俺は猫であり父である

佐倉さつき

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第2章 俺は天才?

テレビ(2)

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「どうしたらいいかな?」
俺は、遠くからテレビを見つめ、悩んでいた。
先日、たまたま明莉がつけた動物番組を見て、俺は普通の子猫の生活について学ぶことができた。
できることなら続けて見て、もっと勉強したいのだが・・・

俺は、猫。
「テレビを見たい」と言うことはできない。
足でリモコンの電源ボタンを押してみるか・・・
うまく押せるかな?
爪を使えば、何とかなるかもしれない。
だけど、リモコンに傷がつくかな?
それに押せたとしても、動物番組の時だけ電源を入れるとか、おかしくないか?
「オトが動物番組がやる曜日と時間を覚えてる!」と言って、大騒ぎしそうだな。
「曜日と時間がわかるなんて、やっぱり天才!」とか、言い出しそうだ。
これ以上、騒がれたり、疑われたりするのは嫌なので、自分で電源を入れるのは却下だな。

テレビの前で鳴いて、「見たい」とアピールしてみようか・・・
これも、動物番組の時だけ鳴いていたら、大騒ぎになるかな?
普段からテレビの前にじっと座っていたり、鳴いたりして「見たい」アピールをしてみようか・・・
それでテレビをつけてもらって、動物番組じゃなかったら逃げるとか?
何回もやりすぎて、「どうせ見ないんだから、つけなくてもいいでしょう。」とならないように、気をつけないといけないな。

そこで俺は、テレビの前でじっとしている作戦を始めてみた。
テレビをじっと見つめて動かない。
「オト、ごはんよ。」
・・・。
「オト!」
「ミャウ」と鳴いて、テレビの前から動かない。
「ママ、オトがテレビの前から動かないよ。」
「あら、どうしたのかしらね。」
「ごはん、いらないのかな。」
そうじゃない!明莉!

「ミャウ、ミャウ」
今度はテレビに向かって鳴いてみる。
「あら、テレビに映っている自分を見て、お友達がいると思っているのかしら。」
確かに電源を落とした状態のテレビ画面には俺の姿が映っているが、そうではない。
妻はテレビに注目してくれたけど、ちょっと違う。
「もしかして、テレビをつけたら、この前見た子猫がいると思っているんじゃない?」
その子猫に会いたいわけではないが、いいぞ、明莉!
「でもね、オト。同じ子猫ばかり出てこないよ。」
明莉が俺に言い聞かせるように、やさしく言う。
明莉、違う!
俺は、その子猫に会いたいのではなくて、子猫が出てくる番組が見たい! 
「もしかしたら、違う子猫でもいいんじゃない?今度、子猫が出てくる番組があったらつけてみようか。」
さすが、ママ!
よし!作戦成功!

こうして俺は、子猫が出てくる番組を見て、普通の子猫の勉強を続けることになった。
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