362 / 442
不動ベイシン
あつまれセブンナイツ4
しおりを挟む
僕のせいで話し合いの流れが止まるのは良くない。
知らない言葉はあとでまとめて教えてもらうことにして、静かに座っていよう。
今はどのアカウントを優先して開示するかの相談中。
圭介さんはいくつもの悪質な書き込みを印刷した資料を手に難しい顔をしてる。
僕には全部が酷い言葉に思えて、そこに順番は付けられないから黙って聞いてる。
そうしていたら圭介さんの左手がテーブルに伸びて、何も掴まずに膝の上に戻った。
なにか欲しかったのかな?
もしかして甘いものが欲しい?
圭介さんはいっぱい考え事をするとき、脳がエネルギーを欲するように甘味を求める。
とくに今みたいに脳みそフル回転なときに食べたいものは。
ちょっと待っててね。僕が取ってくるよ。
そっと二の腕に触れて、席を外すことを伝える。
なにも言わずに僕がいなくなると圭介さんは不安に感じてしまうから。
僕は少しだけ離席するけど、ちゃんと戻って来るから安心して。
キッチンから持ってきたのは金平糖。
指先で唇に触れたら口を開けてくれたので、金平糖を数粒摘んでそっと食べさせた。
手元の紙を見ながらポリポリと音を立てて金平糖を噛み砕く。
やっぱり糖分を求めていたんだね。
書類を読んだままでいいよ。
僕が金平糖を食べさせてあげる。
最初のうちは豪快に噛んで食べているけど、落ち着いてくると口の中で転がして舐めて溶かし始めた。
僕も甘いものが欲しくなってきた。
一緒に金平糖を食べよう。
そろそろ満足したかな。
お茶もあるから飲んで。
麦茶をなみなみとついだコップを渡すと一息に飲み干した。
甘いものを食べると喉が渇くよね。
「ありがとう」
圭介さんは僕の頭を撫でながらお礼を言ってくれた。
──どういたしまして
今の僕に出来ることはお茶汲み程度。
弁護士になれなくても法律の勉強をしてみようかな。
この場で僕だけが何も知らなくて、意見を言う事すら出来ない。
前に玲司君からも物を知らないと言われたけど本当だ。
でも知らないなら知ればいい。
新しく学ぶことが増えたのだと前向きに考えよう。
「この“全国善玉菌連合”は内容もただの中傷でインプレも少ないし優先度を下げていいか?」
「それは唯がリストに入れたやつだ」
えっ? どのアカウントについての話?
伊都さんの言っているのは誰のこと?
名前だけ言われても、誰についての話か分からないよ。
圭介さんの手元の資料を読ませてもらう。
“全国善玉菌連合”はフォロー数2350、フォロワー数2500程度のアカウント。
平均インプレッション数は300と多くはない。
ケンゾーさんに調べてもらったところ、中の人は地方在住の専業主婦だった。
とくに目立つアカウントではないんだけど。
ちょっと気になったから訴える対象のリストに入れてもらった。
──この人が呟いた言葉は他の人達も使います 悪口を広める人はすごく悪い人です 同じくらい悪口を創造する人は悪い人です
圭介さんに投げつけられる言葉はたくさんある。
よくこんなにも思いつくなって引くぐらいに酷い言葉も多い。
その中の“女郎蜘蛛”“脱法弁護士”“整形顔”の3つは“全国善玉菌連合”と名乗るアカウントがTweetするまでは使われていない言葉だった。
だけど今では毎日誰かが使っている。
使い勝手の良い悪口としてバズってしまった。
そういう意味で影響力があると判断してリストに入れたんだけど駄目だった?
「奥方がそう仰るなら。優先度高めに対応しますよ」
奥方だなんて。僕達はまだ同棲しているだけの関係だ。
でも、こうして社会的に関係を認めてもらうのって嬉しいな。
圭介さんが僕との結婚を急ぐのはそういう意味もあるのかもしれない。
「それでも件数はもっと減らすべきだな。金がかかり過ぎる」
裁判ってそんなに費用がかかるの?
訴状に印紙を貼ったりするんだ。
裁判100件分だと印紙代だけでもそれなりにかかるんだね。
さらに弁護士契約は事件の件数で金額が変わる?
じゃあ、100件の裁判はトータルでいくらぐらい必要?
──お金はこれで足りますか?
膝の上に置いていたハンドバッグから金のインゴットを1つ出してみる。
みんながザワつくけど、別に盗んできた物ではないよ。
──お父様から護身用に頂いた物です 足りないなら部屋にまだあります
お義父さんがもしもの時にこれで殴れとくれたんだ。
だから、普段遣いのポシェットやリュックにも1つずつ入れてある。
インゴットの効果は圭介さんも身をもって知っているでしょう?
足りないなら、デパートで買ってもらった宝石も使って。
鈴村さんが換金しやすい石を選んでくれたから。
「親父、いつの間に貢いでたんだ」
貢がれたんじゃなくて心配してくれたんだよ。
僕はここに来る前、車でも襲われてるし。
それで足りそう? 何個いる?
「とりあえず1つもらっとく。自分で払えるんだけど、唯の気持ちが嬉しいから」
圭介さんは普通に高収入だから弁護士費用は心配いらなかったね。
でも使ってくれたら僕も嬉しいし、きっとお義父さんも喜ぶと思う。
圭介さんが悪く言われるのは自分のニュース記事を見るときより辛そうだったから。
もし足りない時はまた相談してね。
知らない言葉はあとでまとめて教えてもらうことにして、静かに座っていよう。
今はどのアカウントを優先して開示するかの相談中。
圭介さんはいくつもの悪質な書き込みを印刷した資料を手に難しい顔をしてる。
僕には全部が酷い言葉に思えて、そこに順番は付けられないから黙って聞いてる。
そうしていたら圭介さんの左手がテーブルに伸びて、何も掴まずに膝の上に戻った。
なにか欲しかったのかな?
もしかして甘いものが欲しい?
圭介さんはいっぱい考え事をするとき、脳がエネルギーを欲するように甘味を求める。
とくに今みたいに脳みそフル回転なときに食べたいものは。
ちょっと待っててね。僕が取ってくるよ。
そっと二の腕に触れて、席を外すことを伝える。
なにも言わずに僕がいなくなると圭介さんは不安に感じてしまうから。
僕は少しだけ離席するけど、ちゃんと戻って来るから安心して。
キッチンから持ってきたのは金平糖。
指先で唇に触れたら口を開けてくれたので、金平糖を数粒摘んでそっと食べさせた。
手元の紙を見ながらポリポリと音を立てて金平糖を噛み砕く。
やっぱり糖分を求めていたんだね。
書類を読んだままでいいよ。
僕が金平糖を食べさせてあげる。
最初のうちは豪快に噛んで食べているけど、落ち着いてくると口の中で転がして舐めて溶かし始めた。
僕も甘いものが欲しくなってきた。
一緒に金平糖を食べよう。
そろそろ満足したかな。
お茶もあるから飲んで。
麦茶をなみなみとついだコップを渡すと一息に飲み干した。
甘いものを食べると喉が渇くよね。
「ありがとう」
圭介さんは僕の頭を撫でながらお礼を言ってくれた。
──どういたしまして
今の僕に出来ることはお茶汲み程度。
弁護士になれなくても法律の勉強をしてみようかな。
この場で僕だけが何も知らなくて、意見を言う事すら出来ない。
前に玲司君からも物を知らないと言われたけど本当だ。
でも知らないなら知ればいい。
新しく学ぶことが増えたのだと前向きに考えよう。
「この“全国善玉菌連合”は内容もただの中傷でインプレも少ないし優先度を下げていいか?」
「それは唯がリストに入れたやつだ」
えっ? どのアカウントについての話?
伊都さんの言っているのは誰のこと?
名前だけ言われても、誰についての話か分からないよ。
圭介さんの手元の資料を読ませてもらう。
“全国善玉菌連合”はフォロー数2350、フォロワー数2500程度のアカウント。
平均インプレッション数は300と多くはない。
ケンゾーさんに調べてもらったところ、中の人は地方在住の専業主婦だった。
とくに目立つアカウントではないんだけど。
ちょっと気になったから訴える対象のリストに入れてもらった。
──この人が呟いた言葉は他の人達も使います 悪口を広める人はすごく悪い人です 同じくらい悪口を創造する人は悪い人です
圭介さんに投げつけられる言葉はたくさんある。
よくこんなにも思いつくなって引くぐらいに酷い言葉も多い。
その中の“女郎蜘蛛”“脱法弁護士”“整形顔”の3つは“全国善玉菌連合”と名乗るアカウントがTweetするまでは使われていない言葉だった。
だけど今では毎日誰かが使っている。
使い勝手の良い悪口としてバズってしまった。
そういう意味で影響力があると判断してリストに入れたんだけど駄目だった?
「奥方がそう仰るなら。優先度高めに対応しますよ」
奥方だなんて。僕達はまだ同棲しているだけの関係だ。
でも、こうして社会的に関係を認めてもらうのって嬉しいな。
圭介さんが僕との結婚を急ぐのはそういう意味もあるのかもしれない。
「それでも件数はもっと減らすべきだな。金がかかり過ぎる」
裁判ってそんなに費用がかかるの?
訴状に印紙を貼ったりするんだ。
裁判100件分だと印紙代だけでもそれなりにかかるんだね。
さらに弁護士契約は事件の件数で金額が変わる?
じゃあ、100件の裁判はトータルでいくらぐらい必要?
──お金はこれで足りますか?
膝の上に置いていたハンドバッグから金のインゴットを1つ出してみる。
みんながザワつくけど、別に盗んできた物ではないよ。
──お父様から護身用に頂いた物です 足りないなら部屋にまだあります
お義父さんがもしもの時にこれで殴れとくれたんだ。
だから、普段遣いのポシェットやリュックにも1つずつ入れてある。
インゴットの効果は圭介さんも身をもって知っているでしょう?
足りないなら、デパートで買ってもらった宝石も使って。
鈴村さんが換金しやすい石を選んでくれたから。
「親父、いつの間に貢いでたんだ」
貢がれたんじゃなくて心配してくれたんだよ。
僕はここに来る前、車でも襲われてるし。
それで足りそう? 何個いる?
「とりあえず1つもらっとく。自分で払えるんだけど、唯の気持ちが嬉しいから」
圭介さんは普通に高収入だから弁護士費用は心配いらなかったね。
でも使ってくれたら僕も嬉しいし、きっとお義父さんも喜ぶと思う。
圭介さんが悪く言われるのは自分のニュース記事を見るときより辛そうだったから。
もし足りない時はまた相談してね。
2
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男
湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。
何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
クラスの仲良かったオタクに調教と豊胸をされて好みの嫁にされたオタクに優しいギャル男
湊戸アサギリ
BL
※メス化、男の娘化、シーメール化要素があります。オタクくんと付き合ったギャル男がメスにされています。手術で豊胸した描写があります。これをBLって呼んでいいのかわからないです
いわゆるオタクに優しいギャル男の話になります。色々ご想像にお任せします。本番はありませんが下ネタ言ってますのでR15です
閲覧ありがとうございます。他の作品もよろしくお願いします
男の子たちの変態的な日常
M
BL
主人公の男の子が変態的な目に遭ったり、凌辱されたり、攻められたりするお話です。とにかくHな話が読みたい方向け。
※この作品はムーンライトノベルズにも掲載しています。
俺、メイド始めました
雨宮照
恋愛
ある日、とある理由でメイド喫茶に行った主人公・栄田瑛介は学校でバイトが禁止されているにもかかわらず、同級生の倉橋芽依がメイドとして働いていることを知ってしまう。
秘密を知られた倉橋は、瑛介をバックヤードに連れて行き……男の瑛介をメイドにしようとしてきた!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる