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研がれし剣は継がれゆく
よければ、外で2人で話しませんか?
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「おお、サンじゃないか! よく来てくれたね」
ヤドは嬉しそうに自分を迎え入れてくれた。どうやらもう完璧に自分の声は覚えてくれたようである。
サンはヤドに下宿先の居間のようなところに案内された。案内されるままにサンが座ると、ヤドはバタバタとコーヒーとスルメを置いた。コーヒーとスルメは絶対合わないだろ、そんなことを思うサンをよそに、ヤドは彼に声をかける。
「いやぁ、しかし良かったよ。こうして君にちゃんと礼をいうことができて。シーラの件は本当にありがとう」
「別に大したことはしてないよ。それよりヤドさんも倒れた俺のことを治療してくれたんだろ。こちらこそこちらこそありがとう」
「そんな、それこそ大したことはしてないよ。しかし、随分と治りが早いんだね。見えなくても君が相当なダメージを負った様子は分かっていたんだが」
「ああ、えーっと、生まれつきで、昔から傷の治りが早いんだ」
「そうなのかい。それは、丈夫に産んでくれた親に感謝だね」
目に見えないヤドにフェニックスのことを話しても戸惑わせるだけだろう。そもそも自分でさえ、自分やユニやフォンのような幻想上の獣人がなんで存在するのかわからないわけだし。そんなことを考えながらも、サンはヤドに対して問いかける。
「とりあえず、0号は倒せたけどさ、ヤドさんは、その……これからどうするの?」
「……ああ。とりあえず、あの城の主人が倒されるまでは、リサメと共にゆっくり休むよ。探し物は……それからかな」
「……そっか」
リサメの記憶がサンの頭に流れてきた時、サンはヤドとリサメの関係と、ヤドの『探し物』が何だったのかを悟った。きっとそれは、弟子たちの遺体。それを自分に知らせなかったのは、不要な心配をかけないためだろう。きっと道場まで連れて来られた後は、一人で探す気だったのだ。
まあとにもかくにも、ヤドが無理をしないのならば良かった。サンがそう思い安堵していると、ヤドが彼に対して言葉を発する。
「サンたちは、確か明日の朝出発するんだよね?」
「え? そのつもりだったけど、何でヤドが知っているの?」
「ナマズラ長老から聞いたんだよ。あまり無理をしないで、気をつけて帰ってくるんだよ」
「………ああ、うん」
サンは曖昧な返事を返しながらも、ヤドの反応に戸惑っていた。本来彼の優しさならば、ラキュラと戦いに行く自分を引き止めてもおかしくはないはずだ。だが、彼は気をつけてなどと自分に対して気の抜けた言葉を放っている。まるで、まだ決戦の時を迎えていないかのような。
『ああ、成る程。そういうことか』
そこでサンは、シェドがナマズラに対して、どのような会話をしたのか理解した。確かにそれならシーラの人のプライドを損なうことなく、自分達がラキュラの城へと攻め入ることができる。全く、よくもまあそんなに頭を回すことができるものだ。
それならば自分がシーラの人たちが危険に晒されなくなったのにも関わらず、わざわざ嘘を修正する必要もない。サンはナマズラ長老の言葉と辻褄を合わせながら、話題を変えていく。
「そうだね。無事に戻ってくるよ。それよりもさ、ヤドさん。そのリサメって人は今どこにいる?」
「リサメかい? 何の用だい」
「いや、色々あったからさ。その人にもちゃんと声かけておきたいって思って」
「そうかい。リサメも自分と共にここに泊めてもらってるんだがね、彼は今キンギナさんに頼まれて買い物に出かけていたんだよ。でも、まあ、もうすぐ帰ってくる頃だとは思うんだが」
「ただいまー」
ヤドの言葉が終わるや否や、そのリサメの声が玄関の方から聞こえてきた。どうやら彼も外に出られる程度までは回復できたようである。ヤドはその声を聞くと椅子からゆっくりと立ち上がった。
「来たようだね。私が呼んでこよう。少しここで待っていてくれ」
そしてヤドが出たことにより、部屋に一人となるサン。スルメをかじり、ぼーっとして待っていると、彼の耳に何やら話し声が聞こえてきた。
「え、あのサンって人が来てるの?」
「そうだよ、リサメ。君と話したいと言っているよ」
「そうなんだ。じゃあ会う前に持ってきたいものがあるから、それを取ってきてからでもいいかな」
「ああ、もちろんいいさ」
まあ、よほど大きい家でもなければ玄関の声ぐらい聞こえてくるものだ。リサメがドタドタと廊下を歩く音を耳にしながら、イカの旨味を噛み締めていると、再び、今サンのいる部屋のドアが開く。
『―――ん?』
サンは、ドアから入ってきたリサメが手荷物を見て違和感を覚えた。それは、何かの布で包まれていたが、恐らくサンも道場にいた頃使っていた訓練用の木刀だ。いや、彼らが扱っていたのは自分のような刀ではなく剣だから、木剣といったところだろうか。
後ろで柔らかな微笑みを浮かべているヤドには、彼が持ってきたものは何か認識できていない。リサメは、その木剣らしきものを手に握りながら、サンに対して言葉を発する。
「来てくれてありがとう。サンさん。よければ外で2人で話しませんか?」
ヤドは嬉しそうに自分を迎え入れてくれた。どうやらもう完璧に自分の声は覚えてくれたようである。
サンはヤドに下宿先の居間のようなところに案内された。案内されるままにサンが座ると、ヤドはバタバタとコーヒーとスルメを置いた。コーヒーとスルメは絶対合わないだろ、そんなことを思うサンをよそに、ヤドは彼に声をかける。
「いやぁ、しかし良かったよ。こうして君にちゃんと礼をいうことができて。シーラの件は本当にありがとう」
「別に大したことはしてないよ。それよりヤドさんも倒れた俺のことを治療してくれたんだろ。こちらこそこちらこそありがとう」
「そんな、それこそ大したことはしてないよ。しかし、随分と治りが早いんだね。見えなくても君が相当なダメージを負った様子は分かっていたんだが」
「ああ、えーっと、生まれつきで、昔から傷の治りが早いんだ」
「そうなのかい。それは、丈夫に産んでくれた親に感謝だね」
目に見えないヤドにフェニックスのことを話しても戸惑わせるだけだろう。そもそも自分でさえ、自分やユニやフォンのような幻想上の獣人がなんで存在するのかわからないわけだし。そんなことを考えながらも、サンはヤドに対して問いかける。
「とりあえず、0号は倒せたけどさ、ヤドさんは、その……これからどうするの?」
「……ああ。とりあえず、あの城の主人が倒されるまでは、リサメと共にゆっくり休むよ。探し物は……それからかな」
「……そっか」
リサメの記憶がサンの頭に流れてきた時、サンはヤドとリサメの関係と、ヤドの『探し物』が何だったのかを悟った。きっとそれは、弟子たちの遺体。それを自分に知らせなかったのは、不要な心配をかけないためだろう。きっと道場まで連れて来られた後は、一人で探す気だったのだ。
まあとにもかくにも、ヤドが無理をしないのならば良かった。サンがそう思い安堵していると、ヤドが彼に対して言葉を発する。
「サンたちは、確か明日の朝出発するんだよね?」
「え? そのつもりだったけど、何でヤドが知っているの?」
「ナマズラ長老から聞いたんだよ。あまり無理をしないで、気をつけて帰ってくるんだよ」
「………ああ、うん」
サンは曖昧な返事を返しながらも、ヤドの反応に戸惑っていた。本来彼の優しさならば、ラキュラと戦いに行く自分を引き止めてもおかしくはないはずだ。だが、彼は気をつけてなどと自分に対して気の抜けた言葉を放っている。まるで、まだ決戦の時を迎えていないかのような。
『ああ、成る程。そういうことか』
そこでサンは、シェドがナマズラに対して、どのような会話をしたのか理解した。確かにそれならシーラの人のプライドを損なうことなく、自分達がラキュラの城へと攻め入ることができる。全く、よくもまあそんなに頭を回すことができるものだ。
それならば自分がシーラの人たちが危険に晒されなくなったのにも関わらず、わざわざ嘘を修正する必要もない。サンはナマズラ長老の言葉と辻褄を合わせながら、話題を変えていく。
「そうだね。無事に戻ってくるよ。それよりもさ、ヤドさん。そのリサメって人は今どこにいる?」
「リサメかい? 何の用だい」
「いや、色々あったからさ。その人にもちゃんと声かけておきたいって思って」
「そうかい。リサメも自分と共にここに泊めてもらってるんだがね、彼は今キンギナさんに頼まれて買い物に出かけていたんだよ。でも、まあ、もうすぐ帰ってくる頃だとは思うんだが」
「ただいまー」
ヤドの言葉が終わるや否や、そのリサメの声が玄関の方から聞こえてきた。どうやら彼も外に出られる程度までは回復できたようである。ヤドはその声を聞くと椅子からゆっくりと立ち上がった。
「来たようだね。私が呼んでこよう。少しここで待っていてくれ」
そしてヤドが出たことにより、部屋に一人となるサン。スルメをかじり、ぼーっとして待っていると、彼の耳に何やら話し声が聞こえてきた。
「え、あのサンって人が来てるの?」
「そうだよ、リサメ。君と話したいと言っているよ」
「そうなんだ。じゃあ会う前に持ってきたいものがあるから、それを取ってきてからでもいいかな」
「ああ、もちろんいいさ」
まあ、よほど大きい家でもなければ玄関の声ぐらい聞こえてくるものだ。リサメがドタドタと廊下を歩く音を耳にしながら、イカの旨味を噛み締めていると、再び、今サンのいる部屋のドアが開く。
『―――ん?』
サンは、ドアから入ってきたリサメが手荷物を見て違和感を覚えた。それは、何かの布で包まれていたが、恐らくサンも道場にいた頃使っていた訓練用の木刀だ。いや、彼らが扱っていたのは自分のような刀ではなく剣だから、木剣といったところだろうか。
後ろで柔らかな微笑みを浮かべているヤドには、彼が持ってきたものは何か認識できていない。リサメは、その木剣らしきものを手に握りながら、サンに対して言葉を発する。
「来てくれてありがとう。サンさん。よければ外で2人で話しませんか?」
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