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不動ベイシン
みんなで乾杯2
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ハートの風船に導かれて。
お義父さんの庭を進む。
最短距離ではない遠回りな道取り。
次はどこにあるのかな。風船を探しながら進む。
「はい。新しい風船だよー」
『圭介さん、ありがとうございます』
「次は……。ずいぶん高いとこに結んだな」
『玲司君、取れる?』
「よゆー」
新しい風船を見つけるたびに圭介さんと玲司君が枝から取って僕に渡してくれた。
僕の両手が風船でいっぱいになる頃。
チョコレート色をした洋館の前にたどり着いた。
風船は玄関の前に用意された止まり木に結びつける。
ふわふわと風に揺れるピンクのブーケは僕達が無事にたどり着いた証だよ。
「さあ。パーティー会場に到着したね。今日は心から楽しみなさい。サクラのためのお集まりだから」
ずっとカメラを回している鈴村さんが僕のためのパーティーだと言う。
つまり、全力で楽しめって意味だね。
任せて。僕は楽しむのが得意だから。
今日は靴のまま部屋に上がって良いというので、玄関マットで靴底の土を落として。
コツンコツンとヒールを鳴らして館の中へと入っていく。
玲司君がリビングにつながる扉を開けた。
圭介さんのエスコートで広いリビングに一歩踏み出す。
そこに鳴らされるクラッカー。
口々におめでとうとお祝いの言葉をかけられた。
「サクちゃんは何を着ても可愛いなー」
「ほんに愛らしい」
お義父さんと楓さんに可愛いと褒められると嬉しい。
今日はお義父さんも英国紳士なネイビーのスリーピースなんですね。素敵です。
楓さんも落ち着いたクリーム色の訪問着がとても似合ってます。
こうしてふたりで並んでいると、まるで夫婦みたいだ。
パーティーには他にも会いたかった人達がいっぱい。
『壁やん、久しぶり。元気してた? ちょっと痩せたんじゃない? 違うな。引き締まった?』
お義父さんの後ろに立っていた壁やんにも挨拶をする。
ちょくちょく電話で話したり、メールのやり取りはしていたけど。
会うのは圭介さんと玲司君のアルバムを届けてもらった日以来だ。
この数ヶ月で筋肉量が増えてない?
よくよく見れば、また胸板が厚くなった気がする。
「ちょっとトレーニング量を増やしたから、そのせいかな。さっくんはまたきれいになったね」
『朝からママが磨いてくれたからだよ。ママは魔法の手を持ってたんだ。ピカピカにされちゃった』
僕の警備担当として体を鍛えてくれてるんだね。
おかげで僕は安心して守られる。
これまでも、そしてこれからもよろしく。
パーティーには美味しいごちそうもいっぱいあるから。楽しんで。
「佐倉さん乾杯しますよ。グラスをどうぞ」
壁やんと話していたら成瀬さんがシャンパングラスを渡してくれた。
背の高いグラスの中で弾ける泡。
圭介さんと玲司君が僕をエスコートして、広間の真ん中へと誘う。
「唯、挨拶してー」
圭介さんが僕のグラスを持ってくれるというのでお願いする。
挨拶と言われても。とくに話すことはない。
お祝いだと集ったけど、それはこの数ヶ月のトラブルが解決した記念なのかな。
挨拶の言葉は手短に。
『今日はお集まりいただきありがとうございます。この数カ月間、僕達の生活を白い壁の内側と外側の両方で支えてくれて本当にありがとうございました。ずっと会いたかったから、こうして会えてすっごく嬉しいです。皆様どうか楽しいひと時をお過ごしください。僕もいっぱい楽しみます。それでは乾杯』
シャンパンは軽く唇を濡らす程度にしておく。
今日ははじめて会う人もいる。
うっかり悪酔いして醜態をさらさないように。
僕は賢くない。だから歴史からは学べない。だけど経験からは学べるよ。
お義父さんの庭を進む。
最短距離ではない遠回りな道取り。
次はどこにあるのかな。風船を探しながら進む。
「はい。新しい風船だよー」
『圭介さん、ありがとうございます』
「次は……。ずいぶん高いとこに結んだな」
『玲司君、取れる?』
「よゆー」
新しい風船を見つけるたびに圭介さんと玲司君が枝から取って僕に渡してくれた。
僕の両手が風船でいっぱいになる頃。
チョコレート色をした洋館の前にたどり着いた。
風船は玄関の前に用意された止まり木に結びつける。
ふわふわと風に揺れるピンクのブーケは僕達が無事にたどり着いた証だよ。
「さあ。パーティー会場に到着したね。今日は心から楽しみなさい。サクラのためのお集まりだから」
ずっとカメラを回している鈴村さんが僕のためのパーティーだと言う。
つまり、全力で楽しめって意味だね。
任せて。僕は楽しむのが得意だから。
今日は靴のまま部屋に上がって良いというので、玄関マットで靴底の土を落として。
コツンコツンとヒールを鳴らして館の中へと入っていく。
玲司君がリビングにつながる扉を開けた。
圭介さんのエスコートで広いリビングに一歩踏み出す。
そこに鳴らされるクラッカー。
口々におめでとうとお祝いの言葉をかけられた。
「サクちゃんは何を着ても可愛いなー」
「ほんに愛らしい」
お義父さんと楓さんに可愛いと褒められると嬉しい。
今日はお義父さんも英国紳士なネイビーのスリーピースなんですね。素敵です。
楓さんも落ち着いたクリーム色の訪問着がとても似合ってます。
こうしてふたりで並んでいると、まるで夫婦みたいだ。
パーティーには他にも会いたかった人達がいっぱい。
『壁やん、久しぶり。元気してた? ちょっと痩せたんじゃない? 違うな。引き締まった?』
お義父さんの後ろに立っていた壁やんにも挨拶をする。
ちょくちょく電話で話したり、メールのやり取りはしていたけど。
会うのは圭介さんと玲司君のアルバムを届けてもらった日以来だ。
この数ヶ月で筋肉量が増えてない?
よくよく見れば、また胸板が厚くなった気がする。
「ちょっとトレーニング量を増やしたから、そのせいかな。さっくんはまたきれいになったね」
『朝からママが磨いてくれたからだよ。ママは魔法の手を持ってたんだ。ピカピカにされちゃった』
僕の警備担当として体を鍛えてくれてるんだね。
おかげで僕は安心して守られる。
これまでも、そしてこれからもよろしく。
パーティーには美味しいごちそうもいっぱいあるから。楽しんで。
「佐倉さん乾杯しますよ。グラスをどうぞ」
壁やんと話していたら成瀬さんがシャンパングラスを渡してくれた。
背の高いグラスの中で弾ける泡。
圭介さんと玲司君が僕をエスコートして、広間の真ん中へと誘う。
「唯、挨拶してー」
圭介さんが僕のグラスを持ってくれるというのでお願いする。
挨拶と言われても。とくに話すことはない。
お祝いだと集ったけど、それはこの数ヶ月のトラブルが解決した記念なのかな。
挨拶の言葉は手短に。
『今日はお集まりいただきありがとうございます。この数カ月間、僕達の生活を白い壁の内側と外側の両方で支えてくれて本当にありがとうございました。ずっと会いたかったから、こうして会えてすっごく嬉しいです。皆様どうか楽しいひと時をお過ごしください。僕もいっぱい楽しみます。それでは乾杯』
シャンパンは軽く唇を濡らす程度にしておく。
今日ははじめて会う人もいる。
うっかり悪酔いして醜態をさらさないように。
僕は賢くない。だから歴史からは学べない。だけど経験からは学べるよ。
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