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不動ベイシン
カクテルまじっく5
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「おまたせー。本日の1杯。パナシェだよー。自家製スモークチーズとスモークナッツを添えて。どうぞ、召し上がれ」
キッチンのはしにあるダイニングテーブルが夜の一時だけ即席のバーカウンターになる。
今宵、圭介さんが用意してくれたのはビアカクテルのパナシェ。
背の高い三角錐の形をしたグラスからはビールの香ばしさと梅の香りが立つ。
一緒に出された小鉢にはチーズとミックスナッツ。
手の中におさまる大きさの小鉢には緑の染料で素朴な小鳥が描かれていて可愛い。
「パナシェってビールとレモンスカッシュで作るんじゃないんですか?」
居酒屋でバイトしてた時。僕はホールスタッフだったけど簡単なお酒も用意してたから知ってる。
パナシェはビールとレモンスカッシュを混ぜたカクテル。
「パナシェはビールの炭酸飲料割りだからレモンスカッシュ以外でも作れるよー。唯は梅サイダー好きでしょ?」
うん。好き。
「梅サイダーの爽やかな香りを活かして、軽めのエールで作ったよー」
圭介さんのこだわりの1杯。
エールビールの軽やかな苦みと梅サイダーの爽やかな酸味が口の中で弾けて幸せ。
庭に燻製器を用意して作っていたスモークチーズとスモークナッツも香ばしくて美味しい。
「なくなっちゃった」
会話と一緒に楽しむ美味しいお酒はすぐになくなっちゃう。
空っぽのグラスがさみしい。
「ノンアルビールで次の1杯作る?」
「いいんですか?」
「うん。次はレッドアイにしようか。美味しいトマトジュースがあるから」
「お願いします」
誕生日の夜。記憶がなくなるまで飲んだ反省から、僕はお酒を1日1杯までにしている。
でも圭介さんとおしゃべりをする時間は無制限。
アルコールさえ飲まなきゃ大丈夫だろ。
ノンアルのカクテルも美味しいし。
「腹減ったー。なんか作れる?」
夕食後もコラボデザインの仕事をしていた玲司君が夜食を食べたいとやって来た。
「長浜ラーメンあるけど?」
「ラーメンか。いいな。替え玉もヨロシク」
圭介さんが夜食のラーメンを作るために立ち上がり、玲司君はあいた椅子にどっかりと座った。
「おそくまでお疲れ様。なにか飲む?」
「とりあえずビール」
冷蔵庫から冷えたビール缶を取り出し、グラスに注ぐ。
玲司君が美味しそうに飲む姿を見るのが僕は好きだ。
もう1本飲むよね。空いたグラスにおかわりを注ぐ。
「唯も食べる?」
「はいっ。シメにラーメン食べたいです。他の人も誘っていいですか?」
ラーメン食べたい人、他にもいそう。
「食べるならキッチン来るように声かけて」
「はい」
グループチャットでお誘いしたら食べたいって返事が続々届く。
お義父さんはもう寝てるけど、他のみんなはラーメンに釣られて集まってきた。
じっくりコトコト煮込んだ圭介さん特製のチャーシューをトッピングできるって写真つきで伝えたのが良かったのかな。
各々がセルフサービスでお酒やおつまみを用意して。
テーブルだけだと狭いから、椅子を運んで調理台もテーブル代わりにする。
僕もビールのおかわりをしよう。
ちゃんとノンアルのやつ。
圭介さんが見たこと無い海外メーカーのノンアルビールも冷蔵庫に冷やしておいてくれるから、選ぶのも楽しい。
玲司君はラーメンだけじゃ足りないので自分でお米を炊く。
圭介さんがチャーシューの半分をラーメンのトッピング用にスライスして、残りはごろごろと角切りにした。
大きく切ったのはご飯に乗せて食べたら美味しそう。
刻みネギと紅生姜をのせて、つゆだくでよろしくお願いします。
チャーシュー丼には温玉をのせて食べちゃおう。
味の染みたほろほろのチャーシューにとろとろ卵をからめて、炊きたてのお米と一緒に口いっぱいに頬張る。
真夜中の禁断の味。
調子に乗って替え玉したのもいけなかった。
満腹で眠気が一気に襲ってくる。
「やばい。お腹いっぱいで眠たくなってきた」
急に眠たくなると体の重みが地球の重力に負ける。
テーブルにうつ伏せてウトウトしてしまう。
「唯。寝る前に歯磨きしないと」
「圭介さんが磨いて」
大きな口を開けて待ってたら、本当に圭介さんが歯を磨いてくれた。
フロスも使って、自分で磨くよりも丁寧だ。
「うがいしてー」
コップに水をくんで渡される。
目の前に置かれたボウルに水を吐き出して。
至れり尽くせり。もうまぶたはほとんど開いてないのに寝る支度は完璧だ。
「寝るなら布団で眠ろう」
うん。お布団で寝たい。
でも丼片付けてない。食べっぱなし。
「俺、まだ眠たくないから洗っておくよ。だから大丈夫。唯は最低6時間寝ないと駄目なタイプでしょ? 明日も早いし、もう寝よう」
圭介さんに甲斐甲斐しくお世話されて、手を繋いで部屋に戻る。
「いつもありがとうございます。お酒もおつまみもラーメンもチャーシュー丼も全部美味しかったです。ご馳走様でした」
美味しかったことは何度も伝える。
また食べたいとお願いする。
圭介さんは僕が幸せだと表現すると喜ぶから。
僕は言葉を惜しまない。
僕達の間でハッピーが循環してる。
素敵な関係。
キッチンのはしにあるダイニングテーブルが夜の一時だけ即席のバーカウンターになる。
今宵、圭介さんが用意してくれたのはビアカクテルのパナシェ。
背の高い三角錐の形をしたグラスからはビールの香ばしさと梅の香りが立つ。
一緒に出された小鉢にはチーズとミックスナッツ。
手の中におさまる大きさの小鉢には緑の染料で素朴な小鳥が描かれていて可愛い。
「パナシェってビールとレモンスカッシュで作るんじゃないんですか?」
居酒屋でバイトしてた時。僕はホールスタッフだったけど簡単なお酒も用意してたから知ってる。
パナシェはビールとレモンスカッシュを混ぜたカクテル。
「パナシェはビールの炭酸飲料割りだからレモンスカッシュ以外でも作れるよー。唯は梅サイダー好きでしょ?」
うん。好き。
「梅サイダーの爽やかな香りを活かして、軽めのエールで作ったよー」
圭介さんのこだわりの1杯。
エールビールの軽やかな苦みと梅サイダーの爽やかな酸味が口の中で弾けて幸せ。
庭に燻製器を用意して作っていたスモークチーズとスモークナッツも香ばしくて美味しい。
「なくなっちゃった」
会話と一緒に楽しむ美味しいお酒はすぐになくなっちゃう。
空っぽのグラスがさみしい。
「ノンアルビールで次の1杯作る?」
「いいんですか?」
「うん。次はレッドアイにしようか。美味しいトマトジュースがあるから」
「お願いします」
誕生日の夜。記憶がなくなるまで飲んだ反省から、僕はお酒を1日1杯までにしている。
でも圭介さんとおしゃべりをする時間は無制限。
アルコールさえ飲まなきゃ大丈夫だろ。
ノンアルのカクテルも美味しいし。
「腹減ったー。なんか作れる?」
夕食後もコラボデザインの仕事をしていた玲司君が夜食を食べたいとやって来た。
「長浜ラーメンあるけど?」
「ラーメンか。いいな。替え玉もヨロシク」
圭介さんが夜食のラーメンを作るために立ち上がり、玲司君はあいた椅子にどっかりと座った。
「おそくまでお疲れ様。なにか飲む?」
「とりあえずビール」
冷蔵庫から冷えたビール缶を取り出し、グラスに注ぐ。
玲司君が美味しそうに飲む姿を見るのが僕は好きだ。
もう1本飲むよね。空いたグラスにおかわりを注ぐ。
「唯も食べる?」
「はいっ。シメにラーメン食べたいです。他の人も誘っていいですか?」
ラーメン食べたい人、他にもいそう。
「食べるならキッチン来るように声かけて」
「はい」
グループチャットでお誘いしたら食べたいって返事が続々届く。
お義父さんはもう寝てるけど、他のみんなはラーメンに釣られて集まってきた。
じっくりコトコト煮込んだ圭介さん特製のチャーシューをトッピングできるって写真つきで伝えたのが良かったのかな。
各々がセルフサービスでお酒やおつまみを用意して。
テーブルだけだと狭いから、椅子を運んで調理台もテーブル代わりにする。
僕もビールのおかわりをしよう。
ちゃんとノンアルのやつ。
圭介さんが見たこと無い海外メーカーのノンアルビールも冷蔵庫に冷やしておいてくれるから、選ぶのも楽しい。
玲司君はラーメンだけじゃ足りないので自分でお米を炊く。
圭介さんがチャーシューの半分をラーメンのトッピング用にスライスして、残りはごろごろと角切りにした。
大きく切ったのはご飯に乗せて食べたら美味しそう。
刻みネギと紅生姜をのせて、つゆだくでよろしくお願いします。
チャーシュー丼には温玉をのせて食べちゃおう。
味の染みたほろほろのチャーシューにとろとろ卵をからめて、炊きたてのお米と一緒に口いっぱいに頬張る。
真夜中の禁断の味。
調子に乗って替え玉したのもいけなかった。
満腹で眠気が一気に襲ってくる。
「やばい。お腹いっぱいで眠たくなってきた」
急に眠たくなると体の重みが地球の重力に負ける。
テーブルにうつ伏せてウトウトしてしまう。
「唯。寝る前に歯磨きしないと」
「圭介さんが磨いて」
大きな口を開けて待ってたら、本当に圭介さんが歯を磨いてくれた。
フロスも使って、自分で磨くよりも丁寧だ。
「うがいしてー」
コップに水をくんで渡される。
目の前に置かれたボウルに水を吐き出して。
至れり尽くせり。もうまぶたはほとんど開いてないのに寝る支度は完璧だ。
「寝るなら布団で眠ろう」
うん。お布団で寝たい。
でも丼片付けてない。食べっぱなし。
「俺、まだ眠たくないから洗っておくよ。だから大丈夫。唯は最低6時間寝ないと駄目なタイプでしょ? 明日も早いし、もう寝よう」
圭介さんに甲斐甲斐しくお世話されて、手を繋いで部屋に戻る。
「いつもありがとうございます。お酒もおつまみもラーメンもチャーシュー丼も全部美味しかったです。ご馳走様でした」
美味しかったことは何度も伝える。
また食べたいとお願いする。
圭介さんは僕が幸せだと表現すると喜ぶから。
僕は言葉を惜しまない。
僕達の間でハッピーが循環してる。
素敵な関係。
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