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あい
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翌朝。いつもと変わらぬ朝日を浴びてラナティンは目覚めた。
昨日の狂乱が夢であったかのように清潔なシーツと、汚れ一つない身体。
けれども、ラナティンの眠るベットに凭れるようにして床に座り込むアルフォリダの様子が、あの行為が夢ではなかったことを物語る。
「悪かった」
「貴方の謝罪を受け入れます」
ベッドが軋む音でラナティンが目覚めたことに気付いたアルフォリダが謝る。
ラナティンはそれを快く受け入れた。
「そんな簡単に許しちゃ駄目だろ」
「アルフォリダは許されたくて謝ったのではないのですか? もしかして僕に嫌われたくてあのようなことを?」
「そんなわけがあるか。お前に嫌われたら俺は生きていけない。好きだから我慢できずに襲ったが、愛しているから悔やんでいる。お前を傷付けてしまったと」
「僕の身体は丈夫なんです。あれぐらいでは怪我しませんよ」
「そういう意味じゃなくて……」
「そんなことよりも。貴方が知る神とその眷属について教えてください。僕の身体のことについて、貴方は僕よりも詳しそうです」
一世一代の愛の告白をそんなことと切り捨てられたのはショックだったが、新たな知識を前に瞳を輝かせるラナティンを無視できるほどアルフォリダは強くなかった。
「俺も教育係から聞いただけの話だし、聞いたときは眉唾だと鼻で笑った程度の話だ」
「アルフォリダは小さな頃から勤勉だったのですね。教育係の方がいたなんて」
「俺は勉強は嫌いだった。いつだって剣の稽古がしたくて逃げ出しては叱られたさ」
「それでも覚えているんでしょう。僕にも聞かせてください。眉唾な話」
これは聞かせるまで他の話は出来ないとアルフォリダは諦めた。
「俺が生まれた国では神に会えたらその身を差し出せって教わるんだ。気紛れでも“愛されれば”神の眷属になれるからな。更に深く“愛されれば”お前みたいに神の仲間入りだ」
「昨日も言ったけど僕はあのような行為は初めてでした」
「そんなわけあるか。それじゃ、お前はどうやって神に成り上がったんだよ」
ラナティンは話したくないなと思った。
それは罪の告白でもあるから。
けれども、ラナティンはアルフォリダに聞かせることにした。自分の生まれを。
「僕は愛を与えられたわけではなく、罰を受けたんです」
「罰?」
「そう。神に育ててもらったご恩を忘れて死を望んだ罰として火に焼けた杭で身体を貫かれました。とても痛かったです」
「杭で?」
「そのあとも呪いの使い方が悪いと蛇が口の中を這い回る罰も受けました」
「蛇が口の中を?」
それは比喩的な表現なのかとアルフォリダは考えたが、話しているラナティンはどうやら本気のようだ。
本当に“火に焼けた杭”で貫かれ、口内を“蛇”に蹂躙されたのだと思っている。
──随分とヘタクソな神に襲われたんだな。ならばそう思わせておいた方が得策だ。
「それは辛かったな」
「僕は普通の方法ではない形で神になってしまったから呪いだなんて物騒な神になってしまったのかもしれないです」
ラナティンは恥じていた。自身の名を。
呪いでは人を不幸には出来ても幸せに出来ないから。
「人の世には愛に落ちることを“呪い”に例えることがあるんだ」
「愛……」
「今の俺がそうだ。お前を愛してやまない、憐れな愛の奴隷だよ」
「奴隷だなんて。アルフォリダは自由の空の下にいてこそ輝くのです。縛られてはいけません」
「俺はお前の愛で縛られたいんだ。好きで好きで堪らなく好きだ。もう無理矢理にはしないから。かわりに次からはお前の合意のもと二人で愛を分かち合いたい」
ラナティンは昨日の行為を思い出して頬を真っ赤に染め上げた。
──たしかに無理矢理で乱暴な行いでしたけど、それも暴走したアルフォリダの愛ゆえの暴挙でしたら。そんなに嫌でもなかったです。
ラナティンは情にほだされやすい。
そして真っ直ぐな好意には流されやすい。
アルフォリダは真綿で絞めるようにゆっくりと愛の攻略を進めることにした。
昨日の狂乱が夢であったかのように清潔なシーツと、汚れ一つない身体。
けれども、ラナティンの眠るベットに凭れるようにして床に座り込むアルフォリダの様子が、あの行為が夢ではなかったことを物語る。
「悪かった」
「貴方の謝罪を受け入れます」
ベッドが軋む音でラナティンが目覚めたことに気付いたアルフォリダが謝る。
ラナティンはそれを快く受け入れた。
「そんな簡単に許しちゃ駄目だろ」
「アルフォリダは許されたくて謝ったのではないのですか? もしかして僕に嫌われたくてあのようなことを?」
「そんなわけがあるか。お前に嫌われたら俺は生きていけない。好きだから我慢できずに襲ったが、愛しているから悔やんでいる。お前を傷付けてしまったと」
「僕の身体は丈夫なんです。あれぐらいでは怪我しませんよ」
「そういう意味じゃなくて……」
「そんなことよりも。貴方が知る神とその眷属について教えてください。僕の身体のことについて、貴方は僕よりも詳しそうです」
一世一代の愛の告白をそんなことと切り捨てられたのはショックだったが、新たな知識を前に瞳を輝かせるラナティンを無視できるほどアルフォリダは強くなかった。
「俺も教育係から聞いただけの話だし、聞いたときは眉唾だと鼻で笑った程度の話だ」
「アルフォリダは小さな頃から勤勉だったのですね。教育係の方がいたなんて」
「俺は勉強は嫌いだった。いつだって剣の稽古がしたくて逃げ出しては叱られたさ」
「それでも覚えているんでしょう。僕にも聞かせてください。眉唾な話」
これは聞かせるまで他の話は出来ないとアルフォリダは諦めた。
「俺が生まれた国では神に会えたらその身を差し出せって教わるんだ。気紛れでも“愛されれば”神の眷属になれるからな。更に深く“愛されれば”お前みたいに神の仲間入りだ」
「昨日も言ったけど僕はあのような行為は初めてでした」
「そんなわけあるか。それじゃ、お前はどうやって神に成り上がったんだよ」
ラナティンは話したくないなと思った。
それは罪の告白でもあるから。
けれども、ラナティンはアルフォリダに聞かせることにした。自分の生まれを。
「僕は愛を与えられたわけではなく、罰を受けたんです」
「罰?」
「そう。神に育ててもらったご恩を忘れて死を望んだ罰として火に焼けた杭で身体を貫かれました。とても痛かったです」
「杭で?」
「そのあとも呪いの使い方が悪いと蛇が口の中を這い回る罰も受けました」
「蛇が口の中を?」
それは比喩的な表現なのかとアルフォリダは考えたが、話しているラナティンはどうやら本気のようだ。
本当に“火に焼けた杭”で貫かれ、口内を“蛇”に蹂躙されたのだと思っている。
──随分とヘタクソな神に襲われたんだな。ならばそう思わせておいた方が得策だ。
「それは辛かったな」
「僕は普通の方法ではない形で神になってしまったから呪いだなんて物騒な神になってしまったのかもしれないです」
ラナティンは恥じていた。自身の名を。
呪いでは人を不幸には出来ても幸せに出来ないから。
「人の世には愛に落ちることを“呪い”に例えることがあるんだ」
「愛……」
「今の俺がそうだ。お前を愛してやまない、憐れな愛の奴隷だよ」
「奴隷だなんて。アルフォリダは自由の空の下にいてこそ輝くのです。縛られてはいけません」
「俺はお前の愛で縛られたいんだ。好きで好きで堪らなく好きだ。もう無理矢理にはしないから。かわりに次からはお前の合意のもと二人で愛を分かち合いたい」
ラナティンは昨日の行為を思い出して頬を真っ赤に染め上げた。
──たしかに無理矢理で乱暴な行いでしたけど、それも暴走したアルフォリダの愛ゆえの暴挙でしたら。そんなに嫌でもなかったです。
ラナティンは情にほだされやすい。
そして真っ直ぐな好意には流されやすい。
アルフォリダは真綿で絞めるようにゆっくりと愛の攻略を進めることにした。
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