52 / 214
そして影は立ち伸びる
毒を喰らった俺の方がまだ強い
しおりを挟む
「シェド! サン! 危ない!」
ネクはふと、自分たちの右側を見て、そう声を発する。何が危ないのかわからなかったがシェドとサンは、咄嗟にその場から離れた。
――ビュンッッッ。
二本の矢が音を上げて、サンとシェドの腕を掠める。ポタポタと流れる血。危なかった。あのままあの位置にいたら、直撃だった。
「なるほど、やはり蛇の目を持つあなたには気付かれてしまいましたか」
すると、何もないところからヌッと、幾多もの獣人が現れた。ぎょろぎょろとした目をこちらに向け、彼らはニヤニヤと笑っている。緑色の鱗。グルグルの尻尾。シェドが彼らを見て、絞るような声で呟く。
「お前は、カメレオン部隊隊長。カレオン」
「いかにも、私はレプタリア諜報部カメレオン隊隊長、インビジブルキラーカレオンです。いやぁ、あのカニバル軍最強と言われるシェドさんに覚えてもらえるなんで、私は幸せ者ですよ」
恭しく頭を下げるカレオンという男。なるほど、先ほどまで見えなかったのはカメレオンの変色能力を使ったからか。サンは頭を巡らせる。きっとサンたちがここに来ることを見越してすでに山に潜んでいたんだ。ネクだけ視認することができたのは、ヘビの目は他の動物とは違い、温度で周りのものを認識するような作りになっているからだろう。
シェドはカメレオン部隊を見て、サンたちに対し指示を下す。
「全員一旦引くぞ。ベアリオに作戦が失敗したことを伝えなきゃならない。それに、敵本陣に近いこの場で相手と戦うのは分がわるい!」
「分かった!」
「……うん、分かった」
「分かりました!」
みんなそれぞれシェドの指示に返事をし、山を駆け降りようとする4人。しかし、サンの体にかすかな、痺れのようなものが走る。
「ぐっあぁぁっ」
唐突に足に力が入らず、勢いよく転げるサン。シェドは唐突にぴたりと足を止める。そして、カレオンの方を向いて、静かに聞く。
「おい、お前。あの矢に何が塗ってあった?」
カレオンはニヤリと笑って答える。
「流石、何年間もこのレプタリアと戦っているだけある。そうです。先程打ち出した矢に、我が猛毒部隊コブラ隊から抽出した神経毒を塗らせてもらいました。まあ掠った程度でしたので、日頃から毒が効かないようにしているあなたには効果がなかったようですが、そちらの彼は耐性がなかったようですね」
「なるほどな。おい、ネク! ジャカル! お前らは先に戻っていろ。あいにく俺も多少痺れがあるから速くは走れない。だから俺はこいつらを片付けてから行く」
「でも隊長、大丈夫ですか? 相手は10人ほどいるし、毒も喰らっている。流石の隊長もきついのでは?」
「ちげぇよジャカル。今ここで想定しうる最悪の状況は、カニバル軍が、この作戦の成否が分からないまま、戦争を続けて敗北することだ。俺たちはそれだけは防がなければならない。だから早く行け!」
「でも!」
振り向き走り出さないジャカルに対し、ネクが彼の腕を掴む。
「行こう、ジャカル。シェドなら大丈夫。私たちは私たちができることをしよう。シェド、念のためあれポーチごと置いておくから」
「・・・・・・ああ、わかった」
そして、そのまま走り出すジャカルとネク。カレオンはそんな彼らを追いかけることなく見送っていた。シェドは、そんな彼に言葉を発する。
「なんだよ、追わなくていいのか?」
「まあいいでしょう。あの二人の首を持っていくより、あなたの一人の首の方が遥かに価値がある。にしても随分間抜けですね。毒の回ったあなた一人で、このカメレオン部隊全員を裁き切ることができると、本当に思っているんですか?」
そんなカレオンに、シェドは冷静に言葉を返す。
「当たり前だろ? 貴様たちでくの棒が10人力を合わせるより、毒を喰らった俺の方がまだ強い。疑うなら試してみるか? お前にそんな度胸があるならな」
「なめられたものですね。お前ら、そこの毒に倒れている男は後回しです。複数で確実にこいつを殺して差し上げましょう」
ネクはふと、自分たちの右側を見て、そう声を発する。何が危ないのかわからなかったがシェドとサンは、咄嗟にその場から離れた。
――ビュンッッッ。
二本の矢が音を上げて、サンとシェドの腕を掠める。ポタポタと流れる血。危なかった。あのままあの位置にいたら、直撃だった。
「なるほど、やはり蛇の目を持つあなたには気付かれてしまいましたか」
すると、何もないところからヌッと、幾多もの獣人が現れた。ぎょろぎょろとした目をこちらに向け、彼らはニヤニヤと笑っている。緑色の鱗。グルグルの尻尾。シェドが彼らを見て、絞るような声で呟く。
「お前は、カメレオン部隊隊長。カレオン」
「いかにも、私はレプタリア諜報部カメレオン隊隊長、インビジブルキラーカレオンです。いやぁ、あのカニバル軍最強と言われるシェドさんに覚えてもらえるなんで、私は幸せ者ですよ」
恭しく頭を下げるカレオンという男。なるほど、先ほどまで見えなかったのはカメレオンの変色能力を使ったからか。サンは頭を巡らせる。きっとサンたちがここに来ることを見越してすでに山に潜んでいたんだ。ネクだけ視認することができたのは、ヘビの目は他の動物とは違い、温度で周りのものを認識するような作りになっているからだろう。
シェドはカメレオン部隊を見て、サンたちに対し指示を下す。
「全員一旦引くぞ。ベアリオに作戦が失敗したことを伝えなきゃならない。それに、敵本陣に近いこの場で相手と戦うのは分がわるい!」
「分かった!」
「……うん、分かった」
「分かりました!」
みんなそれぞれシェドの指示に返事をし、山を駆け降りようとする4人。しかし、サンの体にかすかな、痺れのようなものが走る。
「ぐっあぁぁっ」
唐突に足に力が入らず、勢いよく転げるサン。シェドは唐突にぴたりと足を止める。そして、カレオンの方を向いて、静かに聞く。
「おい、お前。あの矢に何が塗ってあった?」
カレオンはニヤリと笑って答える。
「流石、何年間もこのレプタリアと戦っているだけある。そうです。先程打ち出した矢に、我が猛毒部隊コブラ隊から抽出した神経毒を塗らせてもらいました。まあ掠った程度でしたので、日頃から毒が効かないようにしているあなたには効果がなかったようですが、そちらの彼は耐性がなかったようですね」
「なるほどな。おい、ネク! ジャカル! お前らは先に戻っていろ。あいにく俺も多少痺れがあるから速くは走れない。だから俺はこいつらを片付けてから行く」
「でも隊長、大丈夫ですか? 相手は10人ほどいるし、毒も喰らっている。流石の隊長もきついのでは?」
「ちげぇよジャカル。今ここで想定しうる最悪の状況は、カニバル軍が、この作戦の成否が分からないまま、戦争を続けて敗北することだ。俺たちはそれだけは防がなければならない。だから早く行け!」
「でも!」
振り向き走り出さないジャカルに対し、ネクが彼の腕を掴む。
「行こう、ジャカル。シェドなら大丈夫。私たちは私たちができることをしよう。シェド、念のためあれポーチごと置いておくから」
「・・・・・・ああ、わかった」
そして、そのまま走り出すジャカルとネク。カレオンはそんな彼らを追いかけることなく見送っていた。シェドは、そんな彼に言葉を発する。
「なんだよ、追わなくていいのか?」
「まあいいでしょう。あの二人の首を持っていくより、あなたの一人の首の方が遥かに価値がある。にしても随分間抜けですね。毒の回ったあなた一人で、このカメレオン部隊全員を裁き切ることができると、本当に思っているんですか?」
そんなカレオンに、シェドは冷静に言葉を返す。
「当たり前だろ? 貴様たちでくの棒が10人力を合わせるより、毒を喰らった俺の方がまだ強い。疑うなら試してみるか? お前にそんな度胸があるならな」
「なめられたものですね。お前ら、そこの毒に倒れている男は後回しです。複数で確実にこいつを殺して差し上げましょう」
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
千年巡礼
石田ノドカ
ファンタジー
妖怪たちの住まう世界に、一人の少年が迷い込んだ。
見た事もない異形の蔓延る世界だったが、両親の顔を知らず、友人もいない少年にとって、そこは次第に唯一の楽しみへと変わっていった。
そんなある日のこと。
少年はそこで、友達の咲夜を護る為、命を落としてかけてしまう。
幸い、咲夜の特別な力によって一命は取り留めたが、その過程で半妖となってしまったことで、元居た世界へは帰れなくなってしまった。
『方法はないの?』
方法は一つだけ。
妖たちの宿敵である妖魔の長、『酒吞童子』を、これまでと同じ『封印』ではなく、滅することのみ。
『ぼく、こんどこそ、さくやさまをまもるヒーローになる!』
そんな宣言を、仲の良かった妖らは馬鹿にもしたが。
十年の修行の末——
青年となった少年は、妖たちの住まう国『桜花』を護るための部隊へ所属することとなる。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
異世界国盗り物語 ~野望に燃えるエーリカは第六天魔皇になりて天下に武を布く~
ももちく
ファンタジー
天帝と教皇をトップに据えるテクロ大陸本土には4つの王国とその王国を護る4人の偉大なる魔法使いが存在した
創造主:Y.O.N.Nはこの世界のシステムの再構築を行おうとした
その過程において、テクロ大陸本土の西国にて冥皇が生まれる
冥皇の登場により、各国のパワーバランスが大きく崩れ、テクロ大陸は長い戦国時代へと入る
テクロ大陸が戦国時代に突入してから190年の月日が流れる
7つの聖痕のひとつである【暴食】を宿す剣王が若き戦士との戦いを経て、新しき世代に聖痕を譲り渡す
若き戦士は剣王の名を引き継ぎ、未だに終わりをしらない戦国乱世真っ只中のテクロ大陸へと殴り込みをかける
そこからさらに10年の月日が流れた
ホバート王国という島国のさらに辺境にあるオダーニの村から、ひとりの少女が世界に殴り込みをかけにいく
少女は|血濡れの女王《ブラッディ・エーリカ》の団を結成し、自分たちが世の中へ打って出る日を待ち続けていたのだ
その少女の名前はエーリカ=スミス
とある刀鍛冶の一人娘である
エーリカは分不相応と言われても仕方が無いほどのでっかい野望を抱いていた
エーリカの野望は『1国の主』となることであった
誰もが笑って暮らせる平和で豊かな国、そんな国を自分の手で興したいと望んでいた
エーリカは救国の士となるのか?
それとも国すら盗む大盗賊と呼ばれるようになるのか?
はたまた大帝国の祖となるのか?
エーリカは野望を成し遂げるその日まで、決して歩みを止めようとはしなかった……
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ポンコツなおっさんに今更ながら異世界に召喚されてしまった。
accstc
ファンタジー
周りに響く女子の話声をなるべく聞かない様に俺は通路の端を歩きながら昨日読んだ小説の最後を思い出していた。
まさかあそこで新しいチート技が発動するとはなぁ、やっぱ異世界へ転生転移した人間がチート級の活躍する話は面白いよ。
男なら一回は体験してみたいって思うだろうし!
まぁだけど最近はその異世界転生/転移ブームも下火になってきたかもな。 昨日の作品も面白かった割にはそこまで人気は無さそうだったし。
異世界転生系の小説はもうやり尽くした感あると思ってたし、この流れも仕方ないかな?
……それとも、もうみんな異世界に行きたいってそれ程思わなくなっちゃたのかな??
もしそうなら少し悲しい気持ちになるな。
「いや、まだまだこれからだろ! きっとまた人気になるさ!!」
目的の場所についた俺は誰にも聞こえない様に小さく呟き、目の前の扉をあける。
異世界は面白い。
この日まで俺は本気でそう思っていた。
※本作は異世界転移小説ですが聖女、占い、悪役令嬢、ざまぁ、チート、ハーレム、異世界転生がお好きな方には一部不快な表現があると思います。
基本的にはキャラの思想ですのでご理解下さい。
勿論私は全部好きです……。それでも宜しければ是非ご愛読よろしくお願いします!
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる