Photo,彼女の写真

【予兆】

1.学舎へ

夏、富痔とびち学園では部活動に力を入れており、長期休みに入ると運動部文化部関係なく約二週間の合宿が行われる。

その中である写真部も自然豊かな田舎に建てられた今では学舎としてよく使われる元々は中学校であった廃校を貸し切り1年から3年までを含めた男女5名ずつで合宿に行く事になっていた。

｢ちょっと、これどういう事なの！？｣
茶髪ミリアムパーマの三年女子生徒が突如大きな声で弱音を吐く。

｢山を登って学舎に行くなんて聞いてないですよ｣
それに続いてメガネツインテールの一年女子。

｢顧問曰く、何処に芸術が眠っているか分からない。文化部と言えど何処へでも行ける体力をつけよ！って言ってましたよ！｣
得ている情報を伝える一年ベリショートの女子。

｢写真部にそんな熱い顧問いらないっつーの｣
浅黒い肌のギブソンアタックの二年女子

そんな中、文句1つ言わずに黙々と山を登り続ける一年であるボブヘアの色白の彼女を気になったミリアムパーマは声をかけた。

｢あんたは何も不満はないわけ？｣
｢…え？｣
少々困惑するボブヘア、名前は【サトリ】彼女は容姿はいいが人見知りな事から友達は居ない。写真部に入ったのも、中学の時にも写真部に入部し偶然その年に1年にも関わらずコンクールで最優秀賞を得ていた事とこの学園では写真部は部室はあるが、学園祭前にしか部員達は基本集まらないと知っていた為、部員同士での交流が少ない。彼女に取って最もな決め手はこれであった。

｢それにしても今年は一年女子が三人も入部してたなんて知らなかったわ｣ 
と、ギブソンアタックの【ムクロ】が言う。
それに続くようにミリアムパーマ【ユメコ】が目を光らせるようにして一年女子に言う。

｢まだ男子部員と誰とも会ってないでしょ？期待しときなよ！写真部って割にはうちの男子部員はイケメン多いから！｣

｢ホントですか！！｣
それにいち早く反応したのはベリショートの【カヨ】であった。
｢……。｣
メガネツインテールの【ナツキ】は俯くだけで興味を示していない。

｢男子部員が先に向かって顧問と学舎を掃除してくれてるから早く行っちゃおっか、！｣
ムクロが走って山を登り出す。
｢賛成、賛成でーす！｣
｢えっ待ってください。｣
ムクロに釣られてカヨも走り出し、それを追うようにナツキも走り出す。

そのタイミングを見図ったように。
三年の先輩ユメコがサトリの顔を覗き込むように｢あんたさ？｣と話しかけた。

急に話しかけられたことで少し恐怖心を持つサトリだが一瞬目を合わせた。それを気にユメコは言葉を続けた。

｢一年生の時にコンクールで最優秀賞取った子だよね？｣
｢え、？｣
また、サトリが咄嗟に目を合わせるとユメコは前を向いて今度は逆に目を合わせようとしなかった。
｢やっぱりか、私と同じ中学だったのね。私も中学の時さ写真部であんたの顔どっかで見た事あるなーって今日思ったの。｣
淡々と会話を進めるが、流れるように声は小さく低くなっていく。

｢衝撃的だったよね。｣
｢……。｣
頭の中で雷がなった様な気がした。

【その年ってさ、同じ写真部の一年の子……失踪したでしょ。】
その雷の音は大きくなっていく。

【それも、夏の合宿の時に…。】
私は突然、胸が苦しくなった。
過呼吸気味になり上手く呼吸ができない。

苦しい。

苦しい…苦しい。

苦しいよ…。

｢大丈夫？｣
｢…え？｣
ユメコがサトリを抱えるようにして心配そうに言う。

｢思い出したくなかったよね…。ごめんね。｣
｢…いえ。｣
｢毎年、思い出すの。高校生になってからも3年間ずっとこの合宿が始まる時にね…。あんたの顔、見た事あるなって思ったから私のこの気持ち受け入れてくれるかなって思って話しちゃったんだけど、ごめんね。｣
ユメコは、少し無理やり笑っているような気がした。サトリは、ユメコと目、いや顔をすら合わせず俯いたまま【大丈夫です】ただそれだけを言葉にした。

それから、五分ほど山を登ると学舎へと辿り着に先に着いていた女子の三人と男子五人に顧問の男性教師【神坂かみさか先生】が並んでサトリ達を待っていた。