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だえき
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三日三晩、アルフォリダは茸の毒に魘された。
ラナティンはその間、一睡もせず看病し続けた。
異変を感じてすぐに対処したのが良かったのか本人がもともと丈夫なのか。
これといった後遺症もなくアルフォリダは完治した。
「生きていてくれて良かった」
ラナティンは涙を溢して元気になったアルフォリダに抱きついた。
その時、アルフォリダがほの暗い微笑みを浮かべていたことを彼の首に抱き付いていたラナティンは知らない。
さて、元気になったアルフォリダを連れてラナティンはそれまで以上に丁寧に森の危険性について語った。
けれども、アルフォリダはラナティンの隙を突いてわざとその体を危険に晒した。
子を腹に宿し気の立っている雌熊の通り道を横切り、雨のあとの水嵩が増した川で水浴びをして、熟せば問題なく食せる果実を青いままかじった。
アルフォリダはラナティンの教えを忠実に守っていたので、死なないギリギリの怪我をして家に帰った。
血塗れのアルフォリダを見てラナティンは自分が傷付いたかのように眉をひそめる。
実際、ラナティンの心は痛んだ。
自分が不甲斐ないばかりに教え子が怪我をしてしまったのだと悔やんだ。
ラナティンは智慧の神の子供だったが、人の心の機微に疎かった。
恋心や性欲といった色事に対しては素人どころか存在すら知らないでいた。
本来、それらの事柄は大人になった─精通がきた─あとに智慧の神マリファから学ぶはずだった。
しかし、その前にラナティンがハンスト、正しくは積極的自死なのだが、を起こしてしまったので教わることなく地上に落ちてしまった。
故に気付けない。
アルフォリダが自らを危険に晒す理由を。
ラナティンを独占したい、自分だけを見てほしいと願うが為にわざと怪我を負う気持ちを察することは出来なかった。
また、ラナティンの治療はとても原始的だった。
アルフォリダに教えるのは薬草を使ったり外科的な行為も含んだが、自分で誰かを癒すときは手っ取り早く舐めた。
ラナティンの唾液には人間のそれよりも強い癒しの効果があったから。
それに気がついたのは、アルフォリダが背中を熊の爪に掻かれたときだった。
薬草を煎じた湿布薬を塗っても止まらない血を見たラナティンは咄嗟に流れる鮮血を舐めとった。
するとラナティンの舌が触れた場所からみるみる血が止まり、あっという間に跡も残らず傷は塞がった。
その時から、ラナティンはどんなに小さな傷も舐めて直した。
それはアルフォリダの手首に残る傷を治せなかったことへの後悔もあったから。
自分の唾液に薬効のようなものがある理由をラナティンは知らない。
きっと、神になるということはそういった人智を越えた奇跡を起こせるのだろうと軽く考えた。
幸いに使い方なら分かったので困ることはない。
傷は舐めれば治るし、熱を出したら口移しで飲ませた。
熱に冒されたアルフォリダがラナティンの咥内を舐め回すのは、きっと唾液の効果を知っているからだろうと好きにさせた。
もしも、ラナティンが性に疎くなければ気付けただろう。
咥内を這うアルフォリダの舌に性的な含みが潜んでいたことを。
そして、呪いの神の唾液が持つ甘美な呪いについても。
ラナティンはその間、一睡もせず看病し続けた。
異変を感じてすぐに対処したのが良かったのか本人がもともと丈夫なのか。
これといった後遺症もなくアルフォリダは完治した。
「生きていてくれて良かった」
ラナティンは涙を溢して元気になったアルフォリダに抱きついた。
その時、アルフォリダがほの暗い微笑みを浮かべていたことを彼の首に抱き付いていたラナティンは知らない。
さて、元気になったアルフォリダを連れてラナティンはそれまで以上に丁寧に森の危険性について語った。
けれども、アルフォリダはラナティンの隙を突いてわざとその体を危険に晒した。
子を腹に宿し気の立っている雌熊の通り道を横切り、雨のあとの水嵩が増した川で水浴びをして、熟せば問題なく食せる果実を青いままかじった。
アルフォリダはラナティンの教えを忠実に守っていたので、死なないギリギリの怪我をして家に帰った。
血塗れのアルフォリダを見てラナティンは自分が傷付いたかのように眉をひそめる。
実際、ラナティンの心は痛んだ。
自分が不甲斐ないばかりに教え子が怪我をしてしまったのだと悔やんだ。
ラナティンは智慧の神の子供だったが、人の心の機微に疎かった。
恋心や性欲といった色事に対しては素人どころか存在すら知らないでいた。
本来、それらの事柄は大人になった─精通がきた─あとに智慧の神マリファから学ぶはずだった。
しかし、その前にラナティンがハンスト、正しくは積極的自死なのだが、を起こしてしまったので教わることなく地上に落ちてしまった。
故に気付けない。
アルフォリダが自らを危険に晒す理由を。
ラナティンを独占したい、自分だけを見てほしいと願うが為にわざと怪我を負う気持ちを察することは出来なかった。
また、ラナティンの治療はとても原始的だった。
アルフォリダに教えるのは薬草を使ったり外科的な行為も含んだが、自分で誰かを癒すときは手っ取り早く舐めた。
ラナティンの唾液には人間のそれよりも強い癒しの効果があったから。
それに気がついたのは、アルフォリダが背中を熊の爪に掻かれたときだった。
薬草を煎じた湿布薬を塗っても止まらない血を見たラナティンは咄嗟に流れる鮮血を舐めとった。
するとラナティンの舌が触れた場所からみるみる血が止まり、あっという間に跡も残らず傷は塞がった。
その時から、ラナティンはどんなに小さな傷も舐めて直した。
それはアルフォリダの手首に残る傷を治せなかったことへの後悔もあったから。
自分の唾液に薬効のようなものがある理由をラナティンは知らない。
きっと、神になるということはそういった人智を越えた奇跡を起こせるのだろうと軽く考えた。
幸いに使い方なら分かったので困ることはない。
傷は舐めれば治るし、熱を出したら口移しで飲ませた。
熱に冒されたアルフォリダがラナティンの咥内を舐め回すのは、きっと唾液の効果を知っているからだろうと好きにさせた。
もしも、ラナティンが性に疎くなければ気付けただろう。
咥内を這うアルフォリダの舌に性的な含みが潜んでいたことを。
そして、呪いの神の唾液が持つ甘美な呪いについても。
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