恋愛サティスファクション

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魔女の子のこった7

僕のお願いを聞いてもらえて体育館の中に入れることになった。
受付スタッフさんの案内でようやく今日のお席に到着です。
思ってたより土俵に近い席だ。
すごーい。お相撲さんが目の前。
えっ？ テレビのカメラも目の前？
本当だ。鈴村さんの指の先、ばっちりカメラがある。

パイプで区切られた正方形のスペースが僕らの席なんだね。
お座布団は4枚用意されてるけど、僕達3人で使って良いの？
これ、お義父さんと鈴村さんどっちが用意した席なんだろう。
いつも2人で仲良く相撲観戦してるのかな。

『僕は相撲はよく分かんないし、後ろに座りますね』
「せっかく来たんだ。鈴ちゃんと並んで座れ。子供が遠慮なんてするなー」

薦められて断る理由もないし座らせてもらう。
目の前がちょうど通路になっていて取り組みがよく見える。
テレビで見るお相撲さんと比べると体が細いのはまだ若手の力士だから？
10代の子もいるんだ。フレッシュな感じがいいね。

「お昼は弁当を頼んであるからな。しっかり食べるんだよ」

先程の案内をしてくれたスタッフさん(出方さんと呼ぶらしい)が今度はお茶とお弁当を持ってきてくれた
冷たいお茶が火照った体にしみるー。
体育館の中は冷房がついてるけどそれ以上に熱気がすごくて暑いから。
お弁当と一緒にタオルで包んだ保冷剤とハンディ扇風機の貸出もありがとうございます。
至れり尽くせり。ホスピタリティが充実してる。

本日の昼食。杉のお弁当箱は手に馴染む楕円形。
膝の上にハンカチを敷いて。
その上に置いて食べたら良いんだよね。
楓さんが突貫で教えてくれた乙女所作知識がさっそく役に立ってます。

中はなんだろー。渋い木のお弁当箱だし中身も大人向けなのかな。
って蓋を開けてびっくり。いなり寿司のデコ弁でした。
花や鳥が飾り切りで表現されてる。
これを食べてもいいの？ とりあえず写真を撮るべき？
#お昼ご飯 #お弁当 #どこから食べる？

「茶屋に無理を言って作らせましたね？」
「ちぃとお願いしただけだもん。サクちゃんには可愛くて美味いもん食べさせたかったんだもん」
「可愛く言っても駄目ですよ。まったく困った人だ」

鈴村さんがお弁当を見て呆れてる。
これ特注なの？ 普通じゃないの？ 普通はもっと渋い？
若い子向けのお弁当を頼んだらこうなったんだ。
お茶屋さんの本気。ありがたくいただきます。

こういうのって見た目重視で味は普通だよね。って食べてみたら味も本格的でした。
お弁当のすみの飾りだと思って甘くみてたオクラの揚げ浸しまでしっかり美味しい。
もちろんいなり寿司も美味しい。
ひとつずつ具材や味付けが違うから食べてて楽しい。

「サクちゃんはお稲荷さん好きなんだろ？」

美味しくて楽しいお弁当を味わっていたら、お義父さんが満足そうに話しかけてきた。
お義父さんは自分が用意したお弁当を僕が食べるのを見るのが楽しいらしい。

『いなり寿司は好きっていうか、普通？ でも、このお弁当はすごく美味しいです』

いなり寿司は出されたら食べるけど、そこまで好物ってわけじゃない。
花見会でたくさん差し入れしたのは通りすがりのマダム軍団にオススメされたからだ。
そんなにガッカリしないで。勘違いは誰にでもあるし。
いなり寿司が嫌いなわけでもない。
見た目にも可愛いお弁当を用意してくれてありがとうございます。