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くらげ

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バレンタインぱーりーぴーぽー2

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これまでは誰かと過ごすことを考えていた。
それだけじゃ駄目だ、一人でも出掛けてみようと仕事休みの日に映画館に来たんだけど。
どうしてこうなった?

「この監督の作品大好きなんです。お兄さんもですか?」

映画館の座席に早めに座って流れるCMを見ながら、次に圭介さんと見に行く映画を考えたかったのに。
人懐っこい美大生の男の子が隣にやってきて話しかけられた。
平日の昼間だから空いてるのにぴったり隣とかご縁がありますねって。
たしかに席を取るときに隣が空いてるかは確認しなかったけど。

「僕は映画に詳しくないし監督とか気にしないで今日の映画を決めてて」
「それでこの映画を選ぶとか。お兄さん、センス良いですね。すごい」
「いや。ポスターの雰囲気とかで選んでるから」
「そうなんですか。今回のポスターは若手のデザイナーが担当してるんですけど。その人、これから絶対キますよ」
「そんな有名な人なんだ?」
「まだ知る人ぞ知るって感じですけど、先月発売されたUKロックバンドのCDのジャケットも彼のデザインなんです」
「へえ。ロックバンドの。この映画とは真逆な感じするな」
「コンセプトは真逆ですけど、本質的な部分は同じっていうか、彼の表現はとくに色の使い方が力強くて、生命力って言うんですか。生きてるっていう躍動感に憧れちゃう」

本編が始まるまでずっと映画が好きだという彼の話を聞いて。
終わったあとも遅めのランチに誘われた。
せっかくのお誘いだしオススメだというお洒落なカフェに行くことに。
そして現在、カフェで向かい合ってサンドイッチを食べながら映画談義を聞いてる。

「僕が撮ってるのは実写とCGアニメーションの合成なんです」
「すごい。技術的なんだね」

コンピューターを駆使した最先端の表現だ。

「そんなことないです。今は映像加工用のソフトも豊富にあるから」
「へえ。そうなんだ」
「僕は日常の延長線にあるちょっと不思議なファンタジーを撮りたくてアニメーションを使ってるんです」
「さっき見せてもらった映像でも女の子と妖精が幻想的な雰囲気だったよね。あの淡い色使いが僕は好きだ」
「えへへっ。お兄さんに好きって言ってもらえて嬉しいです」
「僕みたいな素人でも?」
「僕は皆が楽しめる作品を作りたいんです。お兄さんみたいな人に喜んでもらえるような」
「僕はあんまり考えなくても楽しめる映画が得意」

大学でも映像作品を作っているという彼の話は聞いていても楽しくて。
スマホで見せてもらったショートムービーはとても素敵で。
彼の今後の活動を応援する気持ちでSNSアカウントをフォローさせてもらった。
彼は僕のアカウントをフォローバックしてくれたけど、それは無駄かも。
僕のアカウントはロム専門だからフォローされても面白いことは書き込まない。

それでも新しい友達ができたのは嬉しい。
しかもこれまでとはちょっと違うタイプの人。
学生主体の映画フェスに新作の短編映画を出展すると聞いてフェスのチケットを2枚買わせてもらった。
これはもちろん圭介さんと行くため。
GWにあるという映画フェスならきっと行けるだろう。
他にも面白いこと映画の作品やイベントについてはSNSで発信してくれるので、楽しみにしていると伝えて彼とは別れた。


こんな感じで。
一人でも平気だよって僕なりにいろいろしてみたんだ。
これまでの出会いも新しい出会いも大事にしてみて。
それなりに楽しく過ごしてるけど。

 結局は圭介さんと過ごす時間の大切さが身にしみる。
毎日メールはするし、時々は電話も出来るけど。
やっぱり会えないって寂しい。
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