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目に映るこの世の全てを、照らしたいんだ

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――過去――

 少年は、唖然としていた。目の前の現実を彼はどう受け入れればいいのか、彼にはわからなかった。

 今から数年前、親を失った彼は、ある組織にさらわれた。それは、獣のパーツを分解し、高値で売り払う大きな組織。少年は、ただ死ぬことが嫌で、必死で組織に命乞いをした。その結果、獣の恩恵から、他の獣より遥かに力がある彼は、それで役に立つことを示し、そのパーツ売買組織で腕を振るうことになった。

 そして少年は、それから数年経ち、この100人規模の大規模な組織でも十分な成果を上げられるほどに成長した。しかし――。

 その組織は今たった6人に今、滅ぼされていた。

 自分とそれほど変わらぬ、歳の獣人たちもいる一味だった。ライオン、ペガサス、妖精族、オオカミ、ハヤブサ、そしてフェニックス。自分たち組織の悪行に憤った彼らは、たった6人でこの組織を壊滅状態まで追いやっていた。

「おい、まだあそこに一人残ってるぞ」

とオオカミ。

「どけよ、俺がやる。こいつらボコボコにしてやらないと気が済まない」

とライオン。

「まあ、落ち着けよ。よく見たら俺と同じくらいみたいだぞ」

 とハヤブサ。

「わかった! みんな退がってて私がやる!」

とフェニックス。この6人のリーダーと思われる彼女は、刀を構える。

 来る、少年は警戒し、自らも自分の武器である大剣を構える。

「ねえ、あなたはなんでこんなところで戦ってるの?」 

 ふと、彼女は自分に対してそう尋ねた。少年は正直に答える。

「生きるためだよ。死なないためにこうするしかなかった」
「他に方法はなかったの?」
「ねえよ、他に方法なんて誰にも教えてもらえなかった。俺は、あんたたちみたいに才能に恵まれたわけじゃないんでね!」

少年はフェニックスに大きく斬りかかる。彼女はそれを平然と受け止める。少年は、武器を通して、彼女に言葉をぶつける。

「文句があるなら俺のことを殺せばいい! 今まで沢山のものを奪ってきたんだ。強いやつに奪われるなら本望だよ!」
「私はあなたを殺さないよ」
「は?」

 彼女の発言に戸惑い咄嗟に距離を取る少年。そんな彼に、彼女は続ける。

「だって君優しそうだもん。きっと、これしか生きる方法を知らなかったんでしょ。なら、やり直せるよ」
「は、お前に何がわかる!? 無理なんだよ! 俺にはもうこの生き方しか見つけられねえんだ!」
「大丈夫! 今から変わるんだよ! だってさ、もし君に家族ができた時に、大切な人に誇れない生き方なんてしたくないだろ?」

 少年は、そんな彼女の言葉を鼻で笑い飛ばす。

「はっ。馬鹿言うなよ。そんな言葉一つで俺の生き方を変えられると思ってんのかよ? いいか、馬鹿女! よく聞け! お前みたいなやつが、誰かを、何かを、変えられるわけねえんだ! うぬぼれんじゃねえよ!!」

 すると、彼女の刀に僅かな緩みが感じ取れた。すると彼女は、一度大きく退き、彼に対して、言葉をこぼす。

「そうかもしれないね。私じゃ何も変えられないのかもしれない」
「そうだろ! お前なんてな! たかが、こんな組織一つ潰すのが限界なんだよ!」

 好奇とばかりに足を踏み出し、再び彼女に斬りかかる少年。しかし、彼女は再び力強く彼の剣を受け止め、彼に少しの笑みを浮かべる。

「でも私は、決めたんだ。道の真ん中を歩くときは奴らとすれ違うことを恐れ、光の下では彼らに見つから事を恐れ、常に日陰にこもって暮らしている。私たち獣人は何一つ悪いことなんてしてないのに。私は.そんな世界を変えたいんだよ。ねえ、君、私はね。私は本気で、目に映るこの世の全てを、照らしたいんだ」

 死の淵には、生きてきた全ての記憶が、走馬灯のように駆け巡ると言う。しかし、彼は、今この一瞬脳裏に浮かんだこの記憶を、心の中で強く憎んだ。

 ――今思い出すことが、どうしてこれなんだよ。

 彼の体は燃え上がり、幾多もの火傷の跡が残っている。そして、長い距離を飛ばされたために、体の中外問わず、ボロボロだ。

 しかし、そんな中でも、彼は、ピクリと、己の指を動かすのだった。
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