355 / 442
不動ベイシン
兎の一穴2
しおりを挟む
圭介さんが人差し指を立てて、軽く唇を舐める。
とてもきれいなテノールで歌い出したので、僕は一番最初に圭介さんの指にとまった。
ほら。次は二上さんも止まってください。
こういうのはノリが大事ですよ。
圭介さんが歌い終わる頃には、キッチンにみんなが集まってきた。
グループチャットで予告しておいたのが良かったのかな。
「ただのかくれんぼじゃつまらんだろー。最後まで見つからんかった奴には儂が好きなもんを1つやろう」
お義父さんがかくれんぼに景品を用意すると言った。
途端にみんなの目の色が変わる。
お義父さんのいう好きなものって予算の上限とかなさそうで怖い。
「それだと鬼は何ももらえないです。全員を見つけられたら鬼の勝ちで、鬼が景品をGETできるってしませんか?」
「そのへんの詳しいルールはサクちゃんが決めろ」
「みんなで楽しく遊べるルールを考えます」
僕はかくれんぼのプロなので。
ルールは任せて。
現在、8時45分。
これから大人が本気を出したかくれんぼが始まる。
ルールは簡単。
隠れる場所は白い塀の内側。
鬼はふたり。恨みっこなしでグーパーじゃんけんをしたら、圭介さんと玲司君が鬼になった。
隠れるのは残りの7人。お義父さんも隠れるんだって。
外は暑くなる時間だから気をつけてくださいね。
みんなに水のペットボトルを配って、お守りの塩飴も渡す。
8時50分になったら、鬼のふたりにはアイマスクをつけて、キッチンで待っててもらう。
そこから10分間。僕達は屋敷や庭に隠れるんだ。
離れには圭介さんが管理する機密情報がたくさんあるから、中には入らないルール。
離れの中以外はどこに隠れてもOK。
9時になったら圭介さんと玲司君が僕達を探し始める。
探す時間は1時間。その間、見つからなかった人全員にお義父さんから好きなものを1つプレゼントしてもらえる。
逆に全員を見つけられたら鬼のふたりにご褒美のプレゼント。
お義父さんは自分が持っているものならなんでも1つあげると言っていた。
そのなんでもの中には、クラシックカーもあるらしく。染井さんが本気で欲しがってる。
二上さんも分かりにくいけど、ガチだ。
何が欲しいんだろう。
僕は欲しいものはとくにないし。かくれんぼを楽しもう。
「時間です。圭介さんと玲司君はアイマスクをしてください。キッチンタイマーが鳴るまで取っちゃ駄目だから。それでは、第1回かくれんぼ大会のスタートです!」
隠れるみんなが、思い思いの場所に向かって走っていく。
お義父さんはゆっくり歩いているけど、どこに行くんだろう。
僕はまず、自分の部屋に戻って着替えをした。
だってロングスカートのワンピースじゃ隠れにくい。
カモフラージュ柄のジャージに着替えて。
圭介さんにGPSで探すの禁止って言い忘れたから、iPhoneの類は全部部屋に置いていこう。
ボディバックの中には水のペットボトルと塩飴だけ入れて。
さあ。身軽になって出発だ。
前から気になっていた庭の木に登って、太い枝に小さくなって座る。
こうすれば真下から見上げても枝の隙間からは見えないはず。
見晴らしも良く、風も通るから涼しい。
ここが僕の隠れ場所。いい感じだ。
しまった。何もかもを置いてきちゃったから、今の時間が分からない。
もう圭介さんと玲司君は探し始めている頃かな。
9時になったらブザーを鳴らすとか決めておけば良かった。
終わりの時間も伝えなきゃ、いつまで隠れていればいいか分からない。
まあ、僕は時間になる前に見つかっちゃうだろう。
次回はこういう小さな反省点も活かしてルールを決めよう。
木の上から庭を見下ろしていたら、玲司君がやってきた。
身を小さくして、見つからないように木の幹にしがみつく。
玲司君は菜園の小屋の中を探している。
ああ! そこには成瀬さんが隠れているのに。
数分経って小屋から成瀬さんと玲司君が出てきた。
ふたりでセルフィーのツーショット写真を撮ってるけど、それを見つけたという証拠にしているのか。
成瀬さんはそのまま屋敷の方に帰っていき。
玲司君は小屋の屋根の上まで丁寧に探した。
片耳にはめたインカムで話してる相手はきっと圭介さんだ。
何を話しているかまでは聞こえないけど。
ふたりで密に連絡を取りながら探しているみたい。
鬼は時間内に全員を見つけたらご褒美がもらえるから。
チームプレイをするのは理にかなってる。
玲司君は小屋の中や周りを丹念に探して、
僕の隠れる樹の下にまでやってきた。
見つかるかもしれない緊張で心臓が早くなる。
このドキドキがかくれんぼの醍醐味だよね。
玲司君は辺り一帯を植木の影までしっかり探して庭の東の方に行ってしまった。
これでしばらくここに鬼は来ないだろう。
とてもきれいなテノールで歌い出したので、僕は一番最初に圭介さんの指にとまった。
ほら。次は二上さんも止まってください。
こういうのはノリが大事ですよ。
圭介さんが歌い終わる頃には、キッチンにみんなが集まってきた。
グループチャットで予告しておいたのが良かったのかな。
「ただのかくれんぼじゃつまらんだろー。最後まで見つからんかった奴には儂が好きなもんを1つやろう」
お義父さんがかくれんぼに景品を用意すると言った。
途端にみんなの目の色が変わる。
お義父さんのいう好きなものって予算の上限とかなさそうで怖い。
「それだと鬼は何ももらえないです。全員を見つけられたら鬼の勝ちで、鬼が景品をGETできるってしませんか?」
「そのへんの詳しいルールはサクちゃんが決めろ」
「みんなで楽しく遊べるルールを考えます」
僕はかくれんぼのプロなので。
ルールは任せて。
現在、8時45分。
これから大人が本気を出したかくれんぼが始まる。
ルールは簡単。
隠れる場所は白い塀の内側。
鬼はふたり。恨みっこなしでグーパーじゃんけんをしたら、圭介さんと玲司君が鬼になった。
隠れるのは残りの7人。お義父さんも隠れるんだって。
外は暑くなる時間だから気をつけてくださいね。
みんなに水のペットボトルを配って、お守りの塩飴も渡す。
8時50分になったら、鬼のふたりにはアイマスクをつけて、キッチンで待っててもらう。
そこから10分間。僕達は屋敷や庭に隠れるんだ。
離れには圭介さんが管理する機密情報がたくさんあるから、中には入らないルール。
離れの中以外はどこに隠れてもOK。
9時になったら圭介さんと玲司君が僕達を探し始める。
探す時間は1時間。その間、見つからなかった人全員にお義父さんから好きなものを1つプレゼントしてもらえる。
逆に全員を見つけられたら鬼のふたりにご褒美のプレゼント。
お義父さんは自分が持っているものならなんでも1つあげると言っていた。
そのなんでもの中には、クラシックカーもあるらしく。染井さんが本気で欲しがってる。
二上さんも分かりにくいけど、ガチだ。
何が欲しいんだろう。
僕は欲しいものはとくにないし。かくれんぼを楽しもう。
「時間です。圭介さんと玲司君はアイマスクをしてください。キッチンタイマーが鳴るまで取っちゃ駄目だから。それでは、第1回かくれんぼ大会のスタートです!」
隠れるみんなが、思い思いの場所に向かって走っていく。
お義父さんはゆっくり歩いているけど、どこに行くんだろう。
僕はまず、自分の部屋に戻って着替えをした。
だってロングスカートのワンピースじゃ隠れにくい。
カモフラージュ柄のジャージに着替えて。
圭介さんにGPSで探すの禁止って言い忘れたから、iPhoneの類は全部部屋に置いていこう。
ボディバックの中には水のペットボトルと塩飴だけ入れて。
さあ。身軽になって出発だ。
前から気になっていた庭の木に登って、太い枝に小さくなって座る。
こうすれば真下から見上げても枝の隙間からは見えないはず。
見晴らしも良く、風も通るから涼しい。
ここが僕の隠れ場所。いい感じだ。
しまった。何もかもを置いてきちゃったから、今の時間が分からない。
もう圭介さんと玲司君は探し始めている頃かな。
9時になったらブザーを鳴らすとか決めておけば良かった。
終わりの時間も伝えなきゃ、いつまで隠れていればいいか分からない。
まあ、僕は時間になる前に見つかっちゃうだろう。
次回はこういう小さな反省点も活かしてルールを決めよう。
木の上から庭を見下ろしていたら、玲司君がやってきた。
身を小さくして、見つからないように木の幹にしがみつく。
玲司君は菜園の小屋の中を探している。
ああ! そこには成瀬さんが隠れているのに。
数分経って小屋から成瀬さんと玲司君が出てきた。
ふたりでセルフィーのツーショット写真を撮ってるけど、それを見つけたという証拠にしているのか。
成瀬さんはそのまま屋敷の方に帰っていき。
玲司君は小屋の屋根の上まで丁寧に探した。
片耳にはめたインカムで話してる相手はきっと圭介さんだ。
何を話しているかまでは聞こえないけど。
ふたりで密に連絡を取りながら探しているみたい。
鬼は時間内に全員を見つけたらご褒美がもらえるから。
チームプレイをするのは理にかなってる。
玲司君は小屋の中や周りを丹念に探して、
僕の隠れる樹の下にまでやってきた。
見つかるかもしれない緊張で心臓が早くなる。
このドキドキがかくれんぼの醍醐味だよね。
玲司君は辺り一帯を植木の影までしっかり探して庭の東の方に行ってしまった。
これでしばらくここに鬼は来ないだろう。
2
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男
湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。
何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
クラスの仲良かったオタクに調教と豊胸をされて好みの嫁にされたオタクに優しいギャル男
湊戸アサギリ
BL
※メス化、男の娘化、シーメール化要素があります。オタクくんと付き合ったギャル男がメスにされています。手術で豊胸した描写があります。これをBLって呼んでいいのかわからないです
いわゆるオタクに優しいギャル男の話になります。色々ご想像にお任せします。本番はありませんが下ネタ言ってますのでR15です
閲覧ありがとうございます。他の作品もよろしくお願いします
男の子たちの変態的な日常
M
BL
主人公の男の子が変態的な目に遭ったり、凌辱されたり、攻められたりするお話です。とにかくHな話が読みたい方向け。
※この作品はムーンライトノベルズにも掲載しています。
俺、メイド始めました
雨宮照
恋愛
ある日、とある理由でメイド喫茶に行った主人公・栄田瑛介は学校でバイトが禁止されているにもかかわらず、同級生の倉橋芽依がメイドとして働いていることを知ってしまう。
秘密を知られた倉橋は、瑛介をバックヤードに連れて行き……男の瑛介をメイドにしようとしてきた!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる