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夜の闇は日々を侵す
さあ始めようか! 決して泣き叫んでも終わることのない、獣人狩りを!
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ねぇピグルー。もっとゆっくりあるこーよー」
「やだよ。ついてくるな! さっきお前俺のこと見捨てて逃げただろ」
「しょうがないじゃないか~。あんな恐ろしい状態のクラウと対峙するくらいなら熊と相撲したほうがマシだよ~」
商店街の道を、スタスタと歩き進んでいくピグルとアラシ。彼らは料理に使う食べ物を買いに来ていた。サンが帰った時に盛大に迎えられるよう、今日はケイがご馳走を作るらしい。サンの仲間も一緒に来るということを聞いたこともあり、ケイもいつも以上に気合が入っている様子である。
「えっと、最初に行くのはハチさんとこの肉屋だったか。しっかし、痛いなぁ体。マジであいつ、あの細い体のどこからこんな力出してんだよ」
アラシは先ほどのクラウに打たれたところをさすりながら、ハチさんの肉屋の前に来た。ピグルもそんなアラシに追いつくとちょうどそのタイミングで、ハチが彼らに声をかけてくる。
「おお! きたのか、ピグルにアラシ! 今日もケイにたのまれたんだよな。何か探してるのか?」
相も変わらず気前のいい笑顔を浮かべるハチ。ちなみに、彼らがスアロとクラウをさらっていったパーツ商人であることを、スカイルの人は知らない。まずは、この環境で人の優しさに触れてほしい。そしてそこから、自分達がしたことにゆっくり向き合っていけばいい。それがファルの考えだったからだ。
ハチの純粋な笑顔に、アラシは少しの痛みを覚える。しかし、その痛みを隠すように笑みを浮かべながら、彼は言った。
「よお、ハチさん。相変わらず綺麗な羽だな。豚肉と牛肉を500グラムずつ頼みたいんだが、あるかい?」
「もちろんあるぜ! 最近やっと、カニバルの治安も回復してきたから、ようやく売れる値段になってきたしな。しかも、一か月前ぐらいからは、シーラの方の治安が悪くなってきて、相対的にうちの店は大繁盛だぜ」
「あ~だめだよ~ハチさ~ん。どこかの不幸を喜んじゃ~」
「そうだなぁ。でも最近景気も良くなってきたから嬉しくてよ。いやぁあぶなかったぜ。あのまま値段の高騰が続いてたら、近くの豚を肉に変えちまうところだった」
「こわ~。アラシ~、ハチさんがいじめる~」
商店街の彼らの優しさに触れても、変わらぬ笑顔を振りまくピグル。アラシはそんな自分の弟分を呆れた目で見つめながら思う。平和だ。かつて自分達がいた世界は、誰かから何かを奪わなければ生活などできなかった。しかし、今のこの場所なら、そんなことをしなくても生きていける。隣の誰かと憎み合うのではなく、共に笑い合うことができる。
「いいじゃないか。少し店に出荷してもらえよ? 最近また何キロか太ったんだろ?」
「ひどいよ~アラシ~。だって、フォレスのご飯美味しいんだもん」
「はっはっは。それはいいことだな。ケイに言ったら喜ぶんじゃないか」
「いつも言ってるよ~。ハチさん。そしたら、ピグルは失敗した料理でも美味しいって言うから作り甲斐がないってさ~」
「なんだそりゃ」
そう言って2人はまた笑顔を浮かべた。そんな様子を見てアラシもつられて笑顔になる。平凡だけどかけがえのない大切な日常。その風景には、どうしようもないくらいそんな当たり前の幸せに溢れていた。
しかし、そんな日常は、些細な蝶の羽ばたきでも、きっかけさえあれば崩れ落ちていく。
――ドシャァァァァン!
巨大で、確かな質量を持った何かが、上空から降り注いだ。とてつもない量の土煙がアラシとピグルの視界を遮る。
「何~何がいるっていうんだ~?」
ピグルがじっとその土煙の中に目を凝らす。アラシもまた、彼と同じように、その場所を見つめる。
すると、土煙が晴れて、その怪物は姿を現した。妙な姿だった。巨大な大鷲のような翼に、亀の甲羅が付いている。そしてやたらと長い首を伸ばして、その怪物は声を上げる。
「ギガガギガァァァァァ!!」
あまりの大声に、思わず耳を塞ぐピグルとアラシ。しかし、そんな彼らに構うことなく、厄災は、日々を侵食する。
――ドガァァン、ドガァァン!!
商店街のあちらこちらで、目の前の怪物と同じ、巨大な質量の塊が次々と落とされた。何が起きているのか全く周囲の状況を掴めないアラシとピグル、そんな彼らの瞳に、長い耳を持つ少年と、青髪の眼鏡の男が、空から翼の生えた獣人に捕まって降りてきたところが映った。その仲の長い耳を持つ少年は言う。
「やっぱダメだね。元から質量があるやつは、羽があっても飛べないや。やっぱり鳥人の体の作りって理に適ってるね。貧乳ばかりなだけある」
「下品ですよ。フーガ。それよりもとっとと臨戦態勢に移りなさい。ラキュラ様達が向こうの任務を果たしている分、私たちが頑張らなければいけないんですから」
「わかってるよーだ。ああ、楽しみだなぁ。この人たちと戦うの。さあ、始めようか! 決して泣き叫んでも終わることのない獣人狩りを!」
「やだよ。ついてくるな! さっきお前俺のこと見捨てて逃げただろ」
「しょうがないじゃないか~。あんな恐ろしい状態のクラウと対峙するくらいなら熊と相撲したほうがマシだよ~」
商店街の道を、スタスタと歩き進んでいくピグルとアラシ。彼らは料理に使う食べ物を買いに来ていた。サンが帰った時に盛大に迎えられるよう、今日はケイがご馳走を作るらしい。サンの仲間も一緒に来るということを聞いたこともあり、ケイもいつも以上に気合が入っている様子である。
「えっと、最初に行くのはハチさんとこの肉屋だったか。しっかし、痛いなぁ体。マジであいつ、あの細い体のどこからこんな力出してんだよ」
アラシは先ほどのクラウに打たれたところをさすりながら、ハチさんの肉屋の前に来た。ピグルもそんなアラシに追いつくとちょうどそのタイミングで、ハチが彼らに声をかけてくる。
「おお! きたのか、ピグルにアラシ! 今日もケイにたのまれたんだよな。何か探してるのか?」
相も変わらず気前のいい笑顔を浮かべるハチ。ちなみに、彼らがスアロとクラウをさらっていったパーツ商人であることを、スカイルの人は知らない。まずは、この環境で人の優しさに触れてほしい。そしてそこから、自分達がしたことにゆっくり向き合っていけばいい。それがファルの考えだったからだ。
ハチの純粋な笑顔に、アラシは少しの痛みを覚える。しかし、その痛みを隠すように笑みを浮かべながら、彼は言った。
「よお、ハチさん。相変わらず綺麗な羽だな。豚肉と牛肉を500グラムずつ頼みたいんだが、あるかい?」
「もちろんあるぜ! 最近やっと、カニバルの治安も回復してきたから、ようやく売れる値段になってきたしな。しかも、一か月前ぐらいからは、シーラの方の治安が悪くなってきて、相対的にうちの店は大繁盛だぜ」
「あ~だめだよ~ハチさ~ん。どこかの不幸を喜んじゃ~」
「そうだなぁ。でも最近景気も良くなってきたから嬉しくてよ。いやぁあぶなかったぜ。あのまま値段の高騰が続いてたら、近くの豚を肉に変えちまうところだった」
「こわ~。アラシ~、ハチさんがいじめる~」
商店街の彼らの優しさに触れても、変わらぬ笑顔を振りまくピグル。アラシはそんな自分の弟分を呆れた目で見つめながら思う。平和だ。かつて自分達がいた世界は、誰かから何かを奪わなければ生活などできなかった。しかし、今のこの場所なら、そんなことをしなくても生きていける。隣の誰かと憎み合うのではなく、共に笑い合うことができる。
「いいじゃないか。少し店に出荷してもらえよ? 最近また何キロか太ったんだろ?」
「ひどいよ~アラシ~。だって、フォレスのご飯美味しいんだもん」
「はっはっは。それはいいことだな。ケイに言ったら喜ぶんじゃないか」
「いつも言ってるよ~。ハチさん。そしたら、ピグルは失敗した料理でも美味しいって言うから作り甲斐がないってさ~」
「なんだそりゃ」
そう言って2人はまた笑顔を浮かべた。そんな様子を見てアラシもつられて笑顔になる。平凡だけどかけがえのない大切な日常。その風景には、どうしようもないくらいそんな当たり前の幸せに溢れていた。
しかし、そんな日常は、些細な蝶の羽ばたきでも、きっかけさえあれば崩れ落ちていく。
――ドシャァァァァン!
巨大で、確かな質量を持った何かが、上空から降り注いだ。とてつもない量の土煙がアラシとピグルの視界を遮る。
「何~何がいるっていうんだ~?」
ピグルがじっとその土煙の中に目を凝らす。アラシもまた、彼と同じように、その場所を見つめる。
すると、土煙が晴れて、その怪物は姿を現した。妙な姿だった。巨大な大鷲のような翼に、亀の甲羅が付いている。そしてやたらと長い首を伸ばして、その怪物は声を上げる。
「ギガガギガァァァァァ!!」
あまりの大声に、思わず耳を塞ぐピグルとアラシ。しかし、そんな彼らに構うことなく、厄災は、日々を侵食する。
――ドガァァン、ドガァァン!!
商店街のあちらこちらで、目の前の怪物と同じ、巨大な質量の塊が次々と落とされた。何が起きているのか全く周囲の状況を掴めないアラシとピグル、そんな彼らの瞳に、長い耳を持つ少年と、青髪の眼鏡の男が、空から翼の生えた獣人に捕まって降りてきたところが映った。その仲の長い耳を持つ少年は言う。
「やっぱダメだね。元から質量があるやつは、羽があっても飛べないや。やっぱり鳥人の体の作りって理に適ってるね。貧乳ばかりなだけある」
「下品ですよ。フーガ。それよりもとっとと臨戦態勢に移りなさい。ラキュラ様達が向こうの任務を果たしている分、私たちが頑張らなければいけないんですから」
「わかってるよーだ。ああ、楽しみだなぁ。この人たちと戦うの。さあ、始めようか! 決して泣き叫んでも終わることのない獣人狩りを!」
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