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不動ベイシン
オペレーションらびっと6
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『このアプリ、玲司君みたい』
──これ アプリ 玲司君 みたい
あっ。玲司君のこと、衣笠さんに伝えても良かったんだっけ?
「サクラちゃんは五十嵐君とも仲が良いんだっけか?」
鈴村さんのファンな衣笠さんは玲司君のことも知ってるのか。
でも僕が二人の恋人なことは内緒?
どこまで伝えていいのか分からない。
カメラに映らないところで、圭介さんにだけ伝わるように。
『衣笠さんは僕達のことをどこまで知ってるんですか? 玲司君と僕が付き合ってるの伝えても大丈夫?』
『唯が俺の恋人なのは知ってる。玲司と付き合ってることは知らない。伝えないで』
了解。じゃあ、玲司君はお友達ね。
『圭介さんが忙しい時に遊びに連れて行ってくれたりするんです。あと素敵なお洋服を作ってくれたり。今日のワンピースとヘッドドレスも玲司君が作ったものなんですよ』
──圭介さん 忙しい とき 遊び 連れて行く もらう です それと 素晴らしい 服 作る もらう です 本日 ワンピース と 頭 飾り 玲司君 作った もの です
長い文章になると違和感が出ちゃうのは仕方ないのかな。
この場合は僕が短いセンテンスを心掛けるべきか。
通訳アプリに正しく伝えるコツの練習が必要だな。
最近は外に出かけられないから将棋や囲碁をしていると伝えると、衣笠大臣がネット対局をしようと誘ってくれた。
僕は初心者だけどそれでも良ければ。
『いいですね。よろしくお願いします』
──お父様。よろしくお願いします
あれ? ここまで順調に通訳してくれてたのに。おかしな間違え。
「いいねのつもりで親指立てたのを、『お父様』のサインと読み間違えたのかも。カメラは奥行きが読み取りにくいから」
僕が特定の誰かを表現する時は、その人を表すサインを片手で作る。
そして僕はそのサインをした手を頬にくっつけて呼びかける癖がある。
お義父さんは親指を立てたサイン。
圭介さんなら人差し指と中指をクロスして立てたサイン。
そして、衣笠大臣はひらがなの“き”の指文字を名前を呼ぶ時のサインにした。
大臣とお話するのに名前を省略するのは失礼に当たらないかって不安だったけど。
“き”は人差し指と小指を立てた、影絵で狐の顔を作るみたいな手の形。
それがウサギみたいでカワイイから何も問題がないと衣笠大臣には言われた。
カワイイは正義らしいです。
圭介さんに言われて『いいね』の手話と『お義父さん』のサインを何度か繰り返す。
そうやってアプリのAIに覚えさせるんだ。
衣笠大臣にも言われて『衣笠大臣』のサインもしっかりアプリに覚えてもらった。
「これだけしっかりと人に伝えられるソフトがあれば、サクラちゃんも選挙にでられそうだな。どうだい? 市議会あたりで経験を積んでみないか?」
いきなり何を言い出すんだ?
僕が? 政治家に? 無理だよ。
『恐れ多いです』
──怖い 多い です
ニュアンスが伝えたい気持ちとぜんぜん違う。
衣笠大臣の提案は僕には身に余るお誘いで、恐縮だと伝えたかったんだ。
言葉を噛み砕いて、少しずつ伝える。
『僕には勿体ないお誘いです』
──私 勿体ない 誘い です
『僕はまだ未熟で自分のことすら満足にできません』
──私 まだ 育つ ない 自分 こと 満足 不可能
まただ。うまく伝わらない。
どうしたらいい?
僕の手話へたくそ?
「AIには謙遜を覚えさせると良さそうだ。それとサクラちゃんは焦ると伝えたい気持ちが急いて、早く手を動かしてしまうな。これではカメラも読み間違える。どのような内容でもゆっくりとしたペースで伝えることを意識すると相手に伝わりやすくなるよ」
うん。気をつけます。
焦っている時こそ平常心が大事。
──はい 頑張ります
またアプリが勝手に僕の心を読んだ。
本当に玲司君みたい。
「親しい間柄なら、この通訳アプリを補助的に使うのもいいが、不特定多数の相手とのやりとりに使うことを考えると。文字を読み上げるソフトの利用が現実的か?」
衣笠大臣は僕と世間のコミュニケーションの方法を真面目に考えてくれてる。
『スマホの画面にメッセージを表示して読んでもらったりもしてます』
──スマホ 画面 メッセージ 読む もらう です
「普段からスマホは使ってるか? 筆談は基本だもんな」
『ひとりで出かけることはほとんどないから、一緒にいる圭介さんを頼ってしまうことが多いんですけど』
──ひとり 出かける ほとんど ない 一緒 いる 圭介さん 頼る 多い です
「仲が良いんだな」
うん。僕達は仲良し。
──これ アプリ 玲司君 みたい
あっ。玲司君のこと、衣笠さんに伝えても良かったんだっけ?
「サクラちゃんは五十嵐君とも仲が良いんだっけか?」
鈴村さんのファンな衣笠さんは玲司君のことも知ってるのか。
でも僕が二人の恋人なことは内緒?
どこまで伝えていいのか分からない。
カメラに映らないところで、圭介さんにだけ伝わるように。
『衣笠さんは僕達のことをどこまで知ってるんですか? 玲司君と僕が付き合ってるの伝えても大丈夫?』
『唯が俺の恋人なのは知ってる。玲司と付き合ってることは知らない。伝えないで』
了解。じゃあ、玲司君はお友達ね。
『圭介さんが忙しい時に遊びに連れて行ってくれたりするんです。あと素敵なお洋服を作ってくれたり。今日のワンピースとヘッドドレスも玲司君が作ったものなんですよ』
──圭介さん 忙しい とき 遊び 連れて行く もらう です それと 素晴らしい 服 作る もらう です 本日 ワンピース と 頭 飾り 玲司君 作った もの です
長い文章になると違和感が出ちゃうのは仕方ないのかな。
この場合は僕が短いセンテンスを心掛けるべきか。
通訳アプリに正しく伝えるコツの練習が必要だな。
最近は外に出かけられないから将棋や囲碁をしていると伝えると、衣笠大臣がネット対局をしようと誘ってくれた。
僕は初心者だけどそれでも良ければ。
『いいですね。よろしくお願いします』
──お父様。よろしくお願いします
あれ? ここまで順調に通訳してくれてたのに。おかしな間違え。
「いいねのつもりで親指立てたのを、『お父様』のサインと読み間違えたのかも。カメラは奥行きが読み取りにくいから」
僕が特定の誰かを表現する時は、その人を表すサインを片手で作る。
そして僕はそのサインをした手を頬にくっつけて呼びかける癖がある。
お義父さんは親指を立てたサイン。
圭介さんなら人差し指と中指をクロスして立てたサイン。
そして、衣笠大臣はひらがなの“き”の指文字を名前を呼ぶ時のサインにした。
大臣とお話するのに名前を省略するのは失礼に当たらないかって不安だったけど。
“き”は人差し指と小指を立てた、影絵で狐の顔を作るみたいな手の形。
それがウサギみたいでカワイイから何も問題がないと衣笠大臣には言われた。
カワイイは正義らしいです。
圭介さんに言われて『いいね』の手話と『お義父さん』のサインを何度か繰り返す。
そうやってアプリのAIに覚えさせるんだ。
衣笠大臣にも言われて『衣笠大臣』のサインもしっかりアプリに覚えてもらった。
「これだけしっかりと人に伝えられるソフトがあれば、サクラちゃんも選挙にでられそうだな。どうだい? 市議会あたりで経験を積んでみないか?」
いきなり何を言い出すんだ?
僕が? 政治家に? 無理だよ。
『恐れ多いです』
──怖い 多い です
ニュアンスが伝えたい気持ちとぜんぜん違う。
衣笠大臣の提案は僕には身に余るお誘いで、恐縮だと伝えたかったんだ。
言葉を噛み砕いて、少しずつ伝える。
『僕には勿体ないお誘いです』
──私 勿体ない 誘い です
『僕はまだ未熟で自分のことすら満足にできません』
──私 まだ 育つ ない 自分 こと 満足 不可能
まただ。うまく伝わらない。
どうしたらいい?
僕の手話へたくそ?
「AIには謙遜を覚えさせると良さそうだ。それとサクラちゃんは焦ると伝えたい気持ちが急いて、早く手を動かしてしまうな。これではカメラも読み間違える。どのような内容でもゆっくりとしたペースで伝えることを意識すると相手に伝わりやすくなるよ」
うん。気をつけます。
焦っている時こそ平常心が大事。
──はい 頑張ります
またアプリが勝手に僕の心を読んだ。
本当に玲司君みたい。
「親しい間柄なら、この通訳アプリを補助的に使うのもいいが、不特定多数の相手とのやりとりに使うことを考えると。文字を読み上げるソフトの利用が現実的か?」
衣笠大臣は僕と世間のコミュニケーションの方法を真面目に考えてくれてる。
『スマホの画面にメッセージを表示して読んでもらったりもしてます』
──スマホ 画面 メッセージ 読む もらう です
「普段からスマホは使ってるか? 筆談は基本だもんな」
『ひとりで出かけることはほとんどないから、一緒にいる圭介さんを頼ってしまうことが多いんですけど』
──ひとり 出かける ほとんど ない 一緒 いる 圭介さん 頼る 多い です
「仲が良いんだな」
うん。僕達は仲良し。
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