YouTuber犬『みたらし』の日常

雪月風花

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第115話 手順

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 オレの名前は『みたらし』。
 二歳の柴犬だ。

 散歩の途中、ママさんと公園に寄ると、そこで遊んでいた子供がオレに気付いて寄ってきた。
 触っていいですか? だって。
 ちゃんと許可を求めてくる。

 ほほぉ、ずいぶんと礼儀正しいお子さまじゃないか。
 感心、感心。

 オレはチラリとママさんを見上げた。
 ママさんがニッコリ笑って、どうぞと答えた。
 だそうだ。
 さ、思う存分、触るが良い!

 お子さまがしゃがんで、目線の高さをオレに合わせた。
 おぉ! なんだなんだ、上からじゃないぞ。

 お子さまがオレに手を差し出して、その匂いを嗅がせてくる。
 お……おぅ。
 敵……ではないな、うん。

 次に、首の下や、耳の後ろを優しく撫でてくる。
 おほぅ。
 うん、悪くない、悪くない。

 この子、できるな。
 犬を撫でるプロだな!

 ひとしきり撫でて満足したのか、お子さまはお礼を言って帰っていった。
 いやいやいやいや、ビックリしたぞ。
 ママさんもその手順の正確さに感動してる。

 子供が生まれたら、あんな風に、ちゃんと犬を撫でられる子にしよう、だってさ。
 いや、別にそんなもの目指す必要は無いと思うけど……ママさんらしいや。

 落ち着け、ママさん。
 そして今日もオレは撫でられる。
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