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不動ベイシン
パーティーがはじまるよ3
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魔女見習いの普段着に着替えてから食べるのは。
吉野さんが用意してくれた、おにぎりと具沢山のお味噌汁。
ホッとする味。まるで実家のような安心感。
僕の実家の味は煮干しで出汁を取った八丁味噌の味噌汁じゃないけど。
母さんはだし入りの白味噌で作ってた。
婆ちゃんは辛口な会津の味噌汁で、名古屋の味噌はそんな婆ちゃんの味噌に少し似てる。
だから懐かしく感じるのかもしれない。
「唯ちゃーん。ママよー。お呼ばれありがとー」
朝早くからテンションマックスのママが登場。
僕はまだ鮭のおにぎりを食べている日常テンションなので、その高さには登れない。
僕と圭介さんの出会いの場。
新宿歌舞伎町のビアバーBeaucoupのママ。
男の子と女の子。どっちの恋愛相談にものってくれるオカマのママとして人気。
そんな頼れるママが嵐のようにやってきた。
僕が会いたい人は本当にやってくるんだ。
『ママ。お久しぶりです』
鮭おにぎりをもぐもぐしながら、両手でご挨拶。
ママなら少しぐらいお行儀が悪くても許してくれるよね?
「きゃー。うさちゃんな唯ちゃんも可愛いわー」
徹夜明けみたいなテンションのママにもみくちゃに抱きしめられる。
僕は鮭おにぎりを食べている最中なのだけど。
「ご飯食べたらお支度しましょ。全身磨かなきゃ」
素材がいいから磨き甲斐があるとママは言う。
パーティーの準備って普通にメイクしたらいいと思っているんだけど。違うの?
持っている紙袋の中。溢れそうなそのボトルは何?
僕の質問に適当に答えるママはお風呂場までついてきた。
もしかして一緒に入るの?
「大丈夫よ。あたし達は乙女同士じゃない」
『僕は乙女とは違うっていうか』
「ほら。時間ないからさっさと脱ぐ」
ママは自分だけしっかりタオルを巻いて、僕は隠すものが何もない状態でお風呂に放り込まれる。
自分ではケアできない背中もクリームでツルツルに。
全身を泡まみれにされて。美容クリームを塗り込まれて。お風呂でホームエステを受けた。
優しくふわふわのタオルで体を拭かれたあとは美容液とフェイスパック。
パックをしている間にボディクリームを体に塗っていく。
ママの大きな手は優しいタッチで僕の肌にクリームをなじませてくれた。
頭のてっぺんからつま先まで。
全身ツヤツヤもちもちになりました。
『ママはエステティシャンなの?』
「昔、鈴さんのとこにいたときに色々覚えたのよ」
『鈴村さんとは昔からの知り合いなんですか?』
「腐れ縁ってやつかしら? 聞きたい?」
ママが怪しく笑うから、僕は首を横に振って聞きたくないと断った。
それは聞いたら駄目だと僕の第六感が囁いたから。きっと怖い話。
さて。今日のメイクはどうしよう?
ふわふわ可愛いミニドレスを着るのだから僕も可愛くなりたい。
そう思ってコスメを選んでいたら、ママからアドバイス。
「今日はたくさんお写真撮られるだろうから、マットなファンデがいいわよ。シャイニーなものは太陽の下でなら可愛いけど、フラッシュでテカることがあるから」
『なるほど。これまで写真をあまり撮ったことがないから知らなかったです』
誰かとこうやって相談しながらコスメを選んで化粧をするのは楽しい。
今まではメイクで変身するのはひとりの時間だったから。
『この色がいいかな?』
「こっちの色のが唯ちゃんには似合うわよ」
『そうかな?』
「そうよ」
リップのカラーを選ぶ他愛もない会話だけど、僕にはとても貴重な時間。
僕が男から女の子に変わる過程を見てもママはとくに何も言わない。
そういう自然体でいられる安心感がママの素敵なところ。
ドレスに合わせた特別な下着を身につけるのもママになら見られても平気。
ドレスとおそろいのフリルがいっぱいついたブルマを履いて。
ママに手伝ってもらってドレスを着る。
背中が大きく開いているドレスは、まるでエプロンのような形をしているから横から肌がのぞきそう。
不安に思っていたら、ママが肌色のテープを取り出した。
「お肌用の両面テープ。これで肌に貼り付けるわよ。隙間からおっぱいやおヘソが見えちゃわないようにね」
こんな便利グッズが世の中にはあるのか。
『玲司君の選ぶ穴だらけ隙だらけな服にも使えるかな。僕はすぐに隙間から手を入れてくる彼氏に困ってるんです』
「その穴は手を入れる穴だから。ふさいだら玲司君は悲しむんじゃないかしら」
『僕は手を入れられるのが嫌なんだけど』
「あらあら。困ったわね」
ママは全然困ったふうじゃない様子。
恋人同士のスキンシップなら当然だと思ってる?
どうせ僕がお子ちゃまだと思ってるんだ。
最近、みんなが僕のことを子供扱いする時の空気が分かってきた。
実際、経験の少ない子供だから仕方ないんだけど。
いつかは鈴村さんくらいドンと構えた態度になれるのかな。
吉野さんが用意してくれた、おにぎりと具沢山のお味噌汁。
ホッとする味。まるで実家のような安心感。
僕の実家の味は煮干しで出汁を取った八丁味噌の味噌汁じゃないけど。
母さんはだし入りの白味噌で作ってた。
婆ちゃんは辛口な会津の味噌汁で、名古屋の味噌はそんな婆ちゃんの味噌に少し似てる。
だから懐かしく感じるのかもしれない。
「唯ちゃーん。ママよー。お呼ばれありがとー」
朝早くからテンションマックスのママが登場。
僕はまだ鮭のおにぎりを食べている日常テンションなので、その高さには登れない。
僕と圭介さんの出会いの場。
新宿歌舞伎町のビアバーBeaucoupのママ。
男の子と女の子。どっちの恋愛相談にものってくれるオカマのママとして人気。
そんな頼れるママが嵐のようにやってきた。
僕が会いたい人は本当にやってくるんだ。
『ママ。お久しぶりです』
鮭おにぎりをもぐもぐしながら、両手でご挨拶。
ママなら少しぐらいお行儀が悪くても許してくれるよね?
「きゃー。うさちゃんな唯ちゃんも可愛いわー」
徹夜明けみたいなテンションのママにもみくちゃに抱きしめられる。
僕は鮭おにぎりを食べている最中なのだけど。
「ご飯食べたらお支度しましょ。全身磨かなきゃ」
素材がいいから磨き甲斐があるとママは言う。
パーティーの準備って普通にメイクしたらいいと思っているんだけど。違うの?
持っている紙袋の中。溢れそうなそのボトルは何?
僕の質問に適当に答えるママはお風呂場までついてきた。
もしかして一緒に入るの?
「大丈夫よ。あたし達は乙女同士じゃない」
『僕は乙女とは違うっていうか』
「ほら。時間ないからさっさと脱ぐ」
ママは自分だけしっかりタオルを巻いて、僕は隠すものが何もない状態でお風呂に放り込まれる。
自分ではケアできない背中もクリームでツルツルに。
全身を泡まみれにされて。美容クリームを塗り込まれて。お風呂でホームエステを受けた。
優しくふわふわのタオルで体を拭かれたあとは美容液とフェイスパック。
パックをしている間にボディクリームを体に塗っていく。
ママの大きな手は優しいタッチで僕の肌にクリームをなじませてくれた。
頭のてっぺんからつま先まで。
全身ツヤツヤもちもちになりました。
『ママはエステティシャンなの?』
「昔、鈴さんのとこにいたときに色々覚えたのよ」
『鈴村さんとは昔からの知り合いなんですか?』
「腐れ縁ってやつかしら? 聞きたい?」
ママが怪しく笑うから、僕は首を横に振って聞きたくないと断った。
それは聞いたら駄目だと僕の第六感が囁いたから。きっと怖い話。
さて。今日のメイクはどうしよう?
ふわふわ可愛いミニドレスを着るのだから僕も可愛くなりたい。
そう思ってコスメを選んでいたら、ママからアドバイス。
「今日はたくさんお写真撮られるだろうから、マットなファンデがいいわよ。シャイニーなものは太陽の下でなら可愛いけど、フラッシュでテカることがあるから」
『なるほど。これまで写真をあまり撮ったことがないから知らなかったです』
誰かとこうやって相談しながらコスメを選んで化粧をするのは楽しい。
今まではメイクで変身するのはひとりの時間だったから。
『この色がいいかな?』
「こっちの色のが唯ちゃんには似合うわよ」
『そうかな?』
「そうよ」
リップのカラーを選ぶ他愛もない会話だけど、僕にはとても貴重な時間。
僕が男から女の子に変わる過程を見てもママはとくに何も言わない。
そういう自然体でいられる安心感がママの素敵なところ。
ドレスに合わせた特別な下着を身につけるのもママになら見られても平気。
ドレスとおそろいのフリルがいっぱいついたブルマを履いて。
ママに手伝ってもらってドレスを着る。
背中が大きく開いているドレスは、まるでエプロンのような形をしているから横から肌がのぞきそう。
不安に思っていたら、ママが肌色のテープを取り出した。
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こんな便利グッズが世の中にはあるのか。
『玲司君の選ぶ穴だらけ隙だらけな服にも使えるかな。僕はすぐに隙間から手を入れてくる彼氏に困ってるんです』
「その穴は手を入れる穴だから。ふさいだら玲司君は悲しむんじゃないかしら」
『僕は手を入れられるのが嫌なんだけど』
「あらあら。困ったわね」
ママは全然困ったふうじゃない様子。
恋人同士のスキンシップなら当然だと思ってる?
どうせ僕がお子ちゃまだと思ってるんだ。
最近、みんなが僕のことを子供扱いする時の空気が分かってきた。
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