158 / 214
夜の闇は日々を侵す
それでも俺は憧れたんだよ。決して折れない信念ってやつに!
しおりを挟む
――グシャァァァァ!
「あっぐぁ!」
そしてラキュラは再びファルに刀を突きつけるのだった。
真っ赤な血を流しながらも再び力なき呻き声を発するファル。だらりと力なく倒れるファルを眺め、ラキュラは、ナヅマの方に向き直る。
「随分遅かったな。ナヅマ。待ち侘びたぞ」
「本当だぜ。俺なんて血だらけだ」
ファルが倒れたことに安堵し、ナヅマに対して非難の目を向けるヒノク。ナヅマはそんなヒノクを睨みつけた後、ラキュラに答える。
「俺だってこんなに手間がかかるなんて思いませんでしたよ。このツバメ野郎が意外と手こずらせやがって」
「確かに、傷だらけじゃないか。すごいな、このナヅマ相手にここまで時間を稼いだのか。しかも、ここにいるやつは獣力操作の仕方も分からないんだろ?」
ヒノクは目を輝かせて、スアロの方を見る。ラキュラはそんな彼にため息をつく。
「材料に目を輝かせるのは全てが終わってからにしろ。ヒノク。これでファルは倒したんだ。ここから奪えるだけ奪って本拠地に戻る。ナヅマは、ファルに止めを刺し、ここで獣人狩りをしていろ。俺はレイたちと合流を図りながら、ターゲットAを探す。ヒノクはもう無理そうだな。ターゲットBとこのツバメの獣人を連れて先に戻っていろ」
「……誰がどこに行くって?」
「…………!?」
ラキュラたち3名は、一斉にその声がした方向を向いた。すると、ファルが足を震わせながらその場に立っていた。
「おいおい嘘だろ。まだ立てんのかよ」
ヒノクは、目を丸くし、半ばあきれたように笑いながらファルの方を眺める。ナヅマは、ラキュラの方を向き、言葉を発する。
「ラキュラ様! ここは俺が!」
「いい、下がれ。俺がやる」
ラキュラは2人を下げ、剣を抜いて前に出た。いくら五神獣とはいえ、これほど手負いの獣人1人やれずして、野望も何もないだろう。ラキュラは、その剣の先を真っ直ぐファルへと向ける。
「まだ立つんだな、死に損ないが。貴様がここで立ち上がったところで、何か守れる命が増えるわけでもないだろうに」
「……そうかもな」
ファルは、呟くようにラキュラへと言葉を返した。しかし、彼は、決して消えぬ闘志を秘めた目を向けて、ラキュラと対峙し、続ける。
脳裏に浮かぶは、どれほどボロボロになろうとも立ち上がるアサヒの背中。
「けれどな。それでも俺は憧れたんだよ。決して折れない信念ってやつに!」
「抜かせ!」
ファルの息の根を止めるために、ラキュラは地面を大きく蹴った。再び武器と武器をぶつけ合う2人。そんな中ラキュラは、ファルの刀のあまりの力のなさに、思わず鼻を鳴らす。
「ふっ、やはり瀕死じゃないか。何だこの力のない剣技は。きさまの刀なんていとも簡単に弾くことができるぞ!」
――ガキィィィン!
ラキュラの猛攻を弱々しい武器で捌いていくファル。ヒノクやナヅマの目から見ても、ラキュラが勝つのは明らかに思えた。
しかし、そんな剣戟の中、ファルは呟く。
「そう、女であるあいつの刀もな。誰にも力では勝てないほど、弱々しいものだった」
「は?」
「それでもアイツはな、自分の獣の力を使って、馬鹿みたいな技で、勝ってきたんだよ」
――バッ!
するとファルは、左に握っていた剣を鞘に納めた。ラキュラはその様子に驚きながらも決して攻撃の手は緩めない。
「は! 血迷ったか! 刀一本になったところで、きさまに何ができる!?」
「今からやる技は頭のイカれた女の技だ。俺の技じゃない」
ラキュラは、力なく一本の刀を握るファルに対して、力強く自身の剣を掲げる。
「何をする気か知らないが、これで終わりにさせてもらうぞ、ファル!」
「ああ、俺もそのつもりだよ。いくぜ、陽天流七照型、昇陽旭牙しょうようきょくが!」
するとラキュラはファルがとった行動に驚いた。彼はまるでラキュラの剣を受け入れるように、自らの刀を下段に下げたのだ。そして、ラキュラが自身に斬りかかるタイミングで、彼もまた、ラキュラを下から切り裂いた。
――ドシャァァァァ!!
互いに刀を斬り合い、真っ赤な血を流し合う両者。ファルは、ラキュラの真っ黒な血をその身に受けながら、呟く。
「な? 呆れるくらい馬鹿な技だろ」
――ドサッ。
ファルはそう言葉を残すと、ゆっくりとうつ伏せに倒れていった。ラキュラは真っ黒な血をダラダラと流しながら、フラフラとした足取りで剣を地につける。なるほどな。この傷で、自分がこれ以上スカイルにいるのは不可能になったということか。
「見事だな。貴様のような男と戦えたことを、誇りに思うとしよう」
さて、ここスカイルで果たさなければならないタスクは2つ。鳥人の捕獲とターゲットAの捜索。前者の方はここまでファルのことを足止めできていれば成果がないということはないだろう。問題はAの捜索なわけだが。
「なん……だよ。これ?」
その時、ある男がここにやってきて、今の惨状を見てそう言葉をこぼした。それもそのはずだ。幼馴染である2人は男に捕獲され、かけがえのない師匠もまた、血だらけになって地面に伏せているのだ。そんな状況を簡単に受け入れられるはずがない。
「なぁ、おい、一体何をやってるんだよ!!」
ラキュラは、その男を見て、ニヤリと笑みを浮かべた。
「あっぐぁ!」
そしてラキュラは再びファルに刀を突きつけるのだった。
真っ赤な血を流しながらも再び力なき呻き声を発するファル。だらりと力なく倒れるファルを眺め、ラキュラは、ナヅマの方に向き直る。
「随分遅かったな。ナヅマ。待ち侘びたぞ」
「本当だぜ。俺なんて血だらけだ」
ファルが倒れたことに安堵し、ナヅマに対して非難の目を向けるヒノク。ナヅマはそんなヒノクを睨みつけた後、ラキュラに答える。
「俺だってこんなに手間がかかるなんて思いませんでしたよ。このツバメ野郎が意外と手こずらせやがって」
「確かに、傷だらけじゃないか。すごいな、このナヅマ相手にここまで時間を稼いだのか。しかも、ここにいるやつは獣力操作の仕方も分からないんだろ?」
ヒノクは目を輝かせて、スアロの方を見る。ラキュラはそんな彼にため息をつく。
「材料に目を輝かせるのは全てが終わってからにしろ。ヒノク。これでファルは倒したんだ。ここから奪えるだけ奪って本拠地に戻る。ナヅマは、ファルに止めを刺し、ここで獣人狩りをしていろ。俺はレイたちと合流を図りながら、ターゲットAを探す。ヒノクはもう無理そうだな。ターゲットBとこのツバメの獣人を連れて先に戻っていろ」
「……誰がどこに行くって?」
「…………!?」
ラキュラたち3名は、一斉にその声がした方向を向いた。すると、ファルが足を震わせながらその場に立っていた。
「おいおい嘘だろ。まだ立てんのかよ」
ヒノクは、目を丸くし、半ばあきれたように笑いながらファルの方を眺める。ナヅマは、ラキュラの方を向き、言葉を発する。
「ラキュラ様! ここは俺が!」
「いい、下がれ。俺がやる」
ラキュラは2人を下げ、剣を抜いて前に出た。いくら五神獣とはいえ、これほど手負いの獣人1人やれずして、野望も何もないだろう。ラキュラは、その剣の先を真っ直ぐファルへと向ける。
「まだ立つんだな、死に損ないが。貴様がここで立ち上がったところで、何か守れる命が増えるわけでもないだろうに」
「……そうかもな」
ファルは、呟くようにラキュラへと言葉を返した。しかし、彼は、決して消えぬ闘志を秘めた目を向けて、ラキュラと対峙し、続ける。
脳裏に浮かぶは、どれほどボロボロになろうとも立ち上がるアサヒの背中。
「けれどな。それでも俺は憧れたんだよ。決して折れない信念ってやつに!」
「抜かせ!」
ファルの息の根を止めるために、ラキュラは地面を大きく蹴った。再び武器と武器をぶつけ合う2人。そんな中ラキュラは、ファルの刀のあまりの力のなさに、思わず鼻を鳴らす。
「ふっ、やはり瀕死じゃないか。何だこの力のない剣技は。きさまの刀なんていとも簡単に弾くことができるぞ!」
――ガキィィィン!
ラキュラの猛攻を弱々しい武器で捌いていくファル。ヒノクやナヅマの目から見ても、ラキュラが勝つのは明らかに思えた。
しかし、そんな剣戟の中、ファルは呟く。
「そう、女であるあいつの刀もな。誰にも力では勝てないほど、弱々しいものだった」
「は?」
「それでもアイツはな、自分の獣の力を使って、馬鹿みたいな技で、勝ってきたんだよ」
――バッ!
するとファルは、左に握っていた剣を鞘に納めた。ラキュラはその様子に驚きながらも決して攻撃の手は緩めない。
「は! 血迷ったか! 刀一本になったところで、きさまに何ができる!?」
「今からやる技は頭のイカれた女の技だ。俺の技じゃない」
ラキュラは、力なく一本の刀を握るファルに対して、力強く自身の剣を掲げる。
「何をする気か知らないが、これで終わりにさせてもらうぞ、ファル!」
「ああ、俺もそのつもりだよ。いくぜ、陽天流七照型、昇陽旭牙しょうようきょくが!」
するとラキュラはファルがとった行動に驚いた。彼はまるでラキュラの剣を受け入れるように、自らの刀を下段に下げたのだ。そして、ラキュラが自身に斬りかかるタイミングで、彼もまた、ラキュラを下から切り裂いた。
――ドシャァァァァ!!
互いに刀を斬り合い、真っ赤な血を流し合う両者。ファルは、ラキュラの真っ黒な血をその身に受けながら、呟く。
「な? 呆れるくらい馬鹿な技だろ」
――ドサッ。
ファルはそう言葉を残すと、ゆっくりとうつ伏せに倒れていった。ラキュラは真っ黒な血をダラダラと流しながら、フラフラとした足取りで剣を地につける。なるほどな。この傷で、自分がこれ以上スカイルにいるのは不可能になったということか。
「見事だな。貴様のような男と戦えたことを、誇りに思うとしよう」
さて、ここスカイルで果たさなければならないタスクは2つ。鳥人の捕獲とターゲットAの捜索。前者の方はここまでファルのことを足止めできていれば成果がないということはないだろう。問題はAの捜索なわけだが。
「なん……だよ。これ?」
その時、ある男がここにやってきて、今の惨状を見てそう言葉をこぼした。それもそのはずだ。幼馴染である2人は男に捕獲され、かけがえのない師匠もまた、血だらけになって地面に伏せているのだ。そんな状況を簡単に受け入れられるはずがない。
「なぁ、おい、一体何をやってるんだよ!!」
ラキュラは、その男を見て、ニヤリと笑みを浮かべた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
32
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる