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不動ベイシン
ひるどきオーディエンス3
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「青木さんと連絡が取れなくなり。今日の会議で会えるかと思ったんですけど休まれていて。青木さんが座るはずの席に百合の花が飾られていたんです。百合の花ってそういう意味ですよね」
有守さんが泣き崩れちゃった。
乾議員が泣き止むように背中を撫でて慰めてあげてる。
「もう僕は死んで詫びるしかないんです」
「いやいや。死んじゃ駄目。そんなの青木弁護士も望んでないよ」
そもそも圭介さんは死んでないんだけど。
勝手に殺さないで。
「その問題の百合の写真。もう一度皆さんにお見せしますね。これが女性を守る法律について話し合う有識者会議の現場に置かれていた。その事を皆さんに知ってほしい。めっちゃ趣味悪いし、気分良くない写真ですけど。見てください」
今日の午前中に有守さんがスマホで撮ったという写真が映し出される。
立派な花瓶に活けられた百合の花。
水のペットボトルとホチキスで止められたプリント。
これが今日休んでいた圭介さんの席。
『気持ち悪い』
つい、手が動いてしまった。
「うん。悪いね」
それを見た圭介さんが頷く。
そうだよね。誰だってそう思う。
「この百合、花屋で買ってきたそのままを花瓶に挿しただけ。形が悪い」
えっ? 花の形?
圭介さんは習い事でお花も習っていたんだっけ。
今もリビングや食卓を飾るお花は圭介さんが活けている。
僕も教わって一緒にお花の世話をしてるんだ。
だから、ちょっとだけど花を飾るコツみたいなのは分かるようになった。
圭介さんに教わったポイントを押さえて百合の花を見てみると。
たしかに花はぼんやりした雰囲気で適当に花瓶に挿したように見える。
今考えることは百合の花の活け方じゃない。
せっかくの綺麗なお花をどう飾ったら良いかはあとで圭介さんと実践すればいい。
『そうじゃなくて。僕が言いたいのは。この飾り方ってイジメですよ。しかもすっごく悪質で、映画とか漫画のイジメのシーンで見たことはあるけど、本当にやる人はいるわけない架空のイジメ表現。生きてる人にやったらいけないことなんです』
「そうなの? 俺が休んで花を飾るくらいに嬉しかったんだなーって思ったけど」
圭介さんって、ときどき常識がないっていうか。
普通の学生生活を送ってない弊害を感じる。
『まず、人が休んでたら体調を心配するんです。喜ぶのは人でなしのすることです』
「俺が死んだら喜ぶ人達だし」
そうでした。この人達はそもそも、悪魔の所業。人身売買やサプリの製造をしていたんだった。
「そこに彼女さんもいるのか?」
「うん。百合の花を欠席者の席に置く意味を教えてもらってた。いじめなんだねー」
「そこからかよ」
伊都さんが呆れてる。
そうなんです。うちの圭介さんはそこから説明する必要があるんです。
百合の花の写真にコメントが加速する。
圭介さんが本当に死んでいるとみんなが思い始めてる。
これって修正しないとヤバくない?
僕の圭介さんを勘違いでも殺さないで。
いま僕の隣で芋けんぴを食べてるよ。
甘野バニラとしてコメントするべき?
したところで信じてもらえない。
だって、バニラと圭介さんが付き合ってるとか世間の人達は知らない。
『圭介さん、今からでも有守さんにメールしてあげませんか? ちゃんと生きてるよって伝えましょう』
「わざわざ伝える必要ある?」
『死んでるって勘違いされてますよ。嫌じゃないんですか?』
「別に」
残念。圭介さんは他人にどう思われても平気な人だった。
『僕は嫌です。圭介さんはここにいるのに。勝手に死んだことにして話が進んでるのが悲しいです』
「唯が悲しいと俺も悲しくなる。でも、ここで俺がメールをするのも違う。有守さんがさっき自殺を匂わせる発言をしただろう。そういうことをしたら俺が表に出てくるって思われたら、出てくるまで死体が並びそう」
そんな怖いこと。絶対にないとは言えないのが嫌。
じゃあ、僕達は何も出来ないの?
見てるだけ? そんな虚しい。
有守さんが泣き崩れちゃった。
乾議員が泣き止むように背中を撫でて慰めてあげてる。
「もう僕は死んで詫びるしかないんです」
「いやいや。死んじゃ駄目。そんなの青木弁護士も望んでないよ」
そもそも圭介さんは死んでないんだけど。
勝手に殺さないで。
「その問題の百合の写真。もう一度皆さんにお見せしますね。これが女性を守る法律について話し合う有識者会議の現場に置かれていた。その事を皆さんに知ってほしい。めっちゃ趣味悪いし、気分良くない写真ですけど。見てください」
今日の午前中に有守さんがスマホで撮ったという写真が映し出される。
立派な花瓶に活けられた百合の花。
水のペットボトルとホチキスで止められたプリント。
これが今日休んでいた圭介さんの席。
『気持ち悪い』
つい、手が動いてしまった。
「うん。悪いね」
それを見た圭介さんが頷く。
そうだよね。誰だってそう思う。
「この百合、花屋で買ってきたそのままを花瓶に挿しただけ。形が悪い」
えっ? 花の形?
圭介さんは習い事でお花も習っていたんだっけ。
今もリビングや食卓を飾るお花は圭介さんが活けている。
僕も教わって一緒にお花の世話をしてるんだ。
だから、ちょっとだけど花を飾るコツみたいなのは分かるようになった。
圭介さんに教わったポイントを押さえて百合の花を見てみると。
たしかに花はぼんやりした雰囲気で適当に花瓶に挿したように見える。
今考えることは百合の花の活け方じゃない。
せっかくの綺麗なお花をどう飾ったら良いかはあとで圭介さんと実践すればいい。
『そうじゃなくて。僕が言いたいのは。この飾り方ってイジメですよ。しかもすっごく悪質で、映画とか漫画のイジメのシーンで見たことはあるけど、本当にやる人はいるわけない架空のイジメ表現。生きてる人にやったらいけないことなんです』
「そうなの? 俺が休んで花を飾るくらいに嬉しかったんだなーって思ったけど」
圭介さんって、ときどき常識がないっていうか。
普通の学生生活を送ってない弊害を感じる。
『まず、人が休んでたら体調を心配するんです。喜ぶのは人でなしのすることです』
「俺が死んだら喜ぶ人達だし」
そうでした。この人達はそもそも、悪魔の所業。人身売買やサプリの製造をしていたんだった。
「そこに彼女さんもいるのか?」
「うん。百合の花を欠席者の席に置く意味を教えてもらってた。いじめなんだねー」
「そこからかよ」
伊都さんが呆れてる。
そうなんです。うちの圭介さんはそこから説明する必要があるんです。
百合の花の写真にコメントが加速する。
圭介さんが本当に死んでいるとみんなが思い始めてる。
これって修正しないとヤバくない?
僕の圭介さんを勘違いでも殺さないで。
いま僕の隣で芋けんぴを食べてるよ。
甘野バニラとしてコメントするべき?
したところで信じてもらえない。
だって、バニラと圭介さんが付き合ってるとか世間の人達は知らない。
『圭介さん、今からでも有守さんにメールしてあげませんか? ちゃんと生きてるよって伝えましょう』
「わざわざ伝える必要ある?」
『死んでるって勘違いされてますよ。嫌じゃないんですか?』
「別に」
残念。圭介さんは他人にどう思われても平気な人だった。
『僕は嫌です。圭介さんはここにいるのに。勝手に死んだことにして話が進んでるのが悲しいです』
「唯が悲しいと俺も悲しくなる。でも、ここで俺がメールをするのも違う。有守さんがさっき自殺を匂わせる発言をしただろう。そういうことをしたら俺が表に出てくるって思われたら、出てくるまで死体が並びそう」
そんな怖いこと。絶対にないとは言えないのが嫌。
じゃあ、僕達は何も出来ないの?
見てるだけ? そんな虚しい。
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