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夜の闇は日々を侵す
俺たちにもあいつの故郷を守らせてくれ
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アラシの見ている視界では、サンと怪物の決着は、一瞬にしてサンの勝利で終わった。サンは一度炎を消し、刀を腰に構えると、敵を目にも止まらぬ速さで斬りつけたのだ。アラシがファルから学んだ照型にはあんなものはなかった。きっと、あれもまた太陽照波斬と同様にサンが生み出した照型なんだろう。
「終わったよ。アラシ。とりあえずピグルを治療しようか」
サンは軽々と怪物を倒し、さして表情を変えることもなく、そう言葉をこぼした。アラシはそんな彼から溢れ出る強さを感じる。
――サン。お前、どれほど成長したんだよ。もうきっとフォンさんより強いんじゃないか。
「あ、ああ」
そうしてアラシはピグルを連れて一度建物の影に姿を顰めた。サンは、ピグルの腕に自身の炎をあてがいながら、アラシの方を見る。
「それでさ、アラシ。何があったんだ? わかることを教えてくれ」
「ああ、そうだな。さて、何から話そうか」
アラシは、深く息を吐いて、サンに彼が来る前に起きたことを話した。いつあの怪物たちがやってきたか。どうやってこの地に降り立ったか。何をしにきたと言っていたか。
サンは一通りアラシの話を聞くと、低く呟く。
「なるほど。となるともう30分以上は時間が経ってるのか。でもだったらおかしいな……」
アラシもなんとなく彼が言いたいことに察しがついていた。それについて彼の見解を述べようとした時、ピグルがサンの炎を受けて回復し、目を覚ます。
「あ、サンだ~。久しぶり~、元気だった?」
旅に出た時から変わらないのんびりとした笑顔にサンもつられて笑顔になる。
「ただいま、ピグル。元気だったよ」
「それはよかったな~。あれ? そういや、友達も来るって言ってなかった? どこいるの?」
「ああ、俺はみんなより先に来て、避難所の様子を見に来たんだ。でもそろそろみんな来る頃だとは思うんだけど」
サンがそう言葉を終わるや否や、サンと同じくらいの年齢と思われる頭に角を持った少年が、こちらに駆け寄ってきた。
「サン! よかった! 追いつきました!」
「あ、ユニ! お疲れ。シェドとネクは?」
「2人も2、3人の改造獣人と戦ってましたが、もうすぐ来ると思います! そんなに苦戦している様子はなかったので」
ユニがそう言葉を終えるや否や、彼が来た方向から獅子の獣人と、蛇の獣人がすぐに後に続いた。
「……やっと見つけた。サン。本当にいつも急に飛び出しすぎ」
「とりあえず商店街入り口付近の獣人は、4、5人ほど倒してきたぞ。それとそっちの2人はなんだ?」
シェドはピグルとアラシを見つめ、そう言葉をこぼす。真っ黒で迫力のある立髪だな。アラシとピグルはそう思う。自分達が関わってきたフォンさんはライオンになれるとは言えど立髪はなかったので、シェドのそれは彼らにとっても新鮮だった。
サンは、シェドの言葉を受け、2人を紹介する。
「ああ、紹介するよ! 2人はアラシとピグル。俺が昔いた施設フォレスに住んでるんだ。あ、それと2人にも紹介しないと。こっちはネク、シェド、ユニ。旅の途中に出会ったんだ」
「ああ、よろしく」
「よろしくね~」
アラシとピグルが3人を眺めてそう挨拶する。シェド達3人も2人に対して挨拶をした。
しかし、今は挨拶ばかりしている場合ではない。シェドは、2人へ軽く挨拶した後、サンに尋ねる。
「さて、サン。今はどういう状況か、分かるか」
「ああ、アラシから聞いた。とりあえず30分前ぐらいからハビボルと同じ感じで、大量の改造獣人が攻めてきたみたいだ。後多分レンシみたいに、こいつらのリーダーみたいな奴が2人いる」
「なるほどな。それならその2人を倒せば、ひとまずこいつらが獣人ばかり襲うことは無くなるか。ただ、それだとおかしいことがあるな」
「……うん」
「え、なんですか?」
シェドの言葉に静かに頷くサンに対し、疑問をこぼすユニ。シェドはそんな彼に対し一つため息をつく。
「いいか。ここスカイルにはサンの師匠ファルがいるって話は聞いていたろ。でも、今この騒動にも関わらず、その師匠は来ていない。ということはどういうことか分かるか、ユニ?」
「あ、向こうも攻撃を受けてる! てことは大変じゃないですか! サン! こんなとこにいないで、早く行かないと」
「でも……」
サンは周囲の様子を眺めて言葉をためらった。この場でもすでに十分な被害が出ている。それを、彼らに任せて向こうに助けに行ってもいいものだろうか。
「……大丈夫だよ。サン」
優しくそう言葉をかけたのはネクだった。彼女はサンの心を把握し、寄り添うように続ける。
「……ハビボルも、カニバルも、サンが守ってくれたから今がある。だからさ、今度は私たちにも、サンが大事にしてるものを守らせて欲しい。それはユニやシェドも同じ気持ち」
「はい! 全くです!」
「……まあ、間違ってはないな」
シェドとユニがネクに続く。ネクはそんな2人を見て優しく笑みを浮かべながら、サンに告げた。
「……ほら、だから行って。サン。向こうにさ、サンの大切な人が、たくさんいるんでしょ?」
その時サンの脳裏に、スアロやケイやファル、そして、クラウの顔が浮かぶ。そうだ。確かに自分は彼らの安否を確かめなければ、きっと上手く戦うことなどできやしない。
「ごめん、ネク、ユニ、シェド。俺、行ってくるよ。みんなを……お願い!」
するとサンは、彼らに背を向け、フォレスの方向へ真っ直ぐに走っていった。シェドは、そんな彼の背中を見送った後、アラシたちに視線を向ける。
「さて、アラシとピグルだったか。まだ、戦えるか?」
「ああ、もちろんだ」
「当たり前だよ~」
ピグルとアラシは、決して消えぬ闘志をその目に込めて、シェドに視線を返す。シェドはそんな彼らの目を見て、微笑む。
「よし、それじゃあ、あいつら改造獣人の倒し方を教える。一緒に戦おう。この土地にゆかりはないが、俺たちにも、あいつの故郷を守らせてくれ」
「終わったよ。アラシ。とりあえずピグルを治療しようか」
サンは軽々と怪物を倒し、さして表情を変えることもなく、そう言葉をこぼした。アラシはそんな彼から溢れ出る強さを感じる。
――サン。お前、どれほど成長したんだよ。もうきっとフォンさんより強いんじゃないか。
「あ、ああ」
そうしてアラシはピグルを連れて一度建物の影に姿を顰めた。サンは、ピグルの腕に自身の炎をあてがいながら、アラシの方を見る。
「それでさ、アラシ。何があったんだ? わかることを教えてくれ」
「ああ、そうだな。さて、何から話そうか」
アラシは、深く息を吐いて、サンに彼が来る前に起きたことを話した。いつあの怪物たちがやってきたか。どうやってこの地に降り立ったか。何をしにきたと言っていたか。
サンは一通りアラシの話を聞くと、低く呟く。
「なるほど。となるともう30分以上は時間が経ってるのか。でもだったらおかしいな……」
アラシもなんとなく彼が言いたいことに察しがついていた。それについて彼の見解を述べようとした時、ピグルがサンの炎を受けて回復し、目を覚ます。
「あ、サンだ~。久しぶり~、元気だった?」
旅に出た時から変わらないのんびりとした笑顔にサンもつられて笑顔になる。
「ただいま、ピグル。元気だったよ」
「それはよかったな~。あれ? そういや、友達も来るって言ってなかった? どこいるの?」
「ああ、俺はみんなより先に来て、避難所の様子を見に来たんだ。でもそろそろみんな来る頃だとは思うんだけど」
サンがそう言葉を終わるや否や、サンと同じくらいの年齢と思われる頭に角を持った少年が、こちらに駆け寄ってきた。
「サン! よかった! 追いつきました!」
「あ、ユニ! お疲れ。シェドとネクは?」
「2人も2、3人の改造獣人と戦ってましたが、もうすぐ来ると思います! そんなに苦戦している様子はなかったので」
ユニがそう言葉を終えるや否や、彼が来た方向から獅子の獣人と、蛇の獣人がすぐに後に続いた。
「……やっと見つけた。サン。本当にいつも急に飛び出しすぎ」
「とりあえず商店街入り口付近の獣人は、4、5人ほど倒してきたぞ。それとそっちの2人はなんだ?」
シェドはピグルとアラシを見つめ、そう言葉をこぼす。真っ黒で迫力のある立髪だな。アラシとピグルはそう思う。自分達が関わってきたフォンさんはライオンになれるとは言えど立髪はなかったので、シェドのそれは彼らにとっても新鮮だった。
サンは、シェドの言葉を受け、2人を紹介する。
「ああ、紹介するよ! 2人はアラシとピグル。俺が昔いた施設フォレスに住んでるんだ。あ、それと2人にも紹介しないと。こっちはネク、シェド、ユニ。旅の途中に出会ったんだ」
「ああ、よろしく」
「よろしくね~」
アラシとピグルが3人を眺めてそう挨拶する。シェド達3人も2人に対して挨拶をした。
しかし、今は挨拶ばかりしている場合ではない。シェドは、2人へ軽く挨拶した後、サンに尋ねる。
「さて、サン。今はどういう状況か、分かるか」
「ああ、アラシから聞いた。とりあえず30分前ぐらいからハビボルと同じ感じで、大量の改造獣人が攻めてきたみたいだ。後多分レンシみたいに、こいつらのリーダーみたいな奴が2人いる」
「なるほどな。それならその2人を倒せば、ひとまずこいつらが獣人ばかり襲うことは無くなるか。ただ、それだとおかしいことがあるな」
「……うん」
「え、なんですか?」
シェドの言葉に静かに頷くサンに対し、疑問をこぼすユニ。シェドはそんな彼に対し一つため息をつく。
「いいか。ここスカイルにはサンの師匠ファルがいるって話は聞いていたろ。でも、今この騒動にも関わらず、その師匠は来ていない。ということはどういうことか分かるか、ユニ?」
「あ、向こうも攻撃を受けてる! てことは大変じゃないですか! サン! こんなとこにいないで、早く行かないと」
「でも……」
サンは周囲の様子を眺めて言葉をためらった。この場でもすでに十分な被害が出ている。それを、彼らに任せて向こうに助けに行ってもいいものだろうか。
「……大丈夫だよ。サン」
優しくそう言葉をかけたのはネクだった。彼女はサンの心を把握し、寄り添うように続ける。
「……ハビボルも、カニバルも、サンが守ってくれたから今がある。だからさ、今度は私たちにも、サンが大事にしてるものを守らせて欲しい。それはユニやシェドも同じ気持ち」
「はい! 全くです!」
「……まあ、間違ってはないな」
シェドとユニがネクに続く。ネクはそんな2人を見て優しく笑みを浮かべながら、サンに告げた。
「……ほら、だから行って。サン。向こうにさ、サンの大切な人が、たくさんいるんでしょ?」
その時サンの脳裏に、スアロやケイやファル、そして、クラウの顔が浮かぶ。そうだ。確かに自分は彼らの安否を確かめなければ、きっと上手く戦うことなどできやしない。
「ごめん、ネク、ユニ、シェド。俺、行ってくるよ。みんなを……お願い!」
するとサンは、彼らに背を向け、フォレスの方向へ真っ直ぐに走っていった。シェドは、そんな彼の背中を見送った後、アラシたちに視線を向ける。
「さて、アラシとピグルだったか。まだ、戦えるか?」
「ああ、もちろんだ」
「当たり前だよ~」
ピグルとアラシは、決して消えぬ闘志をその目に込めて、シェドに視線を返す。シェドはそんな彼らの目を見て、微笑む。
「よし、それじゃあ、あいつら改造獣人の倒し方を教える。一緒に戦おう。この土地にゆかりはないが、俺たちにも、あいつの故郷を守らせてくれ」
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