭そうな表情をした。あー、何か拙い事でもしたのでしょうか。一応ミリアが覚えている通りにやったのだから不手際は無いと思うのだけど。
「ああ、そう言うのは無しでいい。あくまで今日は顔合わせみたいなやつだ。だから一々そういう感じで話されると肩が凝るから止めてくれ」
「え? い…いえ、そういう訳にもいかないかと…」
さすがに皇に向かって畏まらないで話すのはどの場であれ駄目だと思うのだけど。そう思ってオルセア皇子の方へ向いて助けを求める。
「あぁ、父上はこういう方なのだ。あまり気を張らなければ大丈夫だよ。父上もそう言っているしね」
いやいや、皇本人がそう言っていたって周りに聞かれたら問題視されるでしょう!? しかも初対面なのだしそう簡単に気張らずに会話なんて出来ませんよ。
何か、もうこの段階で面倒なことが起こる気がして仕方がないのですけど、出来れば少しでもいいから穏便に話が進んで欲しい所ね。
「君は我が息子であるオルセアが計画し指揮する予定のベンテンス王国への侵略に協力するとの話だが、その話はどこまで知られている? まさか協力関係にあるのが君の家だけではあるまいな?」
「うっ、あ、いえ。すいません。計画してから皇子に会うため直ぐに家を出たため、私が家を出た時点では協力の確約を得たのは2家のみです」
お父様に話を通してから1日で確約出来たと考えれば少なくは無いのだけど、さすがに侵略、いや内部からだと反乱か。反乱をすると考えれば少ない。出来れば10家くらいは協力の確約は欲しいところだね。
「ふむ。まあ、他に居るだけましか?」
「今もお父様、レフォンザム公爵が他家へ協力の打診は行っているはずですので、最終的には10家程が協力関係になるかと思います。ただ、それ以上となりますとベルテンス王国内の現状を考えると厳しいかと思われます」
「なるほど。まあいい。君の家だけではないのなら問題は無い。さすがに独り勝ちのような状況になるのは良くないと言うことで聞いただけだ。それでオルセア。先ほども聞いたが、改めて最終的にどう収めるのかを聞きたい」
ああ、私と話し合った内容についてはもう皇には報告済みなのね。でも、侵略の後についてはまだ決まっていないと。そう簡単に決める訳にはいかないし、その後のことも考えると慎重にもなるよね。
「先ほども言いましたが、私はレフォンザム公爵に王位を継がせるのが妥当だと思います」
え? いや…は? 何故ここでお父様が出て来るのでしょうか。いや、確かに王族の引いてはいますけど、歳を考えると結構な無理が出ると思いますよ?
「オルセア。それでうまくいくと思うのか? それでは十中八九、反論なり離反者が出るだろう。そうなれば復興半ばで国が維持できなくなるだろうな」
「いえ、ですが…」
「だから、先ほど言ったようにお前が上に立てばよかろう? 侵略の際に一番上で指揮を執っているのだから、別におかしなことではないと思うが」
オルセア皇子が上に立つ、という事はベルテンス王国の王になると? うーん、どうだろうか。いや、立場的にはおかしくは無いのか。でも、歳のことを考えるとちょっとどころか大分周りから軽く扱われそうな気がするのだけど。ただ、お父様が王になるよりは現実的かな。まあ、国を売った娘が居るって言うだけで反発する貴族は出て来るだろうし、外聞も悪いからね。
「だったらミリアさんが上に立てばいいのでは?」
いやいや、さすがそれは無いでしょう!? お父様が王になるよりも確実に反発が大きくなるのは目に見える。確実に最初から敵対心剝き出しの貴族が出て来るでしょうからね。さすがにあり得ない。
「いえ、それだけは在り得ませんよ。オルセア皇子」
「どう考えてもあり得ない選択肢だ。はやりオルセアが上に立った方が良いだろう。そうすればお前が気にしていたことを払拭するのにも役立つだろうよ」
ん? オルセア皇子は何かしたいことがあったという事なのかしら?
皇との話し合いは直ぐに終わった。と言うか私はそんなに話していないのだけど、あれでよかったのかしら? やっぱり探られたと言うか、人となりを確認された感じかしらね。
それでオルセア皇子に至っては一緒に皇の執務室から出て来てまだ隣に居るのだけど、皇に言われたことについて考えているのか黙ったままだ。
しかし、皇子が気にしている事とは何だろうか。皇の言い方からして皇自体は気にしていない、と言うか関係ないと言うことなのでしょうけど。皇家関係のことかもしくは別のことか。
ん? いや、それよりも皇はオルセア皇子にベルテンス王国の上に立てばいいと言ったけどアルファリム皇国の皇位継承はどうなるのだろうか。確かオルセア皇子は第1皇子だったはずだから継承権としては1位なのでは? と言うことはオルセア皇子が気にしていることはこれに関係しているのかもしれない。
「あの、お聞きしたいことがあるのですけど、よろしいでしょうか?」
「ん? あ…ああ、良いよ。何が聞きたいのかな?」
私が声を掛けたことで私が近くに居ることを思い出したのか、部屋を出てからずっと考え込んでいたオルセア皇子は少しだけ遅れて言葉を返してきた。
「オルセア皇子は確か第1皇子でしたよね? それなのにベルテンス王国の王になるように言われると言うのはどういう事なのでしょうか」
「あぁ、そのことか。うーん、まあ単に私が第2夫人の子供だからと言うだけだよ。偶然第1夫人の子供より早く生まれたから第1皇子なだけで、父上の子供の中では継承権は2位なんだ」
「なるほど。そう言うことでしたか」
ああ、面倒臭いやつですね。第1夫人と第2夫人の権力争いと言うか勢力争いの一旦かなぁ。当時は相当荒れたでしょうね。この辺りのことは後ろについている貴族も多くいるだろうし、そう簡単に解決することではないと思う。
「はは。いや、別に揉めたとかは一切なかったらしいよ? 私が生まれて直ぐに父上が第1夫人の長男を後継者にすると言ったらしいから。それに私もこの国の皇にはならない方が良いと思うしね」
ああ、あの皇ならそう言うかもしれない。先ほどの会話を聞いている限りだと結構決断は早そうだし思い切りも良さそうだったから、大いにありそうだ。でも、自分から皇にはならない方が良いって言うのはどういう事なのかしら。
「ならない方が良い、と言うのはどういう事なのでしょうか」
「うん、まあ…この国って結構皇の判断だけで動いている所があってね。それで損切りとかも即座に対応ってことが良くあるんだけど、そう言うのって結構俯瞰的に物事を見ないといけないんだよね。そう言うのが私はあまりうまくないと言うか、まあどうしても感情的に物事を見てしまうから向いていないってことだね。他の国ではどういう判断で物事を進めて行くのかがわからないから、父上の提案も受け入れられないってのもあるけどね」
なるほど、国としての体系がオルセア皇子の性格に合わないと言うことね。確かに数日一緒に馬車に乗っていてわかったことだけど、あまり大を生かすために小を切り捨てるような判断は出来そうな性格ではなさそうだったから、わからなくはないわね。
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