YouTuber犬『みたらし』の日常

雪月風花

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第39話 パン

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 オレの名前は『みたらし』。
 二歳の柴犬だ。

 木陰で涼んでいたオレの目の前に、不意に誰かが現れた。
 オレは慌てて立ち上がった。
 なんだ、うちの裏に住んでる、お婆ちゃんじゃないか。

 何度抗議しても、オレのことを『おダンゴちゃん』と呼ぶ、あのお婆ちゃんだ。
 まぁ、抗議したところで、犬語が分かるとは思えないけどね。

 ワンワン! 何か用?

 オレの前に何か置かれる。

 なにこれ。パン?
 犬用にパンを焼いたって?

 え? 食べていいの? 食べていいの?

 オレは、お婆ちゃんとパパさんを交互に見る。
 パパさんがうなずく。

 うっまーー!


 しばらくして、パパさんがオレの前に晩ごはんの入った鍋を置いた。

 ぷぃっ。

 パパさんが、えーって顔をしている。
 いや、だって、パパさん、オレがパン食べるとこ見てたじゃん。
 お腹いっぱいで何も入らないったら。

 どんまい、パパさん。
 そして今日も日が暮れる。
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