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そして影は立ち伸びる

俺を止めたかったらここに最強の男を呼んでこい

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 どれだけ敵を倒したのか、分からない。20を超えたあたりから数えることはやめた。サンは現在もレプタリアの刺客を次々と撃破し、真っ直ぐに本陣へと向かっていた。何度も攻撃を食らったことにより、衣服には血がべっとりとついている。しかし、彼の体自体は、フェニックスの再生能力で、傷一つ付いてはいない。

 そんな彼の目の前にまた、新たなるレプタリアの部隊が現れる。大きな体に、小さい目を携えた男は、サンを見て言葉を発し出す。

「よーくーもーやーっーてーくーれーたーなー。つーぎーはーおーれーたーちーがーあーいーてーだー」

 サンは、再び刀に炎を灯す。最初から出端を挫かれるわけにはいかない。サンは自らの最速の技をその隊長に向ける。

「いーくーぞーおーまーえーはーおーれーがー」
「話が長い!!」

そしてサンはおそらくオオサンショウウオの獣人と思われる彼の巨体を後方へ吹き飛ばす。その巨体に、彼の後ろにいた数人の部下も吹き飛ばされる。サンショウオ部隊のうちの一人がサンに向けて言葉を放つ。

「ひーきょーものーひーとーのーはーなーしーはーさーいーごーまーでーきーけー」
「なっがいんだよ!! 聞いて欲しけりゃもっと簡潔に話せ!!」

 サンは、5人ほどのサンショウオの軍勢にあえて飛び込む。そして、刀に炎を纏わせ、円形に回って刀を振るう。

「陽天流三照型、飛炎・日輪!!」

炎によって、円形に飛ばされる斬撃。それは、周囲の5人を巻き込んで一気に吹き飛ばす。よし、あと20人とちょっと。そうサンが改めて自身を奮い立たせた時、一本の矢が彼の肩に刺さる。

 ――ズドン、ズドン。

 そして間髪入れずに他の二つの矢も彼の両足に刺さる。後方に弓矢が控えている部隊だったらしい。しかしどうやら、急な襲撃で余裕がなかったらしく、カメレオンの時のように毒が塗ってあるわけではない。サンはそれをなんの躊躇いもなく素早く3本引き抜く。

「なーんーだーとーいーたーくーなーいーのーかー」


 ふとそんな声をもらした兵士にサンは刀を向ける。そして力強く言葉を発する。
「痛くねぇよ! こんなのなぁ、家族のために戦って何もできなかったジャカルの痛さに比べたらどこも痛くねぇ! 俺を止めたかったらここに最強の男を呼んでこい! お前らの隊長を今この場に連れてこい!!」
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