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不動ベイシン
つとめてリスナー
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松川さんと連絡を取るのをやめても僕達の生活は特に変わらなかった。
もともとこまめにやり取りをしてたわけじゃないからね。
「それじゃあ、テレビでも見よっかー」
とある日の朝食後。
圭介さんが朝のワイドショーを見ようと誘ってきた。
珍しいものを見るんだね。
「今日は面白いものが見られる予感がするんだー」
そうなの? じゃあ、圭介さんの焼いたダイエットおからクッキーとお茶を用意して一緒に見よう。
面白いものが大好きなお義父さんも大きなテレビのある応接間にやって来た。
お義父さんのお茶も用意して。
何が始まるのかな。ワクワクしてきた。
圭介さんの予感はきっと当たるから。
今日のワイドショーは神回確定だね。
朝8時。オープニングのテーマソングと共に『今朝のホンネ』という番組ロゴがテレビに流れた。
今日はスタジオではなく外からの中継映像から始まるみたい。
緑の木々に黄色い番組のロゴが重なる。
「皆さんおはようございます。今朝のホンネ、始まりました。私は府中乗馬倶楽部に来ています。実はこちら、いま話題のあの人が小学生の頃から通っている乗馬倶楽部ということで……」
マイクを持った女性リポーターが中継用のバンが止まっている駐車場から、馬がいるという敷地の中へと歩いていく。
こんなに大きな声で話しながら歩いても大丈夫なの?
アニアがびっくりしない?
テレビの取材なら事前に連絡されているだろうし、臆病な性格のアニアは厩舎に避難しているのかな。
「あなた達、何してるんですか?」
敷地の奥から慌てた様子の警備員さんが走ってきてリポーターの前に立ちはだかった。
「誰ですか? 勝手にカメラまで持ってきて。馬は繊細な性格の動物なんです。騒がないでください。本当に静かにして、今すぐにお帰りください」
この警備員さんの怒り方。
もしかして事前の連絡もなく、無許可で撮影をしている?
「撮影許可はこれから取ります。倶楽部の代表の方はどちらにいるんですか?」
リポーターが悪びれる様子もなく言い放つ。
その態度はどうなの? すごく失礼だよ。
許可がないなら一度中継は止めるべきだ。
それなのにカメラはリポーターと警備員さんのやり取りを映し続ける。
テレビ局はこの取材方法を許しているの?
警備員さんに止められているのにテレビクルーはどんどん倶楽部の中へと進んでいく。
大きな声で話し続けるリポーターの腕を掴んで静かにしなさいと止める警備員さんに、セクハラだと言うのは違うんじゃないかな?
それがセクハラなら許可なく警備員さんを撮影してるのも肖像権の侵害だよ。
「もうっ。私には触らないでください。とにかく、青木圭介弁護士の話を聞きに来ただけなんで。……あっ! あそこ! あの白い馬!」
何かを見つけたリポーターの女性が興奮した様子で画面の左の方を指差す。
そちらにカメラが向くと、そこには白馬のアニアがいた。
倶楽部のメンバーなのだろうか。
背中に誰かを乗せて、ゆっくりと歩いている。
写真でしか見たことないアニアが悠然と歩いている姿はとても美しい。
「あれ、青木弁護士の馬ですよ!」
警備員さんの制止を振り切りリポーターが走り出す。
それを追いかけるテレビのカメラ。
そんな騒いだらアニアがびっくりしちゃう。駄目だ。
テレビの前でどれだけ僕がやめてと言っても何も止まらない。
僕の抱いた懸念が現実のものとなってしまった。
驚いたアニアが前足を高く上げて、後ろ足だけで立ち上がる。
背中に乗っている人がなんとかアニアをなだめようとしているけど。
それよりもリポーターの騒ぐ声に反応してしまう。
興奮したアニアがカメラに向かって真っ直ぐに走り出したところで中継は途切れ、CMが始まった。
もともとこまめにやり取りをしてたわけじゃないからね。
「それじゃあ、テレビでも見よっかー」
とある日の朝食後。
圭介さんが朝のワイドショーを見ようと誘ってきた。
珍しいものを見るんだね。
「今日は面白いものが見られる予感がするんだー」
そうなの? じゃあ、圭介さんの焼いたダイエットおからクッキーとお茶を用意して一緒に見よう。
面白いものが大好きなお義父さんも大きなテレビのある応接間にやって来た。
お義父さんのお茶も用意して。
何が始まるのかな。ワクワクしてきた。
圭介さんの予感はきっと当たるから。
今日のワイドショーは神回確定だね。
朝8時。オープニングのテーマソングと共に『今朝のホンネ』という番組ロゴがテレビに流れた。
今日はスタジオではなく外からの中継映像から始まるみたい。
緑の木々に黄色い番組のロゴが重なる。
「皆さんおはようございます。今朝のホンネ、始まりました。私は府中乗馬倶楽部に来ています。実はこちら、いま話題のあの人が小学生の頃から通っている乗馬倶楽部ということで……」
マイクを持った女性リポーターが中継用のバンが止まっている駐車場から、馬がいるという敷地の中へと歩いていく。
こんなに大きな声で話しながら歩いても大丈夫なの?
アニアがびっくりしない?
テレビの取材なら事前に連絡されているだろうし、臆病な性格のアニアは厩舎に避難しているのかな。
「あなた達、何してるんですか?」
敷地の奥から慌てた様子の警備員さんが走ってきてリポーターの前に立ちはだかった。
「誰ですか? 勝手にカメラまで持ってきて。馬は繊細な性格の動物なんです。騒がないでください。本当に静かにして、今すぐにお帰りください」
この警備員さんの怒り方。
もしかして事前の連絡もなく、無許可で撮影をしている?
「撮影許可はこれから取ります。倶楽部の代表の方はどちらにいるんですか?」
リポーターが悪びれる様子もなく言い放つ。
その態度はどうなの? すごく失礼だよ。
許可がないなら一度中継は止めるべきだ。
それなのにカメラはリポーターと警備員さんのやり取りを映し続ける。
テレビ局はこの取材方法を許しているの?
警備員さんに止められているのにテレビクルーはどんどん倶楽部の中へと進んでいく。
大きな声で話し続けるリポーターの腕を掴んで静かにしなさいと止める警備員さんに、セクハラだと言うのは違うんじゃないかな?
それがセクハラなら許可なく警備員さんを撮影してるのも肖像権の侵害だよ。
「もうっ。私には触らないでください。とにかく、青木圭介弁護士の話を聞きに来ただけなんで。……あっ! あそこ! あの白い馬!」
何かを見つけたリポーターの女性が興奮した様子で画面の左の方を指差す。
そちらにカメラが向くと、そこには白馬のアニアがいた。
倶楽部のメンバーなのだろうか。
背中に誰かを乗せて、ゆっくりと歩いている。
写真でしか見たことないアニアが悠然と歩いている姿はとても美しい。
「あれ、青木弁護士の馬ですよ!」
警備員さんの制止を振り切りリポーターが走り出す。
それを追いかけるテレビのカメラ。
そんな騒いだらアニアがびっくりしちゃう。駄目だ。
テレビの前でどれだけ僕がやめてと言っても何も止まらない。
僕の抱いた懸念が現実のものとなってしまった。
驚いたアニアが前足を高く上げて、後ろ足だけで立ち上がる。
背中に乗っている人がなんとかアニアをなだめようとしているけど。
それよりもリポーターの騒ぐ声に反応してしまう。
興奮したアニアがカメラに向かって真っ直ぐに走り出したところで中継は途切れ、CMが始まった。
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