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可視化ライブラリ
ウサギは檻に入れられて12
しおりを挟む「という訳で、泰葉さんすまないが一度通話を切らせてもらうよ」
そう言って鈴村さんが通話を切ろうとするから慌てて止める。見捨てないでー。
「ちょっと待って。切らないで。僕は家に帰りたくて。圭介さんの連絡先を知ってますよね? それを教えてください。お願いします」
「帰りたい? あの家にかい?」
「だって、あそこが僕の家だし」
「帰る家がないなら今いる場所でシェルターでも紹介してもらえ。君のような盲目のおバカさんが頭を冷やすのにうってつけだ」
「そんなことを言わないでくださいよ。じゃあせめてお金を貸してください」
「簡単に金を借りようとするな」
個室のドアがいきなり開いて、スマホ片手の鈴村さんが僕の前に仁王立ちになった。
美人の怒り顔は迫力があって怖いです!
「金で解決する問題なのか? 借りた金で何をするつもりだ?ビジネスホテルにでも泊まるか?金が尽きたらどうする? また借りる? 問題の先送りをするための金を私は貸さんぞ」
ご最もです。正論ぶつけてこないで。痛いっ。
反論の余地を残した言葉のキャッチボールを希望します。
「いきなり通話を切るって言うから慌てただけです。先送りになんてしません」
言い訳させてー。
「通話を切ったのは事務所の前に着いたからだ。会って話せば良いのだから機械に頼る必要はないだろう」
そうだったんですね。納得です。
「そもそも、私に金を借りるなら新大久保まで歩いてこなくても会社に来れば良かったのだ」
「会社の場所を知りませんし」
「タクシーひろって社名を言えばナビでなんとでもなる。あとは受付に私の名前を言えばタクシー代も飯代もなんとかしてやれた。なぜしない。このように迂遠な方法を取りおって」
「ごめんなさい」
鈴村さんめっちゃ怒ってる。
どうしよう。謝っても許してもらえる雰囲気じゃない。
般若のように僕を見下ろす鈴村さんを前にあたふたしても何も解決しないのに。
「落ち着いて、鈴さん。それに佐倉さんも。鈴さんは怒ってように見えるけど、自分が頼ってもらえなかったって拗ねてるんですよ」
「そんな事ないっ」
泰葉さんの指摘を鈴村さんは全力否定。
「どう対応したら最適だったかの答え合わせは今必要ありません。過去よりも未来のことを話しましょう。私は最低でもデートDVについての話はしておきたいと考えています。そのあと鈴さんを頼るなり、私を頼るなり好きにしてもらえたら」
「私が引き取る。これ以上身内の不始末で迷惑をかけるわけにはいかない」
「まあまあ。迷惑をかけてもらうのが私の仕事なので」
デートDVについての話はいりますか?
僕は暴力なんて振るわれていないし。
盗撮されていただけだし。
あれだって圭介さんの趣味でしょ?
「泰葉さん、サクラも。一方的に怒ってしまって申し訳なかった。私は一度気持ちを落ち着けてくる」
泰葉さんに宥められて鈴村さんの般若モードが解除されてる。
お話しただけなのに泰葉さんはすごい。
鈴村さんは事務所の受付横にあるベンチで僕のことを待っていてくれるみたい。
僕を置いてきぼりにしない鈴村さんはなんだかんだ優しい人だ。
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