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不動ベイシン
兎の一穴1
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「ねー。お盆休みってなにするのー?」
いつものように朝ご飯を食べ終わって。
さあ片付けようというタイミングで圭介さんからこう聞かれた。
昨日のリモート会議で急遽休みを取ると決めてはみたものの、休みに何をするかは決めてなかったな。
とりあえず、お皿を洗いながら何するか決めましょうか。
「お休みなんだから、好きなことをしたら良いんですよ?」
「唯と一緒にいたい」
ストレートな欲求に目がくらむ。
「唯はお盆休みになにして過ごしてたの? 同じことする」
僕のお盆の過ごし方?
bocomoショップは世間が連休だと、反対に忙しくて休めない。
去年はそれでも頑張って時間を作って、仕事終わりに圭介さんと映画館デートをした。
大学時代はバイト三昧。
中高は野球三昧。
小学校も高学年の頃は塾の夏期講習。
中学年までは福島の爺ちゃんの家に行って田畑の手伝い。
あれ? 僕もあんまり遊んだ記憶がないぞ。
「お盆休みの過ごし方。僕も知らないかも。いま思い出してるんですけど、子供の頃までさかのぼっても分からないです」
正しいお盆の過ごし方について、ふたりで悩んでいたら。
通りすがりの二上さんに呆れられた。
「盆休みなんて子供の頃は意識しませんよ。夏休みなんて朝から晩まで遊んでるものでしょう」
たしかに。お盆休みって言葉を子供は使わない。
夏休みの間はずーっと夏休み。
「二上さんは子供の頃、どんな遊びしてたんですか?」
参考までに教えてください。
「普通ですよ」
「その普通が人によって違うから悩んでるんですよ。僕はかくれんぼするのが好きでした」
「かくれんぼより鬼ごっこをしたような。団地の公園で色鬼してましたね」
「色鬼、懐かしい!」
公園のどこに何色があるか覚えて、本気で走り回ってた。
別に鬼に捕まっても死ぬわけじゃないのに、みんな全力で逃げてた。
「圭介さんは何して遊んでました? かくれんぼ? 鬼ごっこ?」
それともドッチボールとか?
「図書館の本読んでた」
圭介さんのインドアな子供時代の思い出。
子供の頃から読書家だったんですね。
休み時間に校庭に行かないで教室で本を読んでいる子は知的な感じがした。
「かくれんぼ、したことないな」
圭介さんは幼少期の記憶を振り返ってこう呟いた。
かくれんぼしたことないの!?
「えっ? したことない? 1回くらいやらなかったですか?」
「やってるのは見たけど。何が楽しいのか分かんなくて。やったことない」
なんだと! かくれんぼの楽しさを知らないなんて。
なにごとも経験です。
僕がかくれんぼを教えてあげます。
「やったことがないから分からないんです。今日はかくれんぼをしましょう」
ちょっと待ってね。かくれんぼするなら人を集めなきゃ。
『圭介さんが人生初のかくれんぼをします! 今から、この指とまれをするから遊べる人はキッチンに集合してください!』
これでよし。
「それじゃあ、圭介さんはこの指とまれをしてください」
「この指とまれ?」
「かーくれんぼすーる人、こーの指とーまれ。はーやくこーないと切っちゃうぞー。ってやつですよ」
「それもしたことないな。聞いたことない」
えー。みんなしたよね?
最後まで歌ってみても知らないと言われる。
「二上さんも知らないですか?」
「いや、俺も小学生の頃はやりましたよ。うちは電気の玉じゃなくて、ろうそく1本切ってました。微妙に違うのは地域差ですかね?」
不安になって二上さんに聞いちゃった。
僕の普通は普通じゃないって近頃心配に思うことが多いんだ。
良かった。僕だけのローカルルールじゃなかった。
「とにかく、かくれんぼするなら人を集めなきゃ。圭介さん、人差し指立てて、歌ってください。じゃないと始められないです」
「唯の歌ってくれた歌を歌えばいい?」
「はい」
もう1回歌うから、覚えてくださいね。
それを真剣に聞いてくれる圭介さんがカワイイ。
頼まれて2回繰り返し歌った。
これで覚えられたかな?
いつものように朝ご飯を食べ終わって。
さあ片付けようというタイミングで圭介さんからこう聞かれた。
昨日のリモート会議で急遽休みを取ると決めてはみたものの、休みに何をするかは決めてなかったな。
とりあえず、お皿を洗いながら何するか決めましょうか。
「お休みなんだから、好きなことをしたら良いんですよ?」
「唯と一緒にいたい」
ストレートな欲求に目がくらむ。
「唯はお盆休みになにして過ごしてたの? 同じことする」
僕のお盆の過ごし方?
bocomoショップは世間が連休だと、反対に忙しくて休めない。
去年はそれでも頑張って時間を作って、仕事終わりに圭介さんと映画館デートをした。
大学時代はバイト三昧。
中高は野球三昧。
小学校も高学年の頃は塾の夏期講習。
中学年までは福島の爺ちゃんの家に行って田畑の手伝い。
あれ? 僕もあんまり遊んだ記憶がないぞ。
「お盆休みの過ごし方。僕も知らないかも。いま思い出してるんですけど、子供の頃までさかのぼっても分からないです」
正しいお盆の過ごし方について、ふたりで悩んでいたら。
通りすがりの二上さんに呆れられた。
「盆休みなんて子供の頃は意識しませんよ。夏休みなんて朝から晩まで遊んでるものでしょう」
たしかに。お盆休みって言葉を子供は使わない。
夏休みの間はずーっと夏休み。
「二上さんは子供の頃、どんな遊びしてたんですか?」
参考までに教えてください。
「普通ですよ」
「その普通が人によって違うから悩んでるんですよ。僕はかくれんぼするのが好きでした」
「かくれんぼより鬼ごっこをしたような。団地の公園で色鬼してましたね」
「色鬼、懐かしい!」
公園のどこに何色があるか覚えて、本気で走り回ってた。
別に鬼に捕まっても死ぬわけじゃないのに、みんな全力で逃げてた。
「圭介さんは何して遊んでました? かくれんぼ? 鬼ごっこ?」
それともドッチボールとか?
「図書館の本読んでた」
圭介さんのインドアな子供時代の思い出。
子供の頃から読書家だったんですね。
休み時間に校庭に行かないで教室で本を読んでいる子は知的な感じがした。
「かくれんぼ、したことないな」
圭介さんは幼少期の記憶を振り返ってこう呟いた。
かくれんぼしたことないの!?
「えっ? したことない? 1回くらいやらなかったですか?」
「やってるのは見たけど。何が楽しいのか分かんなくて。やったことない」
なんだと! かくれんぼの楽しさを知らないなんて。
なにごとも経験です。
僕がかくれんぼを教えてあげます。
「やったことがないから分からないんです。今日はかくれんぼをしましょう」
ちょっと待ってね。かくれんぼするなら人を集めなきゃ。
『圭介さんが人生初のかくれんぼをします! 今から、この指とまれをするから遊べる人はキッチンに集合してください!』
これでよし。
「それじゃあ、圭介さんはこの指とまれをしてください」
「この指とまれ?」
「かーくれんぼすーる人、こーの指とーまれ。はーやくこーないと切っちゃうぞー。ってやつですよ」
「それもしたことないな。聞いたことない」
えー。みんなしたよね?
最後まで歌ってみても知らないと言われる。
「二上さんも知らないですか?」
「いや、俺も小学生の頃はやりましたよ。うちは電気の玉じゃなくて、ろうそく1本切ってました。微妙に違うのは地域差ですかね?」
不安になって二上さんに聞いちゃった。
僕の普通は普通じゃないって近頃心配に思うことが多いんだ。
良かった。僕だけのローカルルールじゃなかった。
「とにかく、かくれんぼするなら人を集めなきゃ。圭介さん、人差し指立てて、歌ってください。じゃないと始められないです」
「唯の歌ってくれた歌を歌えばいい?」
「はい」
もう1回歌うから、覚えてくださいね。
それを真剣に聞いてくれる圭介さんがカワイイ。
頼まれて2回繰り返し歌った。
これで覚えられたかな?
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