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【回避】
9.赤い目
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ムクロが死亡し数分後、また学者内の灯りは謎の現象により途絶えた。四階に居るサトリと三階に居るソウタとカオル近くの教室に避難する。ユメコも四階の音楽室に避難した。
灯りがなければ山奥に建てられたこの学舎内は真っ暗であり目を慣らしたとしても歩き回るのは困難なのだ。
二階端の理科室に居るタクミはラッキーな事に偶然近くにあった蝋燭とマッチを使い灯火を付け何とか灯りを確保する。
だが、タクミはずっと脅えていた。
彼はソウタから聞いた事があるのだ、霊は電磁気と似た存在であり強い霊が居ると磁気不良を起こす事がある。世間的にはつまり電子機器が勝手についたり消えたりという怪奇現象と呼ばれるものだと。
つまり、勝手に蛍光灯が消えているのは実はこの理科室の中だけであって他の箇所はきちんと灯りがついている。もしそうだとすると、自身の近くに霊がいるのでは無いか?
考えれば考えるほど、タクミは体調が優れなくなり仕舞いには吐き気が襲ってくる。見た目に似合わず目に見えないものには臆病者だ。
一階で扉の破壊をまたもや試みているのはケイトである。その様子をカヨはスマートフォンのライト機能で照らしてじっと見ている。
何度挑戦したのかケイトの手は切れて出血していた。カヨは心配し何度も彼の名を呼びかけ「やめて」と言うが彼の耳に彼女の声は届いていない。
彼と彼女には似たような夢がある。
ケイトは、世界中を旅してこの目で見た料理を自分のカメラで記録して周り最終的にはそのどの料理にも負けない自分だけの料理を作ること。
カヨは、美しい料理をカメラで記録し世界中の料理の載った写真集を世に売り出す事である。
どちらの夢も第三者が聞けば馬鹿馬鹿しく料理という狭い視野に夢を持つなどしょうもないように聞こえるが彼達からすると自分のこの夢こそが生きる活力になっているのだ。
「負けねぇぞ、霊なんかに負けねぇ!」
「無理だって、、。」
何度はしがれても立ち上がるケイト、もうヘトヘトの様子でまともに脚に力が入っていない。カヨは、咄嗟にケイトの腕を掴み止めようとしたがすぐに振り払われる。
「もう、スマホの充電がないから明日にしようよ、ねぇ、今は休んで明日になってからにしよって、、。」
弱々しい声でもう一度ケイトの腕を掴み身体を自分の方へ向かせると咄嗟に彼の胸の中へ飛び込んだ。ケイトは、若干顔を仄めかすと「悪い」と小さく一言。
「休める場所…探そ?」
「…あぁ、。」
すると、一階以外の灯りが普及する。その事にケイトが気が付くとスマホの充電が切れる前に急いで二人は上の階へ目指し始めた。
二階の蛍光灯は既に普及した筈なのに理科室だけはまだ暗いままであった。蝋燭の灯りが小さくついているだけである。
「あれ、、廊下はついてる?」
タクミは気がついた。二階の廊下はついているのに理科室の中は付いていない。何かがおかしい。タクミが立ち上がろうとすると、バチバチと電線が切れるような音がした。だが、何かが切れている様子はない。咄嗟にある言葉が横切った。
「もしかして、ラップ音!?」
ラップ音は次第に激しくなり大きくなっていく。タクミは、その音の恐怖に身体を丸くして頭を抱えた。「うわぁぁっ!」「うわぁぁっ!」と悲鳴を何度もあげて「助けてください!」「辞めてください!」と命乞いをする。
すると、ラップ音はピタッと止み薄らと灯りも戻ってきたのだ。
「助かった…のか」
汗だくになるもほっと息を着く。
腕がひんやりとした、湿布のような冷たさだった。何かに掴まれたかのように丁度二の腕あたりである。
【オマエ……カ?】
耳元で何かが囁いた。人の…声……。
それも凛とした男の。
「……冗談じゃないって」
薄暗い灯りの中、タクミの背後に奴はいた。
腕をしっかりとひんやりとした手で掴んでいる。そのひんやりとしたその手はタクミの神経を鈍らせるかのようであった。タクミは、ピクリとも動かなくなり口を開いたまま息も出来なくなる。目だけを動かして、後ろに何が居るのか見ようと試みた。
僅かだが彼は見た。
赤い目をした真っ白な顔の男を、。
灯りがなければ山奥に建てられたこの学舎内は真っ暗であり目を慣らしたとしても歩き回るのは困難なのだ。
二階端の理科室に居るタクミはラッキーな事に偶然近くにあった蝋燭とマッチを使い灯火を付け何とか灯りを確保する。
だが、タクミはずっと脅えていた。
彼はソウタから聞いた事があるのだ、霊は電磁気と似た存在であり強い霊が居ると磁気不良を起こす事がある。世間的にはつまり電子機器が勝手についたり消えたりという怪奇現象と呼ばれるものだと。
つまり、勝手に蛍光灯が消えているのは実はこの理科室の中だけであって他の箇所はきちんと灯りがついている。もしそうだとすると、自身の近くに霊がいるのでは無いか?
考えれば考えるほど、タクミは体調が優れなくなり仕舞いには吐き気が襲ってくる。見た目に似合わず目に見えないものには臆病者だ。
一階で扉の破壊をまたもや試みているのはケイトである。その様子をカヨはスマートフォンのライト機能で照らしてじっと見ている。
何度挑戦したのかケイトの手は切れて出血していた。カヨは心配し何度も彼の名を呼びかけ「やめて」と言うが彼の耳に彼女の声は届いていない。
彼と彼女には似たような夢がある。
ケイトは、世界中を旅してこの目で見た料理を自分のカメラで記録して周り最終的にはそのどの料理にも負けない自分だけの料理を作ること。
カヨは、美しい料理をカメラで記録し世界中の料理の載った写真集を世に売り出す事である。
どちらの夢も第三者が聞けば馬鹿馬鹿しく料理という狭い視野に夢を持つなどしょうもないように聞こえるが彼達からすると自分のこの夢こそが生きる活力になっているのだ。
「負けねぇぞ、霊なんかに負けねぇ!」
「無理だって、、。」
何度はしがれても立ち上がるケイト、もうヘトヘトの様子でまともに脚に力が入っていない。カヨは、咄嗟にケイトの腕を掴み止めようとしたがすぐに振り払われる。
「もう、スマホの充電がないから明日にしようよ、ねぇ、今は休んで明日になってからにしよって、、。」
弱々しい声でもう一度ケイトの腕を掴み身体を自分の方へ向かせると咄嗟に彼の胸の中へ飛び込んだ。ケイトは、若干顔を仄めかすと「悪い」と小さく一言。
「休める場所…探そ?」
「…あぁ、。」
すると、一階以外の灯りが普及する。その事にケイトが気が付くとスマホの充電が切れる前に急いで二人は上の階へ目指し始めた。
二階の蛍光灯は既に普及した筈なのに理科室だけはまだ暗いままであった。蝋燭の灯りが小さくついているだけである。
「あれ、、廊下はついてる?」
タクミは気がついた。二階の廊下はついているのに理科室の中は付いていない。何かがおかしい。タクミが立ち上がろうとすると、バチバチと電線が切れるような音がした。だが、何かが切れている様子はない。咄嗟にある言葉が横切った。
「もしかして、ラップ音!?」
ラップ音は次第に激しくなり大きくなっていく。タクミは、その音の恐怖に身体を丸くして頭を抱えた。「うわぁぁっ!」「うわぁぁっ!」と悲鳴を何度もあげて「助けてください!」「辞めてください!」と命乞いをする。
すると、ラップ音はピタッと止み薄らと灯りも戻ってきたのだ。
「助かった…のか」
汗だくになるもほっと息を着く。
腕がひんやりとした、湿布のような冷たさだった。何かに掴まれたかのように丁度二の腕あたりである。
【オマエ……カ?】
耳元で何かが囁いた。人の…声……。
それも凛とした男の。
「……冗談じゃないって」
薄暗い灯りの中、タクミの背後に奴はいた。
腕をしっかりとひんやりとした手で掴んでいる。そのひんやりとしたその手はタクミの神経を鈍らせるかのようであった。タクミは、ピクリとも動かなくなり口を開いたまま息も出来なくなる。目だけを動かして、後ろに何が居るのか見ようと試みた。
僅かだが彼は見た。
赤い目をした真っ白な顔の男を、。
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