恋愛サティスファクション

不動ベイシン

れっつごーアニマルズ4

「こっちにイケメンいるって。唯、イケメン好きでしょ？」

イケメンにそれを言われても。
あと名古屋の動物園にいるイケメンはゴリラだから。
初恋の相手で筋肉ゴリラな先輩を思い出すし、イケメンはやめておくよ。

カバやサルのスペースを通り過ぎるとカラフルにペイントされた階段。
それを登ると遊園地だ。
ジェットコースター、メリーゴーランド、ティーカップ。

『圭介さん、次はバイキングに乗りましょう！』

クラシカルなアトラクションが新鮮であれもこれも乗りたい。

「落ち着いてー。今日は園内空いてるし全部に乗っても時間は余裕だよ」
『楽しくて。つい』

初めて来たのになぜだか懐かしい雰囲気にテンションがあがってしまった。
お転婆だと鈴村さんに叱られちゃうかも。
その時は圭介さんも一緒に叱られてくれますか？

「唯、次は観覧車乗ろー」
『はい』

圭介さんに誘われた観覧車。
向かい合って小さな箱の中に座る。
僕達の乗るゴンドラがゆっくりと登っていく。
眼下に広がる名古屋の街。
あっちが最初の夜に泊まったホテル。
こっちに大相撲を見た県体育館。
そして、あそこがお義父さんの屋敷。

今日は白い塀の外に遊びにでかけた。
明日からはどうする？
圭介さんは問題が山積みな支援が必要な女性への支援に関する法律についての仕事が残っている。
僕はこれまで通りに屋敷の仕事をするのかな。
でも、僕達が外に出られるように、屋敷の中にも人を入れられるようになったんだろう。
それなら僕がご飯を作るよりも、もっと美味しい食事を作れる人を呼べる。

名古屋にずっといる必要もなくなったのかな。
東京に戻ることもできるの？
カメラを撤去した僕達のマンションに帰る？

これからどうするのか。
観覧車の中から街を見下ろして考えてしまう。
その時。ぐらりと大きくゴンドラが揺れた。
向かい合っていた圭介さんが僕の隣に座る。

「写真撮ろー」

そう言って圭介さんは僕にキスをするから、僕は目を閉じて唇に触れる熱と甘い香りを味わった。

「よしっ。玲司に自慢しよ」

とても満足そうに圭介さんは向かいの席に戻っていった。
iPhoneを触っているけど。ちょっと待って。
今のキスしてるところを写真に撮ったの？
消音のカメラアプリを僕に使うのは禁止にしようかな。
玲司君に送る前に見せてください。
確認します。

観覧車の一番上。
誰にも見られないちょうどのタイミングで圭介さんは僕にキスをした。
その瞬間を写真に撮ったのか。

これは外でキスしてるしアウト？
でも観覧車のてっぺんなら人に見られることはないしセーフ？

『ラブラブなキス写真のデータは僕も欲しいけど。仕事があって留守番をしている玲司君に今送って自慢するのは性格が悪い気がします』

仕事している相手に遊んでいる写真を送るのは意地悪だよ。

『帰ったあとに何をしたか聞かれたら見せましょう』

他にも園内には顔出しパネルや動物の模型などのフォトスポットがたくさんあったから写真をいっぱい撮った。
それにプリクラも見せよう。
写真を見たら玲司君も動物園に行きたくなるかもしれないし。

今度は予定をあわせて3人で来ましょうね。
今日は時間がなくて行けなかった宇宙メダカも見たいな。