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第一章
訓練生
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登校して教室ではなく、まずは職員室へと向かった。職員室で担任に今日の予定を確認すると、午後から軍の担当者が来て今後の予定を説明してくれるらしく、午前中は普通に授業を受ける事になった。
教室に入り席に着くと、友人達が誕生日を祝う言葉を掛けてくれた。感謝の言葉を返して、魔弾師として覚醒した事を伝えると、「よろしくな、我らの剣」「任せたぜ、我らの剣」と言って、もてはやしてくれる。「我らの剣」と言うのは、魔弾師の宣誓からくる言葉だ。暗い雰囲気を出さないのも、毎年学校から出る一人か二人の覚醒者をクラスの者が中心となって賑やかに送り出すのが慣例となっているからだった。
ホームルームの時間には校内放送で魔弾師として覚醒した事が発表された。一年生と二年生の時には、先輩の覚醒を放送で聞いていたのだが、自分の事で放送されると、「これは少し照れるな」と思ってしまった。
午前中の授業の間の休み時間は、別のクラスにいる友人達の相手をしているうちに終わってしまった。昼食の時には、友人達からお祝いにと言って大量のジュースをもらい、「こんなに飲めるかっ」と軽口を言い合って騒いだ。
午後になり、応接室で軍の担当者から今後の予定について話を聞いた。
所属は皇都北部魔導師団で、明日から訓練施設で訓練生として過ごす事になった。説明に来た担当者から、しばらくすれば実際に黒幻との戦闘にも参加するが、訓練生の間はよほどの非常事態が起こらない限りは最前線に出る事も無いし、まずは戦場に慣れる所から始めて、徐々に進めていくので、安心してほしいと説明を受けた。ちなみに土日は休日となっていて、外出も出来るし、申請すれば、自宅への外泊も許可されるらしい。
一通りの説明が終わり、必要書類を受け取った所で、「何か質問はありますか?」と尋ねられたが、「特に思い付きません」と返すと、担当者は「疑問があれば、いつでも担当教官に質問して下さい」と言って、帰って行った。
軍の担当者が帰り、少し気を抜いていると、応接室に担任が入って来た。
「お疲れさん。準備もあるだろうし、今日はもう帰っていい。席はそのままにしておくから、今日持ち帰れない荷物は時間を見て取りにくればいい」
「了解です。お世話になりました」
「あぁ、次に会うのは卒業式になるか・・・卒業式には必ず来い。死ぬなよ・・・」
「気を付けます。妹にもいろいろと約束をさせられましたから、死ねませんので」
「そうか・・・元気でな」
「はい、先生もお元気で」
短い会話であったが、心配してくれているのは分かった。応接室を出て帰路に就く。道すがら「卒業式か、死ねない理由が増えたな」と思うのであった。
家に帰り着き、必要なものを準備していると、母が帰って来た。買い物袋を持っているので買い物に行っていたようだ。そこからは母が手伝ってくれた事もあって、準備はスムーズに終わった。準備をしながら説明された事を母にも教えた。申請すれば、土日は家に戻って来れる事を知ると、毎週必ず帰って来るようにと、泣き付かれてしまった。心配してくれているのは分かっているので、何もなければなるべく帰って来ると約束をした。なるべくの部分が気に入らないらしく、それについて話をしている間に下校時刻を過ぎていたようで、穂香も帰宅した。わが意を得たりと、母は穂香を味方に付けて、説得に参加させてしまう。二人の説得と言うよりは泣き落としに近い攻勢を受けて、なるべくと言う文言は棄却され、何もなければ必ず帰って来ると約束させられてしまった。
翌朝指定された時間より少し前に、訓練施設へとたどり着いた。施設の入口で昨日受け取った臨時パスを見せると、担当者が来るので待つように指示された。
しばらく待っていると、昨日学校に説明に来てくれた担当者が迎えに現れた。
担当者の案内で、まずは寮に荷物を置き、そのまま身体測定、制服等のサイズ合わせを行った。その後、施設の案内を受けた所で午前中は終わってしまった。
昼食を済ませて寮に戻り、受け取った訓練服に着替えてから訓練場へと向かう。まずは一緒に訓練をする事になる仲間との顔合わせをする事になっている。
訓練生は現在三人居ると昼食中に教えてもらった。五月の現在では同学年は一人だけで、残りの二人は学年的には一つ上で、覚醒が遅かった面々だ。訓練場には既に全員が整列していて、案内をしてくれた担当者に連れられて実技の担当教官に紹介された。教官との引き継ぎを済ませると、これまで案内をしてくれた担当者は自分の任務へと戻って行った。
教官に促されて、まずは簡潔に自己紹介をという事になった。
それぞれが簡潔に名前とよろしくと言うだけの簡単な自己紹介が終わり、少し待つように言われて待っていると、先任の訓練生達はそれぞれが教官に与えられている課題に取り組み始めた。
「待たせたな。まずは訓練の説明をする」
そう言って、教官は指を差しながら訓練の説明を始めた。
最初に行うのは魔弾の形成訓練だ。魔弾の初期状態は、発動すると球体に棘が付いたような状態となっている。これを発動するだけなら、魔弾師に覚醒した時点で誰でもできる。だがその状態では不十分ですぐに消えてしまう。その為まずは、素早くしっかりと定着するイメージで形成するという工程の訓練を行う。形成がしっかりしてくると、魔弾の形は棘が無くなり、ほぼ球体となる。この形成が甘いと威力も低くなってしまうので、基礎中の基礎であり、最も大事な訓練であると説明を受けた。最低でも棘が無くなるまではこの訓練をする事になる。今この訓練をしているのは同期の一人だけであった。
しっかりと形成できるようになったら、次に行うのが射撃訓練だ。射撃訓練では、直射と曲射の二種類の射撃を行う。先輩の一人がこの訓練をしていた。
的に対しての命中率がある程度上がった所で、次に行うのが収束訓練だ。複数の魔弾を収束して高威力の魔弾、通称収束魔弾を作り出す訓練である。収束魔弾の最大収束率は保有魔力量の五十パーセントが限界と言われていて、限界値を超えて収束しようとすると暴発してしまうので注意するようにとも説明を受けた。この訓練をしているのは一人で、もうすぐ訓練を終えて正式に配属される予定である事も教えてくれた。
最後にもう一つ全弾発射と言われる攻撃方法があると説明を受けた。保有魔力量に応じた一斉射撃を行うもので、発動だけなら魔弾師として覚醒した時点で誰でも出来るが、射撃訓練である程度コントロール出来るようになるまでは使用禁止を言い渡された。
説明が終わると、形成訓練をしている同期の傍へと移動して、そのまま形成訓練に移った。
「けっ、消して、もう一度」
定着するイメージを想像するのに少し考える為の時間は掛かったが、最初からきれいな球体を作り出した。それに驚いた教官によって、再度形成するようにと言う指示が出た。
「合格、だな・・・発射訓練に移れ」
再度作り出された球体を見た教官に、射撃訓練へのステップアップの指示を出されて移動した。
合格を言い渡した教官は困惑していた。形成訓練は、早い者で数日、遅い者でも二週間あれば何とか出来るというものである。数日で合格した者は、現役の将官達が居る。過去には居たのかもしれないが、少なくとも教官自身は見た事も聞いた事も無かった。「とりあえず、上に報告しておくか」と考えて、訓練を続けるように指示を出して報告に向かった。
教室に入り席に着くと、友人達が誕生日を祝う言葉を掛けてくれた。感謝の言葉を返して、魔弾師として覚醒した事を伝えると、「よろしくな、我らの剣」「任せたぜ、我らの剣」と言って、もてはやしてくれる。「我らの剣」と言うのは、魔弾師の宣誓からくる言葉だ。暗い雰囲気を出さないのも、毎年学校から出る一人か二人の覚醒者をクラスの者が中心となって賑やかに送り出すのが慣例となっているからだった。
ホームルームの時間には校内放送で魔弾師として覚醒した事が発表された。一年生と二年生の時には、先輩の覚醒を放送で聞いていたのだが、自分の事で放送されると、「これは少し照れるな」と思ってしまった。
午前中の授業の間の休み時間は、別のクラスにいる友人達の相手をしているうちに終わってしまった。昼食の時には、友人達からお祝いにと言って大量のジュースをもらい、「こんなに飲めるかっ」と軽口を言い合って騒いだ。
午後になり、応接室で軍の担当者から今後の予定について話を聞いた。
所属は皇都北部魔導師団で、明日から訓練施設で訓練生として過ごす事になった。説明に来た担当者から、しばらくすれば実際に黒幻との戦闘にも参加するが、訓練生の間はよほどの非常事態が起こらない限りは最前線に出る事も無いし、まずは戦場に慣れる所から始めて、徐々に進めていくので、安心してほしいと説明を受けた。ちなみに土日は休日となっていて、外出も出来るし、申請すれば、自宅への外泊も許可されるらしい。
一通りの説明が終わり、必要書類を受け取った所で、「何か質問はありますか?」と尋ねられたが、「特に思い付きません」と返すと、担当者は「疑問があれば、いつでも担当教官に質問して下さい」と言って、帰って行った。
軍の担当者が帰り、少し気を抜いていると、応接室に担任が入って来た。
「お疲れさん。準備もあるだろうし、今日はもう帰っていい。席はそのままにしておくから、今日持ち帰れない荷物は時間を見て取りにくればいい」
「了解です。お世話になりました」
「あぁ、次に会うのは卒業式になるか・・・卒業式には必ず来い。死ぬなよ・・・」
「気を付けます。妹にもいろいろと約束をさせられましたから、死ねませんので」
「そうか・・・元気でな」
「はい、先生もお元気で」
短い会話であったが、心配してくれているのは分かった。応接室を出て帰路に就く。道すがら「卒業式か、死ねない理由が増えたな」と思うのであった。
家に帰り着き、必要なものを準備していると、母が帰って来た。買い物袋を持っているので買い物に行っていたようだ。そこからは母が手伝ってくれた事もあって、準備はスムーズに終わった。準備をしながら説明された事を母にも教えた。申請すれば、土日は家に戻って来れる事を知ると、毎週必ず帰って来るようにと、泣き付かれてしまった。心配してくれているのは分かっているので、何もなければなるべく帰って来ると約束をした。なるべくの部分が気に入らないらしく、それについて話をしている間に下校時刻を過ぎていたようで、穂香も帰宅した。わが意を得たりと、母は穂香を味方に付けて、説得に参加させてしまう。二人の説得と言うよりは泣き落としに近い攻勢を受けて、なるべくと言う文言は棄却され、何もなければ必ず帰って来ると約束させられてしまった。
翌朝指定された時間より少し前に、訓練施設へとたどり着いた。施設の入口で昨日受け取った臨時パスを見せると、担当者が来るので待つように指示された。
しばらく待っていると、昨日学校に説明に来てくれた担当者が迎えに現れた。
担当者の案内で、まずは寮に荷物を置き、そのまま身体測定、制服等のサイズ合わせを行った。その後、施設の案内を受けた所で午前中は終わってしまった。
昼食を済ませて寮に戻り、受け取った訓練服に着替えてから訓練場へと向かう。まずは一緒に訓練をする事になる仲間との顔合わせをする事になっている。
訓練生は現在三人居ると昼食中に教えてもらった。五月の現在では同学年は一人だけで、残りの二人は学年的には一つ上で、覚醒が遅かった面々だ。訓練場には既に全員が整列していて、案内をしてくれた担当者に連れられて実技の担当教官に紹介された。教官との引き継ぎを済ませると、これまで案内をしてくれた担当者は自分の任務へと戻って行った。
教官に促されて、まずは簡潔に自己紹介をという事になった。
それぞれが簡潔に名前とよろしくと言うだけの簡単な自己紹介が終わり、少し待つように言われて待っていると、先任の訓練生達はそれぞれが教官に与えられている課題に取り組み始めた。
「待たせたな。まずは訓練の説明をする」
そう言って、教官は指を差しながら訓練の説明を始めた。
最初に行うのは魔弾の形成訓練だ。魔弾の初期状態は、発動すると球体に棘が付いたような状態となっている。これを発動するだけなら、魔弾師に覚醒した時点で誰でもできる。だがその状態では不十分ですぐに消えてしまう。その為まずは、素早くしっかりと定着するイメージで形成するという工程の訓練を行う。形成がしっかりしてくると、魔弾の形は棘が無くなり、ほぼ球体となる。この形成が甘いと威力も低くなってしまうので、基礎中の基礎であり、最も大事な訓練であると説明を受けた。最低でも棘が無くなるまではこの訓練をする事になる。今この訓練をしているのは同期の一人だけであった。
しっかりと形成できるようになったら、次に行うのが射撃訓練だ。射撃訓練では、直射と曲射の二種類の射撃を行う。先輩の一人がこの訓練をしていた。
的に対しての命中率がある程度上がった所で、次に行うのが収束訓練だ。複数の魔弾を収束して高威力の魔弾、通称収束魔弾を作り出す訓練である。収束魔弾の最大収束率は保有魔力量の五十パーセントが限界と言われていて、限界値を超えて収束しようとすると暴発してしまうので注意するようにとも説明を受けた。この訓練をしているのは一人で、もうすぐ訓練を終えて正式に配属される予定である事も教えてくれた。
最後にもう一つ全弾発射と言われる攻撃方法があると説明を受けた。保有魔力量に応じた一斉射撃を行うもので、発動だけなら魔弾師として覚醒した時点で誰でも出来るが、射撃訓練である程度コントロール出来るようになるまでは使用禁止を言い渡された。
説明が終わると、形成訓練をしている同期の傍へと移動して、そのまま形成訓練に移った。
「けっ、消して、もう一度」
定着するイメージを想像するのに少し考える為の時間は掛かったが、最初からきれいな球体を作り出した。それに驚いた教官によって、再度形成するようにと言う指示が出た。
「合格、だな・・・発射訓練に移れ」
再度作り出された球体を見た教官に、射撃訓練へのステップアップの指示を出されて移動した。
合格を言い渡した教官は困惑していた。形成訓練は、早い者で数日、遅い者でも二週間あれば何とか出来るというものである。数日で合格した者は、現役の将官達が居る。過去には居たのかもしれないが、少なくとも教官自身は見た事も聞いた事も無かった。「とりあえず、上に報告しておくか」と考えて、訓練を続けるように指示を出して報告に向かった。
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