俺は猫であり父である

佐倉さつき

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第4章 娘は大人の階段を上り中?

ダイエットの敵

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夏休みの誘惑を我慢して断ち切り、ひたすら勉強に励んだ明莉。
努力の成果が出たのか、二学期に入って成績が上がった。
しかし、それでもA高校に合格できるかどうかは、五分五分だった。
先生からは、この調子ならA高校を受験してもいいと言われたが、ダメだった時のことも考えておくように言われた。
また、この調子なら合格できるかもしれないが、気を抜いたらアウトなので、引き続き勉強に集中するようにも言われた。




「ママ、お菓子がなくなったらから、今度、買ってきてほしいんだけど・・・」
夕食のためにダイニングに降りてきた明莉が言った。
「えー、もうなくなったの?この間、たくさん買ってきたのに・・・」
妻は、驚いている。
妻が驚くのも仕方がない。
この前の日曜日に、妻は明莉のために大量のお菓子を買いこんできたばかりだ。
今日は、まだ木曜日の夜。
次の日曜日まで、二日ちょっとある。

「勉強するのにエネルギーを使うから、頭が糖分をほしがるんだよね。お願い。」
「でも、食べすぎよ。太って制服が着れなくなっても知らないわよ。」
「うっ・・・。気にしてるのに、ひどい。」
たしかに、最近、明莉が横にだけ一回り大きくなったような気がする。
「前は部活で体を動かしていたから痩せていたけど、部活をやめてから体を動かすこともなくなったでしょう。それで大量のお菓子を食べていたら、太るのは当たり前でしょう。関取にでもなるつもり?」
「関取って・・・ママって、すごい毒を吐くよね・・・」
「あら、私は明莉の体のことを心配して言ってるのよ。痩せすぎもいけないけど、太るのはいろいろな病気の原因になるのよ。ひどいことを言われたら、太らないようにしようと思うでしょう。」
「まあね。ちょっとは我慢するようにします・・・」

今までは明莉の方が帰ってくるのが早いので、明莉が夕食を作って先に食べていることが多かった。
しかし、明莉が受験勉強に集中するようになってからは、帰りが遅くても妻が夕食を作るようになった。
明莉が勉強できる時間を少しでも多くとれるようにしてあげたいと思ったからだ。
ただ、妻も仕事が忙しく、早く帰ってくることが難しい時もある。
そういう時には、明莉が帰宅してから夕食までの時間が長くなり、お菓子の消費量も増えてしまう。
その後も、お菓子をめぐる攻防は繰り返されていた。



それに、季節は秋冬。
実りの秋、食欲の秋と言われるくらい、美味しい物がいっぱいある季節。
「今日は特別なの。」「ご褒美なの。」と言って、美味しい物を買ってくる妻。
そして、必ず「一生に食べよう。」と明莉を誘う。
「ママって、私を太らせようとしてるよね。」
妻が買ってきた焼いもを食べながら明莉が言った。
「だって、いい匂いがしてたのよ。焼いもの匂いがしたら、秋だなって思うでしょう。明莉に季節感を感じてほしかったのよ。」
言い訳のように聞こえる・・・自分が食べたかっただけなんじゃ・・・
「ありがとう。秋って、お腹が減るよね。」
「そうね、暗くなると、ひもじくなるわね。動物だって、冬に備えて栄養を蓄えようとするしね、しょうがないんじゃないの。」
「そうだよね。人間だって動物だもんね。」
二人とも熊じゃないんだから・・・

そして食べた後には必ず、体重計が置いてある脱衣場から「ヤバい」という声が二回聞こえてくるのだった。
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