上 下
5 / 38
本編 転生したら婚約破棄され負け確定!? 死にたくないので王国を乗っ取らせていただきます!

1・気付いたら公爵令嬢!?ー3: 公爵である父親を巻き込む

しおりを挟む
 
 翌日、昼頃に公爵家の屋敷に戻って来た。屋敷の中の雰囲気からどうやら婚約破棄の話は既に伝わっているようだ。

「戻りました。お父様は執務室かしら?」
「ええ、執務室の方にいらっしゃいます。ですが今から行くのはよした方が良いかもしれません」

 ミリアの父親であるレフォンザム公爵にもしっかり婚約破棄の話は伝わっているようだ。ミリアと第2王子との婚約は父親である公爵が進めた物なのだから、断りもなしにいきなり破棄してきたら、それはもう怒髪天ものだろう。

「いえ、大丈夫よ。行ってみるわ」

 私を心配そうに見ていたメイドにそう言って断ってから、父親の執務室に向かった。


「お父様、ミリアです」

 執務室のドアを軽くノックしてから中に居るはずの父親に声を掛ける。

「ああ、ミリアか。少々立て込んでいるのだが……いや、入りなさい」

 まあ、夜会での出来事に関することで抗議文やら何やらで取り込んでいるのだろう。ただでさえ公爵である以上、貴族としての責務は大きいし、持っている領地もある。おそらく夜会の情報が回って来てから一度も休んでいないのだろう。
 ドアを開けて執務室に入る。予想通り少し疲れた様子のレフォンザム公爵、ミリアの父親が執務机に大量の書類を抱えて、その書類を処理していた。

「戻りました。お父様」

 普段、この親子がどのようなやり取りをしているかわからない以上、それっぽい感じに進めて行く。下手に怪しまれると今後の計画に支障を来すので慎重に話を進めて行こう。

「ああ、お帰り。昨日の夜会は散々だったらしいな。こちらにも色々と話が入って来ている」
「色々…ですか? 昨日の夜会ではそこまで言われるほど長い時間は参加していなかったので、そこまで言われるほどの内容は無いと思うのですが」
「む?」
 
 どうやら在ること無いことを言い触らしている輩が居るようだ。まあ、ゲームの内容から精神的に追い込んで自殺させているくらいだから、まだ序の口だと思うけど。

「私の所には第2王子から直接婚約破棄を言い渡された、新興子爵家の令嬢に言い負かされた、何も言い返せずに泣きながら会場を後にした、など、他にもいくつか細々としたものまで届いているが、どこまでが本当なのだ?」
「最初の婚約破棄の話以外は嘘ですね。子爵令嬢に関しては王子の隣に居ましたが、話は一言も話してはおりませんし、泣きながら会場を後にもしていませんね。誰がそのような事を言い出したのでしょうか?」
「…ふぅむ?」

 虚偽の報告を受けていたことに対して考えているのか、それともその話の出所について考えているのか。どちらにせよこちらから王国を乗っ取り計画の話を切り出すにはもう少し、タイミングを見計らは無いといけないわね。

「とりあえず夜会のことは理解した。しかし、婚約破棄についてはどうなっているのだ? 私には何の話も通されていないが」
「それに関しては私もわかりません。昨日、突然言われたことなので私も驚いているのです」
「そうか。王族への抗議文は今朝がた送ってはいるが、さてどうなるか」

 抗議文を送っても良い返事が来ないことは理解している。それは公爵も同じようだ。貴族である以上、こういった無駄な行動でもやっておかないと下に見られる可能性があるから形だけの抗議文だと思うけどね。

「この際、王子との婚約に関してはもういいと思います。それよりも私の今後のことを考えなければなりませんね。すでに嫌な噂が出回っているようですし」
「ああ、確かに。だがどうするつもりだ? 今まであった他の家のことを考慮すると簡単にはいかないはずだ」

 なるほど、今までもゲーム内のミリア・レフォンザムと同じように自殺に追い込まれた令嬢ないし令息が居ると言うことか。ゲームのシナリオだと不要な部分だから語られてはいなかったけどそう言うことね。どおりで場の作り方や協力者の手配なんかが慣れた手口だった訳だ。

「おそらく火消は間に合いませんね。そもそも手数が違うので太刀打ちできないとも言えますが」
「ふむ、まあそうだろうな」
「なので、やるだけ無駄なので噂に関しては何もしません。その代わり私はこれ以降療養か何かを理由にして表に出ないようにします。そうすれば下手な噂は出回らなくなるでしょう。まったく無くなると言うことは無いでしょうけど」

 まず計画を進める上で最初の段階でこの国の貴族に関わる必要は無い。なので引きこもっていることを理由にして表に出てこない理由を作る。その上で変装なんかをした上で暗躍を進める。
 計画を進める上で最初に会わなければならない相手は、隣国であるアルファリム皇国の皇子であるオルセア・アルファリムだ。こいつに会わないと計画が進まないので早めに会いに行きたい。

「それとお父様には申し訳ないのだけど、私はこの王国に見切りを付けました。お父様は私を王子に嫁がせて内部から影響力を高めようとしていたようですが、もうそれでどうにかなる段階は過ぎてしまったと思います」
「な!? 気付いていたのか!?」
「気付かない訳がないでしょう? あれだけ王国に尽くして来たのに、王が代わって直ぐに大臣だったお父様を王城内から追い払われたのです。それにも関わらず、王族に嫁がせようとするならそれぐらいの理由があって然るべきですから」
「そうか。すまない。そうしなければこの国は留まることなく腐敗していくと想いそうしたのだ」

 まあ、やり方は色々あっただろうけど、少なくともこの公爵家は今の王宮にとどまっているゴミ貴族から警戒されている。そんな状況でどうにかしようとしたら娘を影響力を持つようなところに嫁がせるくらいしかなかったのだろう。

「いいのです。そうしたことも理解できますから。ただ、もう王政に関わる貴族たちの暴走はどうにもできない段階に来てしまっています」
「なら、どうすればいい?」

 このレフォンザム公爵は長く王政に関わって来た。それも公爵である以上、成人する前から関わっていただろう。だから今の王国の現状をどうにかしたいと常に考えているはずだ。しかし、自身よりも王政に近い位置に居た娘にどうすることも出来ないと断言されて、どうしていいかわからなくなってしまったのかもしれない。
 だからこそ今が計画の話をする絶好のタイミングだ。

「ならお父様」
「なんだ?」

この国・・・乗っ取ってみませんか・・・・・・・・・・?」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

リリィ=ブランシュはスローライフを満喫したい!~追放された悪役令嬢ですが、なぜか皇太子の胃袋をつかんでしまったようです~

汐埼ゆたか
恋愛
伯爵令嬢に転生したリリィ=ブランシュは第四王子の許嫁だったが、悪女の汚名を着せられて辺境へ追放された。 ――というのは表向きの話。 婚約破棄大成功! 追放万歳!!  辺境の地で、前世からの夢だったスローライフに胸躍らせるリリィに、新たな出会いが待っていた。 ▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃ リリィ=ブランシュ・ル・ベルナール(19) 第四王子の元許嫁で転生者。 悪女のうわさを流されて、王都から去る   × アル(24) 街でリリィを助けてくれたなぞの剣士 三食おやつ付きで臨時護衛を引き受ける ▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃ 「さすが稀代の悪女様だな」 「手玉に取ってもらおうか」 「お手並み拝見だな」 「あのうわさが本物だとしたら、アルはどうしますか?」 ********** ※他サイトからの転載。 ※表紙はイラストAC様からお借りした画像を加工しております。

婚約破棄された令嬢が呆然としてる間に、周囲の人達が王子を論破してくれました

マーサ
恋愛
国王在位15年を祝うパーティの場で、第1王子であるアルベールから婚約破棄を宣告された侯爵令嬢オルタンス。 真意を問いただそうとした瞬間、隣国の王太子や第2王子、学友たちまでアルベールに反論し始め、オルタンスが一言も話さないまま事態は収束に向かっていく…。

転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる

花見 有
恋愛
前世、悪役令嬢だったカーラはその罪を償う為、処刑され人生を終えた。転生して中流貴族家の令嬢として生まれ変わったカーラは、今度は地味で穏やかな人生を過ごそうと思っているのに、そんなカーラの元に自国の王子、アーロンのお妃候補の話が来てしまった。

[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで

みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める 婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様 私を愛してくれる人の為にももう自由になります

攻略対象の王子様は放置されました

白生荼汰
恋愛
……前回と違う。 お茶会で公爵令嬢の不在に、前回と前世を思い出した王子様。 今回の公爵令嬢は、どうも婚約を避けたい様子だ。 小説家になろうにも投稿してます。

ゲームのシナリオライターは悪役令嬢になりましたので、シナリオを書き換えようと思います

暖夢 由
恋愛
『婚約式、本編では語られないけどここから第1王子と公爵令嬢の話しが始まるのよね』 頭の中にそんな声が響いた。 そして、色とりどりの絵が頭の中を駆け巡っていった。 次に気が付いたのはベットの上だった。 私は日本でゲームのシナリオライターをしていた。 気付いたここは自分で書いたゲームの中で私は悪役令嬢!?? それならシナリオを書き換えさせていただきます

冤罪で婚約破棄したくせに……今さらもう遅いです。

水垣するめ
恋愛
主人公サラ・ゴーマン公爵令嬢は第一王子のマイケル・フェネルと婚約していた。 しかしある日突然、サラはマイケルから婚約破棄される。 マイケルの隣には男爵家のララがくっついていて、「サラに脅された!」とマイケルに訴えていた。 当然冤罪だった。 以前ララに対して「あまり婚約しているマイケルに近づくのはやめたほうがいい」と忠告したのを、ララは「脅された!」と改変していた。 証拠は無い。 しかしマイケルはララの言葉を信じた。 マイケルは学園でサラを罪人として晒しあげる。 そしてサラの言い分を聞かずに一方的に婚約破棄を宣言した。 もちろん、ララの言い分は全て嘘だったため、後に冤罪が発覚することになりマイケルは周囲から非難される……。

妹ばかりを贔屓し溺愛する婚約者にウンザリなので、わたしも辺境の大公様と婚約しちゃいます

新世界のウサギさん
恋愛
わたし、リエナは今日婚約者であるローウェンとデートをする予定だった。 ところが、いつになっても彼が現れる気配は無く、待ちぼうけを喰らう羽目になる。 「私はレイナが好きなんだ!」 それなりの誠実さが売りだった彼は突如としてわたしを捨て、妹のレイナにぞっこんになっていく。 こうなったら仕方ないので、わたしも前から繋がりがあった大公様と付き合うことにします!

処理中です...