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くらげ

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ひらめきオーダー4

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夜、眠る前。布団の中で圭介さんと通話をする。
インカメラで撮るプライベートな僕のだらしのない姿を喜ぶ圭介さん。

iPhoneの小さな画面の中。
僕はもうパジャマなのに、圭介さんはまだスーツ姿。
今日は厚生労働省の官僚の人達と支援が必要な女性への支援に関する法律について話し合っていたらしい。
これから家に帰って、その話し合った内容をレポートにまとめる。

夜遅くまでお疲れ様。
ニュースで見たことあるけど本当に官僚ってブラック労働なんだ。
働き方改革をした方がいいよ。
今日土曜日だよ? 休めてる?

そんな過密労働の隙間に圭介さんは僕と話がしたいと言ってくれた。
僕も圭介さんと話したかったから嬉しい。車で移動の間だけでも時間を作ってくれてありがとう。
今日はもうお話しできないのかなって少し寂しかったから。

「と、いうわけで今年の冬は北海道に行きましょう。雪まつりです」

玲司君にアランセーターを着せるため、僕達は真冬の北海道に行く必要があるんです。
圭介さんも一緒に行きませんか?
僕は札幌のスープカレーを食べたいです。

「札幌行くなら俺の服も選んでー」

圭介さんも僕に冬物の服をセレクトしてほしいと言う。

「任せてください!」

ショッピングデート楽しみ。
格好良い圭介さんに似合うアイテムをいっぱい選びたい。

「いつもの名倉屋さんでいいですか?」
「うん」

動物園の時みたいな隠し撮りされたくない。
個室でゆっくりお買い物したい。

「でも、明日は急かな」

明日の朝、圭介さんは始発で帰ってくるんだよね?
なにをするか決めてなかったけど、デートに行けるかな?

「ダメ元で鵜飼さんにメールしとくー」
「お部屋が借りられると良いですね」

鵜飼さんはお義父さんの紹介で僕についてくれたデパートの担当さん。
僕の面倒くさい趣味も理解している。
基本はメールでのやりとりで対応してくれるベテランの頼れるオジサマだ。

今日も男の姿でウィメンズのアイテムを選んだけど変に思わないで受け入れてくれた。
親切なのは仕事だからだとしても、本当に優しい人。
連日お世話になりそうだ。

「唯の札幌コーデも考えないとねー」
「それは圭介さんにお任せします」

お互いに選ぼうよ。
絶対に楽しいから。

「トラッドな圭介さんはもちろん格好良いんですけど、この前の動物園のスポーティカジュアルも格好良くて。だから、パーカーとか着ません?」
「うん。唯が選んでくれたらなんでも着るー」
「そういう主体性がない圭介さんは格好良くないです。僕は一緒に選びたいです」
「じゃあ唯のコーデも一緒に選ぼー」
「はいっ」

北海道といえばシマナガエナとキタキツネとエゾリス。
みんなふわふわしててカワイイ。
僕もふわふわ可愛くなりたいです。

この冬のトレンドと札幌の寒さについて話が弾む。
けれども楽しい時間はあっという間に終わってしまう。

「唯、ごめん。もう着く」

圭介さんが乗るタクシーがマンションの前に着いてしまった。
窓の外には見慣れたバレースペースの植木が見える。

「圭介さん、おかえりなさい」
「ただいま。唯はおやすみ」
「おやすみなさい。明日会えるの楽しみです」

ピロンと鳴る機械の音が通話が切れたと知らせる。
少し肌寒くなってきた秋の夜。
声は聞けても触れられない僕達の距離。

掛け布団の中にもぐり込む。
寂しさからの無意識。
右手がパジャマのゴムの下をくぐり抜け下着の中に伸びた。

自分自身を慰める。
リフレインするのは僕の名前を呼ぶ圭介さんの声。

「はぁ……」

身体の中心に熱がこもる。
手の動きを早めた。
けれども達することはできない。

なんで?
うまくいかない苛立ちで手を止めた。

そういえば、いつからひとりでしてない?
今年したっけ?
もしかして、僕、不感症?

でも、圭介さんや玲司君とするときはいっぱい気持ちよくなる。
だけど、それだって数ヶ月してない。

前に玲司君から性欲の弱さを指摘された。
個人差だと一蹴したけど、本当に僕って変なのかも。

ED?
違う。急がしかったり大変だったり。
そういうメンタルが理由の一時的な問題。

そうだよ。
きっと、そう。

もし、今、押し入れの中に鈴村さんからの誕生日プレゼントが残っていたら。
初心者向けのオモチャを試していただろう。
返品してしまったのは失敗か?

でも、アレを使っていると思われるのは絶対無理。

今夜は疲れているんだ。
だから変なことを考えてしまう。
しっかり眠って。
明日、対策を考えよう。
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